【完結】病弱な幼馴染が大事だと婚約破棄されましたが、彼女は他の方と結婚するみたいですよ

冬月光輝

文字の大きさ
12 / 32

第十二話(マルサス視点)

しおりを挟む
 い、意味が分からない。
 僕が必死に練習して、努力して、絶対に失敗がないように気を配って、リハーサルにリハーサルを重ねたフラッシュモブが……。
 これで感動しない女はいないと確信できるほどの、一流の脚本家に大金を払って今日の日のためにオリジナルの短編ミュージカルを作って、成功率100パーセントだと自信を持って言えるほどのプロポーズをしたのに……。

「ルティア・アルディス。僕と結婚して欲しい」
「……えっ? 嫌ですけど」
「ぽえっ!?」

 僕の渾身のプロポーズはたったの三秒で失敗に終わってしまったのだ。
 あり得なくない? ルティアという女には感情がないのか?

 普通は涙して喜ぶシーンだろ。
 ハンカチを用意していたというのに、まさか自分の涙を拭くために使うとは。

「離せ! 離すんだ! いつまで取り押さえている! この無礼者が!」 
「無礼者はマルサス様です。ルティアお嬢様になんてことを……!」 
「まさかプロポーズをするなんて。恥を晒す以外に何の目的があるというのですか!」

 ルティアの妹であるシェリアちゃんに命じられて、二人の大男に取り押さえられた僕。
 ていうか、僕の周りの人間はなんでこっちを見ているだけなんだ? 助けろよ……。
 大男に雇い主が襲われているんだぞ。どうにかしてくれよ……!


「あのー、ルティア様たち帰られたんで、ウチのバカ……じゃなかった若様をそろそろ解放してくれませんかね」

「むっ……」

 そんな押し問答の中で、メイドのアネットがようやく大男に声をかける。

 遅いよ! ルティア、帰っちゃったじゃん!

 あそこから粘って、粘って、土下座してでもルティアからプロポーズのオッケーをもらって父上のもとに凱旋しようと思っていたのに――。

「若様、帰りますよー。ルティア様、あれは脈無しですって。……知ってましたけど。止めたほうが良いって何度も言いましたけど」

「うるさいな。一回、婚約した男のこと、こんなにすぐに忘れるとは思わないだろ、普通は」

「むしろ若様の場合、別れ方が最低なんであたしならすぐに忘れたいですけどねぇ。婚約指輪をむしり取るシーンなんて、鬼畜すぎて見てられませんでした」

 アネットの奴。いつも好き勝手言いやがって。
 こんなガサツなメイド如きの意見、女であっても参考にはならない。
 婚約指輪は超高級品なんだから、無駄に出来るわけないだろう。あれは、お前の年収でも手が出ないんだぞ。
 
 父上が仲良くしている下流貴族の娘で、要領だけで生きてる癖に、僕に意見かよ。おこがましい。

「それより若様ー。この状況、どうにかしてくださいよ」

「この状況ってなんだよ?」

「いや、若様が劇団を一つと、隣国のサーカス団まで雇ったじゃないですか。そして、プロポーズが成功したら、そのまま“婚約おめでとう野外パーティー”を開くって言っていたじゃないですか。……みんな、あまりにもバカ、じゃなかった若様が醜態を晒したんで、身のフリ方が分からなくなっているんですよ」

 そ、そういえば、そうだったー。
 失敗するなんて全然考えていなかったから、リハーサルとか長々と付き合ってくれたみんなにも幸せをお裾分けしてあげたくて、パーティーをその流れで開こうと準備していたんだっけ。
 
 振られたショックで気付いてなかったけど、みんな僕のことを見てる――?
しおりを挟む
感想 340

あなたにおすすめの小説

「証拠なら全て記録してあります」——記録魔法しか取り柄がないと捨てられた令嬢、婚約破棄の場で三年分の不正を読み上げる

歩人
ファンタジー
伯爵令嬢アネットの唯一の魔法は『記録《レコード》』——見たもの聞いたものを 一字一句記憶する地味な能力。婚約者の侯爵子息ヴィクトルは「戦えない魔法など 無価値だ」と婚約破棄を宣言する。だがアネットは微笑んだ。「承知いたしました。 では最後に一つだけ——」。彼女が読み上げ始めたのは、ヴィクトルが三年間で横領した 軍事費の明細。日付、金額、共犯者の名前、密会の会話。全て『記録』済み。 満座の貴族が凍りつく中、王宮監察官が静かに立ち上がった。 「……続けてください、アネット嬢」。 婚約破棄の舞台は、そのまま公開裁判になった。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

阿里
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。 でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。

処理中です...