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友達の定義とは 5

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 たかがピクルス、されどピクルス。何故か尊敬のまなざしを貰いながらも簡単なサラダも用意して机に並べれば立派なディナーだ。
「何か想像よりすごい事になってる」
「まぁ、一人の時より晩飯が豪華だな」
 言えばケリーは満面の笑顔を浮かべ、俺がビールのプルタブを開けて缶のまま飲むのを真似る様にプルタブを開けてビールをそれはそれはおいしそうに飲んだ。
 ひょっとして缶のまま飲むの初めてなんて言わないよな。
 なんとなく悪い事を教えてしまったような嫌な予感を交えながらも拾い上げた本を見ながら
「アヤトの本の趣味は広いんだな」
「まぁ、気になる本はなるべく手に入れるようにしている。国に変えれば手に入らない本達ばかりだから」
 もしくは入手するのにめんどくさい本ばかり。だったらさっさと買って読んでしまえば実物はここでも中身は持って帰れる俺の頭素敵ーと国から持って来た物の中にホットアイマスクがあるのはこの事を想定をしての物。ガチで記憶して持って帰りますと気合は十分だ。
「だが数学を学びに来たと言いうのに哲学や古典な本が多いのは意外だな」
 ピクルスを齧りながら本をめくる当たり誉めてやろう。ピザを食べた手で本をめくっていたら家から追い出してやる所だったが本を大切にする所を誉めてやりながらスープの様子を見る。まだ火は通ってないが焦げ付かないように見ながらラザニアを取り分けて食べながら
「俺の知り合いが卒業生で哲学を専攻してたんだ。夜に書斎で話しをすると大体昔の偉人の話しになってわけわからない事になってるから、悔しいから徹底的に読み込んでやろうと思ってね」
 俺の未知の分野からの口撃に俺は良く判らない返事をするしかない無知な子供だけど、こうやって読み込むうちにロードが何を言っているのか判る様になってのめり込む俺の悲しい習性にまんまと乗せられたような気もするが、少しでも話が分かるのは楽しいとこれもまた新鮮な感動に俺は本を読むのをやめられないでいる。
 もちろんロードの蔵書も興味深いラベルが並んでいる。既に絶版した物や、大学の図書館でも人気で借りれない本が心行くままに読む事が出来るのは宿泊者だけの贅沢だ。まあ、一般のお客様は見向きもしない蔵書だが。
「そうだ、悪いけど明日その人の所に土産を持って行きたいから一緒に行ってみるか?昼飯位奢るぞ」
「いや、昼位俺が奢るよ。いきなり泊めて貰ったお礼と言う事で」
「いい歳して奢られるって言うのもなんか変な感じだから……」
「だめだ。ここは奢られるべきだ。年齢とか関係なくって、奢って貰ったら奢る、これが仲良くやって行く秘訣だ」
「なるほど」
 基本奢ったら労働で回収していたので奢ってもらうと言う発想が乏しかった綾人だったがその辺りはパブでのルールが馴染んで来ているので素直に納得する事が出来た。所変わればで甘えるではなくこう言った事が人との付き合い方を円滑にするのかと学ぶ事が出来た。
 だけどだ。
「そこチョットお高い所だから割り勘で十分だぞ?」
「実は親からもらったカードを全然使ってないから学校生活を凄く心配されているんだ。だかあある程度使っておかないと親が乗り込んで来る予定になっているんだ」
 何の感情も載せずに死んだ瞳で語るケリーにこれガチな奴なんだと察する事が出来たくらいの死んだ顔に少しだけ目を瞑って
「高くっても文句言うなよ」
「むしろそう言った方がちゃんとした人だって安心するはずだ」
 その言葉を信じて……

「ロード、彼はケリー・エマーソンって言って同じ授業を受けてる仲間なんだ。なんでもケリーのお爺さんって言う人は騎士爵を頂いていた立派な方なんだって。
 ケリー、ケリーならロードの名前ぐらい知ってるだろ?」 
「ああ、もちろん。知らないわけがない……」
 この街の紹介や旅のおすすめには必ずという位名前が出てくる著名人のそんな自己紹介。だけどロードは気分を損ねる事無く目を細めて
「そうか、君はエマーソンの孫か。エマーソンとはずいぶん悪さをしたが、そうか。今度は綾人と親友とは奇遇だな」
 今日もアビーの極甘ケーキを食べながらのお茶会はケリーもびっくりするくらいの金額のランチの後に繰り広げられ手のこの話題。
「ええと、知っていただいていて光栄です。
 ロードのお話しは亡き祖父からも聞いていましたが……」
 思わぬところでの繋がりがあったようだ。だけどお互い会うのは初めてというのは確かに寄寓だが
「何だ、アイツは私より先に逝ったか」
「ええと、好物のアップルパイをのどに詰まらせて……」
「やっぱりそうか!あいつはアップルパイに目がないからいつかのどに詰まらせて死ぬぞと何度言ったか忘れたが、そうか。ならあいつも本望だろうな」
 ちょっとしんみりと言う空気だが、どんな本望だとツッコミが多すぎてそんな空気に馴染めないアヤトとケリーだが、目尻にうっすらと涙を溜めるロードにこれは悲しんでいい事なのだろうかと見当違いな事を考えながらこの微妙な時間を過ごして、最後まで奢ると言って支払をする段階で聞かされた金額を二度聞いた辺り、こんどはどんな散財をしたのかと乗り込んでくるケリーのまだ知らない両親を想像してみてそっと笑う綾人だった。
 ディナーにも負けない金額のランチを頂きケリーを連れてロードと一緒に煮脇の手伝いをする。庭いじり何て初めてだろケリーの手つきをロードと一緒に笑いながら暗くなる前に失礼をしてアパートに帰る。
 途中ケリーのアパートに送って行く途中

「アヤト、今日は本当にありがとう。色々と初めての体験が出来て新鮮だったよ」
「まぁ、どれもこれもこれから幾らでも体験できることばかりだけどな」
「ロードの事もありがとう。帰った時に父さんに報告が出来る」
「まぁ、帰らずとも電話で報告が出来るだろう」
 わりと週末にマメ帰っているロンドンっ子だから親も友人関係が出来てないのではと心配しているのだろう。親の心子知らず、それはどれだけ賢い子供でもこればかりは変わらない事に苦笑する。
「そうだね。なるべく電話で済ますようにするよ」
 俺の週末の過ごし方を見て何か思う事でもあったのだろう。悪い友人を捕まえたと言われたくないと願うも
「これからは毎週アヤトの『家』に足を運ぶよ」
「何でそう言う事になる……」
 アレックスたちよりたちの悪い奴に絡まれたと思う綾人だったが
「何でって、結局あの本全然片づけられなかったじゃないか。他の荷物もまだ片づけられてないみたいだし、掃除も大変そうだから手伝うって言ってるんだよ」
 俺の家なのに俺が悪いのか?
 なんとなく所か全く釈然としなかったが……
「庭掃除とかも頼むぞ」
「ああ、初めてだったけど楽しかったからまたやらせてもらいたい」
 
 無償の労働力初ゲットおおおぉぉぉぉっっっ!!!
 
 心の中で絶叫しながらも顔はスマイル0円の爽やかな笑みを浮かべて
「ああ、頼りにしてる」
「まかせておけ」
 そんな約束と握手。 
 来週末この『家』はコンパクトだけど『庭』の広さに呆然とする顔を楽しみにして、そして期待を裏切らないケリーを好ましく思う綾人だった。



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