5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)

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2章 次代へ

19.二国の将来

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「全員揃ったな?」

謁見室の中には陛下、王妃、父上、母上、
ジーク、俺、フラン、ロゼが集まっていた。
アンジェはコンコード公爵家で待っているそうだ。
一応はルールニー王国で王位継承権を持つ者と、
持つ予定の者だけが集まっている。
王太子の決定に関わる場に、他国の王女がいるのはまずいのだろう。


「それでは、まずルールニー王家の今後の話からする。
 次の王太子はジョルノにしようと思う。」

ジークの表情が一瞬だけ動揺したのが見えた。
そういえば話してなかったな。
俺がコンコード家を継ぐと思っていたんだろう。

「ジークハルトはレガール国に行って、オーガスト家を継ぐ予定だな?」

「はい。」

「だが、王位継承権はそのまま持っていてほしい。」

「え?俺は学園を卒業したら、
 王籍を抜けてレガールに行くつもりだったのですが?」

「そのレガール国の国王との話し合いの結果だ。
 ジークハルトには王位継承権を持っていてもらう。
 そして、アンジェリカ王女も王族のままで結婚させるつもりだと。」

「どういうことですか?」

「王族がギレン王子だけになってしまうだろう?
 だが、将来的に子が生まれない可能性もある。
 ギレン王子にも国王にも、側妃を持つ考えはないそうだ。
 
 お前たちには悪いが、両王国の控えになってもらいたい。
 何かあった時に、お前たちの子が国王になれるように。」

「…少し考えさせてください。」

「ああ、アンジェリカ王女と相談してくれ。
 ただし、これは両王国の国王としての願いだ。
 前向きに考えてくれることを期待するよ。」

「はい。」

「それで、コンコード公爵家のことだが、
 ローゼリアが継ぐという形になるが、いいか?」

この話を確認するためにロゼも呼んだのか。
まだ8歳ではあるが、教育はほとんど終わっている。
今の話も理解できているだろう。

「父上、話してもいいですか?」

「ああ、いいぞ。」

「僕はロゼと結婚して公爵家に娘婿として行きます。」

「「「「は?」」」」

「先日、二人で話し合った結果、決めました。」

「決めたって…お前。」

「そんなに焦ることですか?
 もともとロゼを王宮に呼んでいたのは、僕の妃候補だったからでしょう?
 ルノ兄が王太子になるなら、僕が王宮に残る理由はないですよね?
 控えの問題もあるでしょうから、王子教育は受けますけど、
 それが終わったら公爵家から学園に通いたいと思っています。
 その頃にはルノ兄の妃候補が王宮に通うようになるでしょう?
 僕とロゼは王宮にいないほうがいいんじゃないかと思うんです。」

「…それは、確かにそうなんだけど。叔父上?大丈夫ですか?」

「兄様、大丈夫ですか?しっかりしてください?」

母上があわてて父上の頬を軽くたたいてる。
え?あの父上が動揺している?

「お父様、お母様、私はフランと結婚するって決めたんです。
 お兄様たちが継がないのなら、コンコード公爵家は私が継ぎます。
 それでいいですよね?」

にっこりと笑って宣言する妹に、
あぁこれは誰も言い返せないだろうなと思う。
幼く見えてもロゼは賢い。
俺たちが思っているよりも、ずっといろんなことを考えた結果なのだろう。

「俺は賛成する。
 俺が王太子になったとしても、それこそ子が生まれるとは限らない。
 その時に、フランとロゼの子なら、ルールニー王国を継いでも問題ない。
 それにジークのところもいるなら、なお安心だ。
 王家の血は大事だが、誰でもいいってわけにはいかない。
 3家もあれば、優秀なものが継ぐことができるでしょう?」

あ、この言い方したら、ジークも断れなくなるかな。
まぁ、さっさと結婚相手も進路も決めて、好きなように生きてるんだから、
これくらいは我がまま聞いてほしいよね。
こっちはこれから国を背負って苦労する覚悟なんだからさ。

「叔父上、それいいか?」

「…仕方ない。ロゼが継ぐなら、フランに来てもらうのが一番いいだろう。
 ジョルノが王太子になった時に、フランは公爵家に入ればいい。
 うちでも王子教育の続きはできる。俺が教えてもいい。
 俺自身が控えだったからな。」

「では、王太子の指名の時期だが、早めにしたい。
 次の夜会で発表しようと思う。」

「ずいぶん早いですね。」

「お前の婚約者選び、しなきゃいけないだろう?
 それに早く決めないと、他の令息たちの婚約にも影響するからな。
 今まではフランの学年の令嬢が王太子妃候補だっただろう?
 ジークとアンジェが結婚することも同時に発表する。
 早くしないと行き遅れの令嬢だらけになってしまう。」

「あぁ、それは確かにそうですね。わかりました。」

自分の婚約者か…ジークもロゼも決まって、俺だけ相手がいないんだな。
もちろん、探す気はちゃんとあるけど。

「希望はあるか?」

「あります。夜会までに候補者決めますね。」

「候補者?高位貴族の令嬢全員じゃないのか?」

「はい。エリーゼに影響を受けた者と、似たような者は嫌です。
 高位貴族の中で婚約者がいない令嬢で、まともな人だけを候補者にします。
 同じ学年が多いですからね。だいたいの令嬢はわかってますから。」

「わかった。お前ならきちんとした令嬢を選ぶだろう。
 その辺は任すから、叔父上に候補者を知らせてくれ。」

「はい。」


話し合いは終わった。
これでルールニー王国とレガール国の将来はほとんど決まったようなものだ。
不安なことと言えば、ここにいないエリーゼか。
夜会には出席させなければいけないだろうが、大丈夫なのだろうか。






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