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番外編その1(メリッサの独白)
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人の噂も何とやら、時間が経てば忘れ去られる。
クラリス・マーティラスという人間は史上最低の聖女だということは間違いない。
彼女がエミリア・ネルシュタインにした仕打ちは決して許されることではないし、現在も贖罪中である。
彼女の怠慢により数多くの人間に犠牲者が出たことも事実であり、クラリスという人間の犯した罪が白日に晒されたとき、確かに彼女はこれまでの信頼を一気に失い、全国民から軽蔑されるようになった。
だが、人々の憎悪も長くは続かないものだ。人間は忘れる生き物だからである。
あの日……エミリアが牢獄にいるクラリスと接触した日から彼女は人が変わったように働くようになり、好かれる努力をするようになった。
元々はマーティラス家の歴史の中で随一と言われていた彼女の才能は再び花開き、魔物たちを屠り、エミリア以上と言われるくらい堅固な結界を張ることにも成功する。
緊急で病気や怪我など治療が必要な人がいると聞くと睡眠時間を削ってでもその人のところに向かって、多彩な術で人助けをするようになり、彼女の無償の奉仕によって救われた人間も多い。
首を鎖で繋がれ、両手を錠で拘束されようとも聖女としての活動を真摯に行う姿を見ると、国民の評価が変わってしまうのも無理はないだろう。
クラリス・マーティラスは反省して生まれ変わった――そう主張する人々が増えており、マーティラス伯爵にも彼女の勘当を許して欲しいという嘆願書が届いたりもしているらしい。
私はそれでも半信半疑である。あの賢いクラリスのことだ。
これも全ては計算なのでは、と穿った見方をしてしまう。それだけ、彼女の犯した罪は重い。
黒色は幾ら汚れを落としても灰色にしかならない。白色に戻ることは決してないのだ。
マーティラス伯爵もそれを考えているからこそ、断腸の思いで彼女を許さない覚悟を決めている。彼が許してしまうとエミリアへの謝罪が嘘になってしまうからだ。
――まぁ、反省のポーズだけでもしたのだから、クラリスは幾分マシである。
まるで反省しない人というのもいるのだから……。
行方不明になっていたエミリアの元婚約者であるボルメルン王国のニック王子が半年ほど前にメーリンガム王国で見つかった。
彼は死にかけながらも偶然通りかかった冒険者たちに助けられ、メーリンガムに運ばれたのである。
怪我人とあらば、どんな人間でも助けるのが向こうの巫女のしきたりらしい。
エミリアは得意の治癒術式でニック王子を助けたのである。
これが彼の勘違いを加速する結果となった。
エミリアが大怪我で死にそうな自分を助けてくれた→まだ僕のことを好きに違いない→その気がないフリをしているのは気まずいから→僕はそんなことを気にしない。もう一度やり直そう。
こんな感じの思考に陥ったニック王子はエミリアのストーカーになった。
彼女に付きまとい、あの手この手で復縁を迫るようになる。
もちろん、親衛隊に摘み出されるのであるが、彼は障害があった方が燃える質らしく、先日エミリアが入浴中の風呂に潜入をしようとしたらしく、あえなく向こうの牢屋に投獄されることとなった。
ボルメルン国王はその知らせを聞いて怒り狂った。
国の恥を追放などという甘い処分にしたことを悔やんだ。
ニックはそれでもエミリアが自分のことを好いてると信じて疑わないらしい。それどころか、夫になっていると妄想を膨らませるようになり、あちらの人間をドン引きさせているみたいだ。
おそらく、こちらに強制送還になるだろうが……死罪になるかどうかはまだ決まっていない。
ニックなどは王子として甘いところもあるが、顔も良く優しいと評判の好青年だったのに、何が人を豹変させるのか分からないものである。
エミリア・ネルシュタインはメーリンガム王国で絶大な支持を受けており、メーリンガム国王も自分の息子の婚約者にしたいと思っているほどだ。
しかし、彼女はしばらく婚約には懲りているらしい。ニックの件もかなり尾を引いてるみたい。
それでも彼女は幸せだと断言している。いつかエミリアに良縁があれば良いと私は切に願う――。
クラリス・マーティラスという人間は史上最低の聖女だということは間違いない。
彼女がエミリア・ネルシュタインにした仕打ちは決して許されることではないし、現在も贖罪中である。
彼女の怠慢により数多くの人間に犠牲者が出たことも事実であり、クラリスという人間の犯した罪が白日に晒されたとき、確かに彼女はこれまでの信頼を一気に失い、全国民から軽蔑されるようになった。
だが、人々の憎悪も長くは続かないものだ。人間は忘れる生き物だからである。
あの日……エミリアが牢獄にいるクラリスと接触した日から彼女は人が変わったように働くようになり、好かれる努力をするようになった。
元々はマーティラス家の歴史の中で随一と言われていた彼女の才能は再び花開き、魔物たちを屠り、エミリア以上と言われるくらい堅固な結界を張ることにも成功する。
緊急で病気や怪我など治療が必要な人がいると聞くと睡眠時間を削ってでもその人のところに向かって、多彩な術で人助けをするようになり、彼女の無償の奉仕によって救われた人間も多い。
首を鎖で繋がれ、両手を錠で拘束されようとも聖女としての活動を真摯に行う姿を見ると、国民の評価が変わってしまうのも無理はないだろう。
クラリス・マーティラスは反省して生まれ変わった――そう主張する人々が増えており、マーティラス伯爵にも彼女の勘当を許して欲しいという嘆願書が届いたりもしているらしい。
私はそれでも半信半疑である。あの賢いクラリスのことだ。
これも全ては計算なのでは、と穿った見方をしてしまう。それだけ、彼女の犯した罪は重い。
黒色は幾ら汚れを落としても灰色にしかならない。白色に戻ることは決してないのだ。
マーティラス伯爵もそれを考えているからこそ、断腸の思いで彼女を許さない覚悟を決めている。彼が許してしまうとエミリアへの謝罪が嘘になってしまうからだ。
――まぁ、反省のポーズだけでもしたのだから、クラリスは幾分マシである。
まるで反省しない人というのもいるのだから……。
行方不明になっていたエミリアの元婚約者であるボルメルン王国のニック王子が半年ほど前にメーリンガム王国で見つかった。
彼は死にかけながらも偶然通りかかった冒険者たちに助けられ、メーリンガムに運ばれたのである。
怪我人とあらば、どんな人間でも助けるのが向こうの巫女のしきたりらしい。
エミリアは得意の治癒術式でニック王子を助けたのである。
これが彼の勘違いを加速する結果となった。
エミリアが大怪我で死にそうな自分を助けてくれた→まだ僕のことを好きに違いない→その気がないフリをしているのは気まずいから→僕はそんなことを気にしない。もう一度やり直そう。
こんな感じの思考に陥ったニック王子はエミリアのストーカーになった。
彼女に付きまとい、あの手この手で復縁を迫るようになる。
もちろん、親衛隊に摘み出されるのであるが、彼は障害があった方が燃える質らしく、先日エミリアが入浴中の風呂に潜入をしようとしたらしく、あえなく向こうの牢屋に投獄されることとなった。
ボルメルン国王はその知らせを聞いて怒り狂った。
国の恥を追放などという甘い処分にしたことを悔やんだ。
ニックはそれでもエミリアが自分のことを好いてると信じて疑わないらしい。それどころか、夫になっていると妄想を膨らませるようになり、あちらの人間をドン引きさせているみたいだ。
おそらく、こちらに強制送還になるだろうが……死罪になるかどうかはまだ決まっていない。
ニックなどは王子として甘いところもあるが、顔も良く優しいと評判の好青年だったのに、何が人を豹変させるのか分からないものである。
エミリア・ネルシュタインはメーリンガム王国で絶大な支持を受けており、メーリンガム国王も自分の息子の婚約者にしたいと思っているほどだ。
しかし、彼女はしばらく婚約には懲りているらしい。ニックの件もかなり尾を引いてるみたい。
それでも彼女は幸せだと断言している。いつかエミリアに良縁があれば良いと私は切に願う――。
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とても面白く清々しい小説を堪能出来ました。
ありがとうございました。
ひとつ気になる箇所が・・・
番外編で
>あの賢いクラリスのことだ。
の部分ですが、クラリスに「賢い」は尊すぎる(笑)と
思えてしまって・・・
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あしからず・・・
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