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めぐる季節の足跡と 5

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 蒼さんとの間に凛ちゃんを座らせた実桜さんの隣に位置どる様に座った園芸部を見てお前一番の下座かと納得の位置。だけどご飯と豚汁は誰よりも大盛りだった。
「さてそれでは全員グラスを持って……
 クリスマスと篠田工務店第二回忘年会兼綾人の一時帰国のお祝いに乾杯!」
「「「「かんぱい!!!」」」」
「ちょwww もりすぎwww」
 綾人だけがグラスを掲げながらも笑い転げている様子を誰も気を悪くするどころかあれ食べろこれ食べろと取り皿に勝手に乗せて行く。みんなというか圭斗と宮下が綾人に構いたいのは言うまでもない。それを見守る岡野夫妻と園芸部は微笑ましそうに眺め、凛は我関せずと言う様にから揚げを攻略していた。
 

 綾人のイギリス生活の話しを聞きながら山ほどあった料理を食べ終える頃には凛はクマのぬいぐるみを抱きしめてうとうとしだした所で岡野夫妻はお風呂に入れて寝かせると言って帰って行った。それを見て園芸部もかつて岡野夫妻が住んでいた庭の離れへと引っ越してきて住み込んでいる部屋へと戻って行った。住宅手当が出せないので代わりに住処の提供という寧ろ渡し過ぎじゃね?と思うも陸斗がいない今何かあった時お互い助け合う事が出来るという意味は宮下が麓の家に住み込まずに先生のご飯の準備をしたら実家に毎日帰るからだ。
 理由は家に残してきた烏骨鶏の面倒を見る為。
 ただそれだけの為に実家から通ってくれる手間には申し訳なく、朝は宮下、夕方は大和さんが烏骨鶏ハウスに入れてくれると言う親切ぶりにもう宮下家に足を向けて寝れないと思う。
 途端に静かになった室内で改めてトランクからクリスマスプレゼント兼イギリス土産をクリスマスツリーの下に飾って行く。
 トランクの中にはまだいくつか土産は残っているが、これはまた別の人用。間違えないようにちゃんと名前を書いてあるので凛ちゃん以外なら問題ないだろう。そんな中圭斗と宮下の名前が書かれたプレゼントを二人は見つけた。
「あ、先に開けちゃえよ」
 言えば少し悩む圭斗だったが宮下はじゃあ開けちゃうね!と、楽しみでしょうがないと言うように圭斗の悩みなんて知らないもんと綺麗な包装紙だからとゆっくりと丁寧にシールを剥がして中身を取り出して行く。
 箱に入った真っ白な陶器の入れ物を見て
「綺麗な入れ物だね?」
 意外と言う様に宮下はそれを眺めるのを見て
「綺麗だろ?それは陶器で出来てるんだが、これ木工で出来たらすごいよな?」
 そんな提案。
 宮下は俺の言わんとする事を理解して
「なるほど!彫刻の練習にはぴったりだね!
 透かし彫りって言うのかな?これだけ繊細に彫れるようになれればいつかは綾人の家の欄間も彫らしてもらえるかな?」
 森下さんと言い何でうちの欄間に拘ると思いつつ
「西野さんの所でも彫刻教わっていたんだし、長沢さんも彫刻得意だから学ぶ目標にしてもらえればいいと思う」
「うん。さすがにこんな細かいのはまだ無理だから、うわぁここ透かし彫りえぐいなぁ。これは陶器だけど彫刻でどうやって彫るんだろう」
 うーん、うーんともう思考の旅に出かけてしまった宮下を置いておいて
「で、圭斗は温かマフラー。ちゃんと冬らしい恰好しろ」
「ああ、うん。温かい格好してるんだけどな」
 なんて言う圭斗にグルグルとマフラーを巻きつけながら
「陸斗とお揃いのマフラーだから。香奈にも買ってあるから陸斗に持たせてやってくれ」
「悪い、ありがとう」
 柔らかなマフラーに顔を埋めながら照れた顔を隠す圭斗を俺は容赦なく動画撮影をする。
 うん。圭斗が照れる何て珍しいからね。
 ガッツリカメラを構えていればすぐに気付かれて……
「この!綾人そのカメラこっちに渡せ!」
「お断りだ!照れた圭斗何てレアな顔消すわけにはいかないだろ!」
「黙ってすぐに消せっ!!!」
「宮ちゃーん!圭ちゃんのレア動画取れたよー!」
「うーん、この部分特別な彫刻刀が必用なのかな……」
 広い元農家の家の中を走り回る俺と圭斗何て知らないと言う様に宮下は今も思考深く趣味の世界へと旅立ったまま帰って来ず、やがて体力的にも負けて掴まった俺はカメラを没収されてしまい、圭斗のレア動画を消されるのを涙をのみながら見てるしかなく……

「ただいまー。
 圭斗、そして綾人、外まで大きな声で何を騒いでいる」
「あ、先生おかえりー。そしてただいまー」
「はい、お帰り」

 車が止まった音が聞こえたと思えば自分の家の如く圭斗の家に上がって来た先生は部屋の隅にコートや鞄をポイポイと置いて机の一角に座り、この部屋の一番賑やかなクリスマスツリーの根元を見て仕方がないやつめと言う様に呆れて笑う。
「ずいぶん買って来たんだな」
「そりゃ、初めての帰郷だからね。
 春も帰りたいけどテスト前だから控えようと思ってるから」
「まぁ、妥当だな。スキップするつもりならそれなりに真面目に勉強しろよ」
「うん。本来なら大学に入る前にスキップするのがセオリーなんだろうけど、いろいろ学びたくって授業を色々とったら自然にスキップするしかなくって。
 だけど教員と一対一の個別指導とかその時に出された課題の討論とかすごく掘り下げて行くからの密度の高い時間になって、面白いよ」
 そこで書くレポートが波瑠さんに指摘された情報の箇条書きではだめだと気づかされて、そこは多紀さんの知り合いに物語になるような人を引き付ける分の書き方を学んだおかげで詩人のような書き方ではなくエッセイのように書く方法を留学する前に教えてもらったおかげで先に学んでおいて随分と助けられた。
 そう言った事まで先生に話を聞かせている間に先生も晩ご飯を食べ終えていて、どれだけ夢中になって話をしていたのか改めて気づかされる。
「まぁ、やっと学生らしい顔を見れて先生はほっとしたよ」
 苦笑しながらビールを飲む先生の柔らかな笑みに何だかものすごく恥ずかしくなって突っ伏してしまう。
 きっと耳まで赤いんだろうな、どうやって顔を上げようか。
 そうやって悩んでいるうちに考える思考も鈍くなり……

「綾人、そんな恰好で寝ると体痛くなるよ」
「宮下、起こさなくていいから布団を敷いてやれ。
 イギリスから来てシェフの所に寄り道してここまで帰って来たんだから少し休ませてやってくれ」
「うん。それは全然いいけど、先生は?」
「先生も明日から冬休みだから、ビールも飲んじゃったしここにお邪魔するよ」
「じゃあ、今日は俺も泊まっちゃお。折角だから圭斗の布団も一緒に敷いちゃうよ」
 言いながら机を隣の部屋に押しのけて布団を敷くスペースを作る様子を圭斗は俺の家で俺の部屋もあるのにと少し戸惑っていれば 
「何だか綾人の家の囲炉裏の部屋で良く雑魚寝した時みたいだよね」
 嬉しそうに笑う宮下の顔を見て直ぐに決意は決まる。
「ちょっと前ではしょっちゅうだったのに、ほんと何だか久しぶりだな」
 いつの間にか風呂に入りに行った先生が戻って来るのを待てずに並べた布団から綾人を眺めている間に眠ってしまうのはとても幸せな時間だと思った。






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