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7.騎士と姫さま

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「騎士にならなくていいの?」

レイニードの家、ジョランド公爵家は騎士の家系だ。
お父様は騎士団長だし、2つ上の兄ライニードも騎士団に入る予定だ。
だからこそレイニードも騎士を目指さなきゃいけないのだと思っていたのに。

「俺が騎士になろうとしたのは、エミリアが騎士が好きだからだ。」

「え?私、特に騎士が好きなわけじゃないよ?」

「え?本当に?」

私が騎士が好きだから、騎士に?もしかして騎士の誓いってそういう理由から?


「うん、騎士はカッコいいと思うけど、だから好きとかは特には。」

「だって、エミリアが良く読んでた本が「騎士と姫さま」だっただろう?
 だから俺はエミリアは騎士が好きなんだと思って、だからなろうと思ったのに。」

「あれはお母様がくれた本だから大事にしてただけ。
 多分、お母様は私がレイニードかライニードと婚約すると思って、
 騎士を理解させたくて買ってくれたのだと思うわ。」


確かに良く読んでいた。
「騎士と姫さま」は騎士が姫さまを命がけで大事に守るのだけど、
騎士の一途な思いが姫にはなかなか届かず、やきもきする話だった。
姫は姫で身分の違いに悩み、自分の思いを告げることが出来なくてすれ違っていく。
最終的には騎士は武勲をたて姫と結婚するという恋愛小説だ。


あぁ、嫌なこと思い出した。
ビクトリア王女がレイニードに執着したのもそのせいだった。
「騎士と姫さま」に出てくる騎士は銀髪で青目なのだ。
ちょっと冷たそうに見える顔も似ているとか何とかで、騒いでいたのを思い出した。
そのせいで最後には見たくないほどにその本が嫌いになってしまっていた。


「…なんだ、そうだったんだ。
 そこから間違っていたんだな。
 じゃあ、俺は騎士じゃなくていいんだ…。
 それじゃあ、何か他の職業で好きなものはあるの?」

「…特に何か好きな職業とか考えたことも無いけど…。
 やり直せるなら私が魔術師になりたいわ。」

「魔術師に?」

「そう。あの時、私が魔術師だったら、こんな目にあわなかったのにって思ったの。
 魔術の勉強をしてこなかったことを後悔したわ。」

令息たちに追われたとき、誰かに助けてほしいと思うよりも、
力がなくて抵抗できなかった自分が悔しかった。
お父様に遠慮しないで魔術師になりたいって言えばよかったと後悔した。
どうして好きなものを好きだと言わなかったんだろうと。

「…そうか、魔術師か。
 魔力があるならいろんな職業から選べると思ったけど…足りるかな。
 俺の魔力でも目指せると思う?」

「え?レイニードが魔術師に?
 …教会で魔力測定しなきゃわからないけど、目指すのは大丈夫なんじゃない?
 私が魔力を感じるくらいだから、普通よりも多いと思うよ?」

「よし、じゃあ、まず教会に行くことにしよう。
 今から行けるかな…。」

「ええ?今から~?」

「ああ、そうじゃないと次のお願いができないからな。
 カミラ!侯爵はどこにいる?」

お願いって何って聞く前にレイニードは部屋から出ていってしまった。
お父様に外出願いをするのだろうけど…今から教会か。
10歳の魔力測定でレイニードは魔力ゼロだったはず。
それもあって騎士を目指したんだと思ったのに。

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