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第五話
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「おおっ! あなたが教皇様より“大聖女級”と称されたことで有名なフィアナ・イースフィル殿ですか! 会えて光栄です!」
エルスロッド王国直属の冒険者ギルドに辿り着いた私たち。
出迎えてくれたのは、このギルドの責任者であるギルドマスター、アイザックです。
彼は私を見るなり握手を求めてきました。
「初めまして、アイザックさん。フィアナ・イースフィルです」
私は挨拶に応じて、自己紹介もそこそこに本題に入ります。
ダンジョンという場所の探索はしたことがありません。経験といえば、その付近に結界を張ること。
ですから、情報収集はしっかりとしておこうと思ったのです。
「北の山脈のダンジョンですか。王国の騎士団や魔法士団の精鋭パーティーの他にも、こちらのギルドからも幾つかパーティーを派遣したのですが……。戻って来た者は皆無です」
「実はそこが引っかかっています。もしも、身の危険を感じれば逃げ出す方も居そうなものですし、中には深入りはせずに少しでも情報を持って帰ろうとする者もいるはず。に関わらず誰も戻って来ない。この状況についてギルドマスターの見解をお聞かせ下さい」
ダンジョンの探索の目的は魔物の討伐や財宝や資源の確保です。
しかしながら、最悪の事態に見舞われた場合……何を優先してでも全滅だけは避けようとするはずです。
王国の精鋭たちが戻られないなら尚のこと情報収集に努めようとするのが自然ですし……。
私はこの疑問点についてギルドマスターに率直な意見を聞きました。
「ふむ。さすがは稀代の聖女様ですな。真っ先にそこに着眼するとは。考えられる要因の中で最も確率が高いのは、ダンジョンから出るために特殊な条件があるというケースです。確認された件数は少ないですが、内側から強力な結界が張られており、その要因を取り除かなくては外に出られないというダンジョンもあるのです」
なるほど。いわゆるオートロック式ということですか。
入ったら最後、鍵がかかってしまい中から出ることが出来なくなる、と……。
外に出るためには鍵を取得しなくてはならないが、その条件が厳しすぎて誰もそれを成し得ていない。
しかし、それならば希望もあります。
「ならば、出られなくなっているだけでダンジョンの中に生存者がいる確率はありますね。出口の鍵を開ける条件さえ、私たちが満たせば助け出すことが出来る」
「仰るとおりです。一番多いのは強力な魔物や悪魔が結界を張っているパターンなのですが、この国の精鋭たちが歯が立たないレベルだと考えると……その力量は測りしれず想像すらしたくありません」
力勝負で終わるなら楽だと思わないでもないですが、ギルドマスターの仰るように騎士団や魔法士団、挙げ句は冒険者ギルドの精鋭たちが敵わなかった程の敵――油断しないに越したことはないでしょう。
「大体の状況は分かりました。ともかくこれから向かってみましょう」
「フィアナ様ぁ、私たちもフォローさせて頂きますですのでご安心を!」
「某も腕には多少の自信がありまする! フィアナ殿には傷一つ負わせませぬ故!」
「フィアナ様の護衛は元Aランク冒険者のお二人。ダンジョンでの経験も豊富かと存じます」
えっ? このお二人は元々冒険者なのですか?
確かに王宮に仕える護衛よりは納得できますが……。
Aランク冒険者ということはかなりの手練ですね。
道中で分からないことは色々と質問できそうです。
「本当に私は自分の厚かましさを恥じているよ。婚約したばかりの君に危険な依頼をするなんて」
「いえ、お気になさらずに。この力は必要な人のために使うと決めていましたので」
こうして、私は初めてのダンジョン探索に出かけました。
とにかく、一人でも多く救うために急がなくては。私は魔力を全身に漲らせて、精神を集中しました――。
エルスロッド王国直属の冒険者ギルドに辿り着いた私たち。
出迎えてくれたのは、このギルドの責任者であるギルドマスター、アイザックです。
彼は私を見るなり握手を求めてきました。
「初めまして、アイザックさん。フィアナ・イースフィルです」
私は挨拶に応じて、自己紹介もそこそこに本題に入ります。
ダンジョンという場所の探索はしたことがありません。経験といえば、その付近に結界を張ること。
ですから、情報収集はしっかりとしておこうと思ったのです。
「北の山脈のダンジョンですか。王国の騎士団や魔法士団の精鋭パーティーの他にも、こちらのギルドからも幾つかパーティーを派遣したのですが……。戻って来た者は皆無です」
「実はそこが引っかかっています。もしも、身の危険を感じれば逃げ出す方も居そうなものですし、中には深入りはせずに少しでも情報を持って帰ろうとする者もいるはず。に関わらず誰も戻って来ない。この状況についてギルドマスターの見解をお聞かせ下さい」
ダンジョンの探索の目的は魔物の討伐や財宝や資源の確保です。
しかしながら、最悪の事態に見舞われた場合……何を優先してでも全滅だけは避けようとするはずです。
王国の精鋭たちが戻られないなら尚のこと情報収集に努めようとするのが自然ですし……。
私はこの疑問点についてギルドマスターに率直な意見を聞きました。
「ふむ。さすがは稀代の聖女様ですな。真っ先にそこに着眼するとは。考えられる要因の中で最も確率が高いのは、ダンジョンから出るために特殊な条件があるというケースです。確認された件数は少ないですが、内側から強力な結界が張られており、その要因を取り除かなくては外に出られないというダンジョンもあるのです」
なるほど。いわゆるオートロック式ということですか。
入ったら最後、鍵がかかってしまい中から出ることが出来なくなる、と……。
外に出るためには鍵を取得しなくてはならないが、その条件が厳しすぎて誰もそれを成し得ていない。
しかし、それならば希望もあります。
「ならば、出られなくなっているだけでダンジョンの中に生存者がいる確率はありますね。出口の鍵を開ける条件さえ、私たちが満たせば助け出すことが出来る」
「仰るとおりです。一番多いのは強力な魔物や悪魔が結界を張っているパターンなのですが、この国の精鋭たちが歯が立たないレベルだと考えると……その力量は測りしれず想像すらしたくありません」
力勝負で終わるなら楽だと思わないでもないですが、ギルドマスターの仰るように騎士団や魔法士団、挙げ句は冒険者ギルドの精鋭たちが敵わなかった程の敵――油断しないに越したことはないでしょう。
「大体の状況は分かりました。ともかくこれから向かってみましょう」
「フィアナ様ぁ、私たちもフォローさせて頂きますですのでご安心を!」
「某も腕には多少の自信がありまする! フィアナ殿には傷一つ負わせませぬ故!」
「フィアナ様の護衛は元Aランク冒険者のお二人。ダンジョンでの経験も豊富かと存じます」
えっ? このお二人は元々冒険者なのですか?
確かに王宮に仕える護衛よりは納得できますが……。
Aランク冒険者ということはかなりの手練ですね。
道中で分からないことは色々と質問できそうです。
「本当に私は自分の厚かましさを恥じているよ。婚約したばかりの君に危険な依頼をするなんて」
「いえ、お気になさらずに。この力は必要な人のために使うと決めていましたので」
こうして、私は初めてのダンジョン探索に出かけました。
とにかく、一人でも多く救うために急がなくては。私は魔力を全身に漲らせて、精神を集中しました――。
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