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手を入れれば愛着がわくのは判っているのに入れてしまった以上わいた愛着に手放すなんて出来るわけがないだろうと言うのは本当だろうか 6

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 食後は皆さん仕事や用事があったりとあっさり解散となった。あまりの引き際の良さにこれが朝早くから来る理由はと…… まったく理解できないけど、オリヴィエなら自転車でも来れる距離だねと不吉な事を言ってくれた。
「私は暫くあの家に居るからアヤト達も遊びにおいで」
 言ってくれたのはマイヤー。彼らはこれからオリヴィエを連れて病院へと向かうと言う。勿論ジョルジュのお見舞いにだ。
「俺達は明日蚤市とか出掛ける予定なので、オリヴィエも泊まるなら帰り道に迎えに来るけど?」
 飯田さんの提案にオリヴィエはマイヤーを見上げれば行っておいでと笑って勧めてくれた。
 そう言って嵐のようにやってきて嵐のように去っていく皆さんを見送れば現実が残る。いや、招待したのは俺なので後片付けをするのも当然だ。飯田さんも率先して台所から片づけてくれるのが正直ありがたくて涙が出そう。
 なのでその間に庭の方の片づけをする事にした。
 飯田さんからペットボトルとタオルを持たされて
「終わったら手伝いに行きますね」
「ぜひお待ちしてます!」
 なんて全力で言えば苦笑される始末。山暮らしで草刈りを知るだけに俺の熱烈歓迎な状態にそれだけで大変な事になっている事を察してくれた。
 麦わら帽子がないのでタオルを頭にかぶってギュッと縛る。
 さてやるかと気合を入れるも今日は切り散らかされた雑草を回収するだけ。
何処か収集場所を決めないとなと思いながらうろうろとしていれば城の裏側にちゃんと馬小屋があった。
「あるじゃん」
 ここは前の人も手に入れてなかったのかぼろぼろで匂いはなく、でもどこか寂しそうな場所だった。陽のあたらなく、城からも距離があり、馬小屋の一角にはグルーム、いわゆる馬の管理や世話をする下男の部屋があった。
シロアリにやられているものの作りつけの棚があったり、これもシロアリにやられたようなテーブルやイスがあって、少し蹴っ飛ばしただけでボロッと崩れてしまった。白と同じく石造りなので家の方には被害はないが、思わずスマホで検索してしまう。農家の多いこの地域ならと思えば一応燃やしても良いらしい。とは言え一週間お試しの人間が燃やしたり壊したりするのは規約違反。草刈り程度ならゆるされているが、これは見ないふりをして扉を閉めた。
 そんな馬小屋の壁に雑草を積み上げていく。何度も集めては運んでいるうちにいつの間にか飯田さんも混ざってゴミをかき集めてくれて仕事がはかどる。
 今夜もぐっすり寝れそうだ。
 じゃなくって、すでに腕の筋肉がプルプルで途中何度かはあはあ言いながら足を止めてしまう。
「代わりましょうか?」
 そう言う飯田さんもこの広大な岩の雑草をかき集めるだけでも大変で息を切らしている。山なら上から下に転がすように草を落して最後は谷底に叩き落とす。あれは何て楽な仕事だったのかと今更ながら気づけば平らな土地も大変だなぁと息が上がる。
 とりあえず繰り返しの仕事も飽きたから交代するもこれまた苦行。自動草刈り機でブイブイ言わせて走り回る分には楽しいだろう。なんせ平らだ。サッカー場と言う凹凸もない場所は車の免許を持たないオリヴィエには十分な練習の場となっただろう。マイヤーが取り上げなければだ。ほんと大人げないジジイって迷惑だよなと調べた所によると既に一度大病をして生還したと言うマエストロ。体が小さいのも健康に気遣うのも一命を取り留めたから。その以前の体つきは今のマイヤー一人分追加しましたと言うくらいのお姿だと思うのは俺だけか?いや、多分全員一致の答えだと思うがそれにしてもこうやって比べると病気怖い、健康大切って言う意見には頷かずにはいられない。
「それより休憩にしましょう」
 さすがに疲れたと綺麗になった草原は見事な芝生のサッカーコートで、残念ながらとら刈りの姿に地面が見えるハゲがない事を喜ぼうと言う事にして置いた。どうせすぐに元通りになるんだしと証拠は無事消滅される。
 風に吹かれてそれなりに綺麗になった庭で寝転んで居れば
「じゃあ、そろそろ夕飯の買い物に行ってきます」
 飯田さんの無敵ぶりは調理に捧げられるようで俺と一緒にゴロンとなって俺は寝ちゃいそうになっているのに飯田さんは伸びをして腹筋だけで起き上がってのいい笑顔。
 何か俺だけがごろごろしてたら申し訳ない気がすると言うか
「折角なのでどこか食べに行きません?
 飯田さんのご飯は美味しいんだけどこれじゃあ山に居る時と変わらないから。どこかおすすめ知りません?」
 犬がショックを受けた顔で俺をじっと見つめ、俺が意見を変えないと判るとあからさまに耳としっぽを垂れ下げるそんな幻覚を見せた飯田さんは
「何かリクエストでも?」
「もちろんフランスに来たんだからフレンチ」
「幾らでも食べさせてあげますよ」
 しょぼん、そんな擬音を背負いながらの恨めしそうな瞳に

「例の独立した人の店が良いと思います。実はすでに予約をしておりまして、折角なのでいきましょう」

 お犬様を彷彿させる空気は消えうせ、少しだけ表情がこわばった顔に俺は体を起こしてシャワー浴びてきますと草刈りの道具を片付けながら城へと戻るのだった。




 

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