夫が聖女を溺愛中。お飾り妻になったので、魔道具をつくりにいきます

りんりん

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十九、魔鳥の卵

「これはどうやって食べるのですか」

ちょうど桃ぐらいの大きさの卵を眺めながら、呟く。

「不安そうだが、心配するな。
見た目はまずそうだが、けっこういけるんだ」

「よかったわ。で、どんな味がするんですか」

「知るもんか。オレは食ったことがないからな。
実は王族専用の魔法図鑑に、そう書かれていた」

「なんですか。それは」

屈託なく笑う王子に、冷たい視線をおくる。

「おい。怒るなよ。
確か本には、『甘いフルーツのような味覚』とあったぞ。
えーと、食べ方はこうだっだかな」

レオン王子は、卵を手にとると、綺麗に二つにわる。

「あら、簡単に割れるんですか」

卵の中は、ゼリー状で美しいオレンジ色をしていた。

「私、これなら食べれそうだわ」

「けど、食べれるのは、まん中にある丸くて固い部分だけだぞ。
他の所には、毒が含まれているんだ。
気をつけなくてはな」

そうか。やはり魔鳥の卵なのだ。

一筋縄にはいかない。

「オレが、ちゃんと毒は取ってやるから、待ってろ」

そう言うと王子は、骨ばった大きな手で、種のような物を取り出し、その回りについているオレンジ色の部分を、はぎとってゆく。

「そこは毒なんでしょ。 
素手で扱って、大丈夫なんですか。
ちゃんと、手袋をした方がいいと思いますけど」

「今さら言うな。もう遅い。
まずいぞ。なんだか、手が痺れてきたぞ。
助けてくれ。アイリス」

顔をゆがめたレオン王子は、せつない目をして叫ぶ。

「たいへん。どうしましょう」

突然の出来事に動転して、オロオロしていると、王子の途切れ途切れの声が聞こえてくる。

「解毒方法は、一つだけあるんた」

「なんですか。早く教えてください」

「唇にキスをしてくれ。熱いキスをだぞ」

「熱いキスですか......」

王子の形のいい唇に視線をむけて、一瞬とまどってしまう。

その時だった。

「ワハハハハ。心配するな。
オレは、なんともないぞ」

レオン王子が、弾けるように笑う。

「もう。嘘だったんですか。
心配で、心臓が止まりそうになったのに。
けど、なんともなくて良かったです」

ホッとすると、涙があふれる。

「おい。泣くなよ。からかって、悪かった」

「もう、二度と心配なんてしません」

「すまん。すまん。
これをやるから、許してくれ。
毒の部分は、全部とりのぞいたから、大丈夫なはずだ」

王子は、目の前にスッと掌をさしだした。

「これを食べると、強い魔力が備わるのですね」

「ああ、そうだ」

「とてもキラキラして、食べるのがもったいないわ」

「確かにな」

卵の中に隠れていた魔力の元は、胡桃ぐらいの大きさで、虹色に輝いていたのだ。

「ほら、口をあけろ」

言われた通りにすると、王子が魔力の元をほうりこむ。

「どうだ。うまいか」

「はい。とても」

それは少し固かったが、甘酸っぱい葡萄のような味で、一度噛むとスーと口の中で解けていった。

「気分は悪くないか」

王子が、心配そうに見つめてくる。
 
「はい。ぎゃくに、とても晴れ晴れしてます」

熱い物が身体を巡っていき、活力がみなぎってゆくようだ。

「よかった。うまくいったようだな。
そうだ。これは通信機械になっている。
なにかあれば、いつでも連絡をくれ」

そう言うとレオン王子は、私の左腕に空色の腕輪をはめた。

「ありがとうございます」

それから二人で森を駆け抜け、待たせていた馬に乗り、コーエン邸へむかう。
      

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