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15、人生初。私だけのお城
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王都に行けばなんとかなるよ!
ってペペス村を出てきたけど、現実はそんな甘いものじゃなかった。
まずは住む家を探さないといけなかったし。
食べていく為に仕事だっている。
「私の頭って完全なお花畑だったのね」
って猛反省をしながら、馬車から下りてすぐに目についた不動産屋の扉を叩いたのだ。
「へえー。
お嬢ちゃん。
アンタ1人で住むのかい」
頭をピカピカさせたお店の主は渋い声をだすと、うさんくさそうな目を私に向けた。
そりゃま、そうなるか。
着古した枯れ葉色のワンピース。
小さな穴のあいた靴。
くしゃくしゃの髪。
そんな他人にホイホイと家を紹介してくれる所なんてあるわけない。
しかたない。
聖女をやめる時もらった慰労金をほのめかす事にした。
「ご心配なく。
私は童顔で幼く見えるけどもう子供じゃないし、つい最近まで王宮で働いていたんで貯金だってそこそこありますから」
「ふーん。
王宮と言ってもどうせ下働きだろ。
そんなに貯まってないはずだ。
家賃の滞納とかお金のトラブルが、1番困るんだよなー。
悪いけど帰ってくれないか」
「なら。
家賃の1年分を先払いします。
それならいいでしょ。
お願い、おじさん。
私に家を探してください」
そう言って、スカートのポケットから1枚の金貨をとりだして店主の目の前にかざず。
「おおおー。
こんな大きな金貨は久しぶりに見たよ。
平民4人家族なら、これで軽く1年は暮らせるじゃないか!
いやーあ。驚き。
若いのにずいぶん貯めこんだもんだ。
ひょっとしたら、物好きな貴族のパトロンでもいたのかね。
ハハハッ。冗談、じょーだんだよ。
よし。これで商談成立だ。
さあ。物件の希望を聞くとしよう」
急にホクホク顔になった店主は、さっきとは真逆の態度をみせる。
ザ、商売人だね。けど、なんとか上手くいってホッとした。
それもこれも、結界が破壊しそうなのに、うつ手のない王族への不信感が招いた金貨の暴騰のおかげだ。
「これからお菓子屋を始めるつもりなの。(実は、今、とっさに思いついたんだけど)
だからできるだけ王宮に近い市場に、お店兼住居の物件を探しているのよ」
「なーるほど。
お嬢ちゃんは腕のいいお菓子職人ってわけか。
王宮では王様のお菓子を担当してたりしてな。
ワハハハ」
「もしそうなら、たっぷりと毒をいれてやったわ。
ねえ。マカとロン」
と呟いたと同時にオヤジが声をはる。
「お嬢ちゃん。
さっそくぴったりの物件が見つかった」
と。
紹介された物件は、聖女時代何回か視察でおとずれた市場の中にあった。
「あそこの市場にはね。
私の姿を見ると、涙を流して喜んでくれた人がいたの。
出来損ない聖女なのにね……。
わかったわ、そこに決めます」
「聖女?」
店主は一瞬不思議そうに首を傾げていたけど、すぐに契約の手続にとりかかった。
そして、数分後。
「はい。これが家の鍵だよ」
店主は壁にたくさんぶら下がっている鍵の中から、迷いなく1つを選ぶと私に手渡す。
「タール市場、3丁目3番ね。
さっそく今日から住みたいんだけど」
「あそこはもう空き屋なんで、こっちは全然かまわないよ。
では、ありがとうございました!」
「いえ。いえ。
こちらこそ、色々お世話様」
店主にペコンと頭を下げると、ピョコピョコと弾むように、人生初の私だけのお城へと向かった。
ってペペス村を出てきたけど、現実はそんな甘いものじゃなかった。
まずは住む家を探さないといけなかったし。
食べていく為に仕事だっている。
「私の頭って完全なお花畑だったのね」
って猛反省をしながら、馬車から下りてすぐに目についた不動産屋の扉を叩いたのだ。
「へえー。
お嬢ちゃん。
アンタ1人で住むのかい」
頭をピカピカさせたお店の主は渋い声をだすと、うさんくさそうな目を私に向けた。
そりゃま、そうなるか。
着古した枯れ葉色のワンピース。
小さな穴のあいた靴。
くしゃくしゃの髪。
そんな他人にホイホイと家を紹介してくれる所なんてあるわけない。
しかたない。
聖女をやめる時もらった慰労金をほのめかす事にした。
「ご心配なく。
私は童顔で幼く見えるけどもう子供じゃないし、つい最近まで王宮で働いていたんで貯金だってそこそこありますから」
「ふーん。
王宮と言ってもどうせ下働きだろ。
そんなに貯まってないはずだ。
家賃の滞納とかお金のトラブルが、1番困るんだよなー。
悪いけど帰ってくれないか」
「なら。
家賃の1年分を先払いします。
それならいいでしょ。
お願い、おじさん。
私に家を探してください」
そう言って、スカートのポケットから1枚の金貨をとりだして店主の目の前にかざず。
「おおおー。
こんな大きな金貨は久しぶりに見たよ。
平民4人家族なら、これで軽く1年は暮らせるじゃないか!
いやーあ。驚き。
若いのにずいぶん貯めこんだもんだ。
ひょっとしたら、物好きな貴族のパトロンでもいたのかね。
ハハハッ。冗談、じょーだんだよ。
よし。これで商談成立だ。
さあ。物件の希望を聞くとしよう」
急にホクホク顔になった店主は、さっきとは真逆の態度をみせる。
ザ、商売人だね。けど、なんとか上手くいってホッとした。
それもこれも、結界が破壊しそうなのに、うつ手のない王族への不信感が招いた金貨の暴騰のおかげだ。
「これからお菓子屋を始めるつもりなの。(実は、今、とっさに思いついたんだけど)
だからできるだけ王宮に近い市場に、お店兼住居の物件を探しているのよ」
「なーるほど。
お嬢ちゃんは腕のいいお菓子職人ってわけか。
王宮では王様のお菓子を担当してたりしてな。
ワハハハ」
「もしそうなら、たっぷりと毒をいれてやったわ。
ねえ。マカとロン」
と呟いたと同時にオヤジが声をはる。
「お嬢ちゃん。
さっそくぴったりの物件が見つかった」
と。
紹介された物件は、聖女時代何回か視察でおとずれた市場の中にあった。
「あそこの市場にはね。
私の姿を見ると、涙を流して喜んでくれた人がいたの。
出来損ない聖女なのにね……。
わかったわ、そこに決めます」
「聖女?」
店主は一瞬不思議そうに首を傾げていたけど、すぐに契約の手続にとりかかった。
そして、数分後。
「はい。これが家の鍵だよ」
店主は壁にたくさんぶら下がっている鍵の中から、迷いなく1つを選ぶと私に手渡す。
「タール市場、3丁目3番ね。
さっそく今日から住みたいんだけど」
「あそこはもう空き屋なんで、こっちは全然かまわないよ。
では、ありがとうございました!」
「いえ。いえ。
こちらこそ、色々お世話様」
店主にペコンと頭を下げると、ピョコピョコと弾むように、人生初の私だけのお城へと向かった。
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