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第十八話
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駆け落ちされていた隣国、ルーメリア王国の王女であるオリビア様が王宮に戻られたという話を聞いて、リュオン殿下は彼女との関係を両国間のこれからの関係も含めてきちんと話をつけると言われました。
しかし私は気になります。
オリビア様がどうしてこんなにも早く戻られたのか。
リュオン殿下との復縁を望むのではないのかと。
もちろん、殿下はそんな要求は飲まないと思いますが、その縁談自体は政略結婚でしたから両国の外交的にはその方が丸く収まるというような結論が出てもおかしくないのです。
なんせ、オリビア様が駆け落ちしていた事実は世間的には隠されているお話なのですから。
「心配そうな顔をしていますね。分かっていますよ、父上もそれならばオリビアと結婚した方が……みたいなことは言いかけましたから。まぁ、僕の兄も、君の兄上のカインも止めるように進言してくれましたが」
「やはりそうでしたか。しかし、兄が陛下に意見など……」
「カインは優秀で最も信頼されている役人の一人ですから。父だって彼の意見には耳を貸しますよ。私も世話になっています」
身内を褒められるのは嬉しいものですね。
いつも、飄々として過ごしている兄が優秀というイメージはあまりないのですが……。
王立学院を首席で卒業したらしいので頭は良いのでしょうけど……。
「常識と照らし合わせれば、あり得ないのはルーメリア王国とて分かっているはずです。特にあちらの国の外交の責任者であるローウェルさんは義を重んじる方ですから」
「ローウェル様? ルーメリア王国の辺境伯様の……」
「おや? 彼のことをご存知でしたか。今月ご結婚なさるみたいで、私も式に呼ばれているのですよ。以前会った時には一生独身で過ごすと言われていましたのに」
そうでしたか。ルーメリア王国の外交の責任者はマルサス様の幼馴染のエリナさんの婚約者であるローウェル様でしたか。
何でしょう……。世間は狭いというか、何というか。
リュオン殿下がローウェル様とエリナさんの結婚式に出席されるということは、それだけ親しい間柄ということですよね。
奇妙な縁を感じます。エリナさんもマルサス様の突然のプロポーズにはさぞかし驚かれたのでしょう。
「一緒に出席しますか? 私の婚約者として……」
「えっ? 私もエリナさんの結婚式に、ですか?」
「……あれ? ローウェルさんの婚約者の名前までご存知なのですね。驚きました」
「あ、はい。前にお話した私の婚約が駄目になってしまった理由が――」
私はマルサス様の幼馴染がエリナさんということ、そしてエリナさんの婚約者がローウェル様だと妹から聞いたことなどをお話しました。
以前、お話したときはマルサス様が幼馴染と結婚したいと言い出したから別れた、としか伝えていませんでしたから。
「そういうことでしたか。エリナさんも気の毒でしたね。いや、マルサスさんが安易といいましょうか……」
「ええ、私もそう思います」
「……とにかく、あちらの国にはローウェルさんも居ますから、変な要求をすることはないと思います。安心してください」
安らぎを与えてくれるような優しい口調で、リュオン殿下はそう仰せになりました。
彼の笑顔を見て、私はようやく落ち着きを取り戻しました――。
しかし私は気になります。
オリビア様がどうしてこんなにも早く戻られたのか。
リュオン殿下との復縁を望むのではないのかと。
もちろん、殿下はそんな要求は飲まないと思いますが、その縁談自体は政略結婚でしたから両国の外交的にはその方が丸く収まるというような結論が出てもおかしくないのです。
なんせ、オリビア様が駆け落ちしていた事実は世間的には隠されているお話なのですから。
「心配そうな顔をしていますね。分かっていますよ、父上もそれならばオリビアと結婚した方が……みたいなことは言いかけましたから。まぁ、僕の兄も、君の兄上のカインも止めるように進言してくれましたが」
「やはりそうでしたか。しかし、兄が陛下に意見など……」
「カインは優秀で最も信頼されている役人の一人ですから。父だって彼の意見には耳を貸しますよ。私も世話になっています」
身内を褒められるのは嬉しいものですね。
いつも、飄々として過ごしている兄が優秀というイメージはあまりないのですが……。
王立学院を首席で卒業したらしいので頭は良いのでしょうけど……。
「常識と照らし合わせれば、あり得ないのはルーメリア王国とて分かっているはずです。特にあちらの国の外交の責任者であるローウェルさんは義を重んじる方ですから」
「ローウェル様? ルーメリア王国の辺境伯様の……」
「おや? 彼のことをご存知でしたか。今月ご結婚なさるみたいで、私も式に呼ばれているのですよ。以前会った時には一生独身で過ごすと言われていましたのに」
そうでしたか。ルーメリア王国の外交の責任者はマルサス様の幼馴染のエリナさんの婚約者であるローウェル様でしたか。
何でしょう……。世間は狭いというか、何というか。
リュオン殿下がローウェル様とエリナさんの結婚式に出席されるということは、それだけ親しい間柄ということですよね。
奇妙な縁を感じます。エリナさんもマルサス様の突然のプロポーズにはさぞかし驚かれたのでしょう。
「一緒に出席しますか? 私の婚約者として……」
「えっ? 私もエリナさんの結婚式に、ですか?」
「……あれ? ローウェルさんの婚約者の名前までご存知なのですね。驚きました」
「あ、はい。前にお話した私の婚約が駄目になってしまった理由が――」
私はマルサス様の幼馴染がエリナさんということ、そしてエリナさんの婚約者がローウェル様だと妹から聞いたことなどをお話しました。
以前、お話したときはマルサス様が幼馴染と結婚したいと言い出したから別れた、としか伝えていませんでしたから。
「そういうことでしたか。エリナさんも気の毒でしたね。いや、マルサスさんが安易といいましょうか……」
「ええ、私もそう思います」
「……とにかく、あちらの国にはローウェルさんも居ますから、変な要求をすることはないと思います。安心してください」
安らぎを与えてくれるような優しい口調で、リュオン殿下はそう仰せになりました。
彼の笑顔を見て、私はようやく落ち着きを取り戻しました――。
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