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32、転移魔法で館へ
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「なあ、ポポ。
今日はなんとなくオレに冷たくないか?
もし何かあるなら正直に言って欲しい。
オレは男に囲まれて育ったから、女心というのに鈍いんだ」
リリーから衝撃的な話を聞いた翌日の、夕飯の時だった。
スプーンでひよこ豆のトマトスープをひとさじすくってから、レオンはテーブルをはさんで向かいに座る私の顔を不安げにのぞきこむ。
「あらあ。そうかしら。
私はいつも通りのつもりなんだけど。
ねえ、2人はどう思う?」
と両隣にいるマカとロンに交互に微笑みかける。
「そーだな。
オイラはレオンの言っている事が正解だと思うぞ。
今だって、頬をピクピクさせて無理やり笑ってるみたいだもんな!」
最初に無邪気な声を上げたのはマカだった。
「そーう。おかしいわね。
じゃあ、ロンはどうかしら」
今度はひきつった笑顔をはりつけた顔を、ロンの方にむける。
「なんだか、背筋がゾクゾクと凍りつくようざんす。
悪いけどポポ。
ワタクシもマカと同じ意見よ。
どーみても、今日のポポはレオンに冷たいわ」
「やった。やっぱりオイラの目は節穴じゃなかったぞ」
マカが手にしたスプーンで、テーブルを叩いて騒ぐ。
そんな事はしょちゅうなのに、どうにもならいほどイライラしてしまって。
「うるさいでしょ!
食事中は静かにしなさいって、いつも言ってるのにまだわからないの。
このバカが!」
と、つい声をあらげてしまった。
「うえーん。ポポなんか大嫌いだよー」
マカが火がついたように泣きじゃくると、あわててロンが椅子から下りて、ヨシヨシと小さな手でマカの頭をなでる。
「おい。ポポ。
子供にあたるんじゃない。
言いたい事があれなら、オレに直接言ってくれよ」
レオンがテーブルの上に身を乗りだして、私を見据える。
「前にも言ったでしょ。
マカとロンは精霊で子供じゃないって」
「そういう問題じゃないだろ。
精霊だろうが子供だろうが、他人に八つ当たりするなって言ってるんだ」
「自分だけいいカッコしないでよ。
こないだ私がいないと生きていけないって言ったばっかりなのに、もう浮気をしてるくせに!」
じゃべっている間にだんだんと神経がたかぶってきて、最後は立ち上がり拳で、ドンとテーブルを力いっぱいなぐった。
「オレが浮気だって?
それは絶対にない。
信じてくれよ」
「え。レオンが浮気だって。
オイラのポポを裏切るなんて。
いくらレオンでも許せないぞ。
今すぐ、死刑にしてやる」
「これは相当なお仕置きが必要ざんすね」
私の耳に3人の言葉が同時にとどく。
「聞いてくれ。オレは無実なんだから」
「何が無実よ。
ジョーがね。王都で見たんだって。
レオンが女の人と派手な館に消えてゆくのを。
しかも、その館の場所を地図で示してくれたのよ」
私はジョーにもらった地図をエプロンのポケットから取り出すと、レオンの目の前でヒラヒラさせる。
とたんにレオンは、真っ青になってどもった。
「そ、そ、それはだな」
「ふーん。無実にしては、かなり動揺してるようね」
「ポポ。これは間違いなく黒ざんす」
「い、い、いや、ち、ち、ちがうんだ」
「何が違うんのよ。素直に認めないなら、相手の女の人に聞いてくるからね」
言いながら、地図上の館の場所に指を置いて、移動魔法の呪文をとなえる。
すると、すぐに指先から金色の光がこぼれ、私は地図の中へひきこまれていく。
気がついた時は、私は目指す館の前に立っていた。
「オイラ。その女をボコボコにしてやるからな」
「ワタクシはその女の額に『泥棒猫』って焼き印を押してやるざんす」
隣で、チビ達が吠えていたのが誤算だったけど。
「どさくさに紛れて、2人とも私にひっついてきたんだ…」
やられたという感じで、目を閉じると深いため息をついたのだ。
今日はなんとなくオレに冷たくないか?
もし何かあるなら正直に言って欲しい。
オレは男に囲まれて育ったから、女心というのに鈍いんだ」
リリーから衝撃的な話を聞いた翌日の、夕飯の時だった。
スプーンでひよこ豆のトマトスープをひとさじすくってから、レオンはテーブルをはさんで向かいに座る私の顔を不安げにのぞきこむ。
「あらあ。そうかしら。
私はいつも通りのつもりなんだけど。
ねえ、2人はどう思う?」
と両隣にいるマカとロンに交互に微笑みかける。
「そーだな。
オイラはレオンの言っている事が正解だと思うぞ。
今だって、頬をピクピクさせて無理やり笑ってるみたいだもんな!」
最初に無邪気な声を上げたのはマカだった。
「そーう。おかしいわね。
じゃあ、ロンはどうかしら」
今度はひきつった笑顔をはりつけた顔を、ロンの方にむける。
「なんだか、背筋がゾクゾクと凍りつくようざんす。
悪いけどポポ。
ワタクシもマカと同じ意見よ。
どーみても、今日のポポはレオンに冷たいわ」
「やった。やっぱりオイラの目は節穴じゃなかったぞ」
マカが手にしたスプーンで、テーブルを叩いて騒ぐ。
そんな事はしょちゅうなのに、どうにもならいほどイライラしてしまって。
「うるさいでしょ!
食事中は静かにしなさいって、いつも言ってるのにまだわからないの。
このバカが!」
と、つい声をあらげてしまった。
「うえーん。ポポなんか大嫌いだよー」
マカが火がついたように泣きじゃくると、あわててロンが椅子から下りて、ヨシヨシと小さな手でマカの頭をなでる。
「おい。ポポ。
子供にあたるんじゃない。
言いたい事があれなら、オレに直接言ってくれよ」
レオンがテーブルの上に身を乗りだして、私を見据える。
「前にも言ったでしょ。
マカとロンは精霊で子供じゃないって」
「そういう問題じゃないだろ。
精霊だろうが子供だろうが、他人に八つ当たりするなって言ってるんだ」
「自分だけいいカッコしないでよ。
こないだ私がいないと生きていけないって言ったばっかりなのに、もう浮気をしてるくせに!」
じゃべっている間にだんだんと神経がたかぶってきて、最後は立ち上がり拳で、ドンとテーブルを力いっぱいなぐった。
「オレが浮気だって?
それは絶対にない。
信じてくれよ」
「え。レオンが浮気だって。
オイラのポポを裏切るなんて。
いくらレオンでも許せないぞ。
今すぐ、死刑にしてやる」
「これは相当なお仕置きが必要ざんすね」
私の耳に3人の言葉が同時にとどく。
「聞いてくれ。オレは無実なんだから」
「何が無実よ。
ジョーがね。王都で見たんだって。
レオンが女の人と派手な館に消えてゆくのを。
しかも、その館の場所を地図で示してくれたのよ」
私はジョーにもらった地図をエプロンのポケットから取り出すと、レオンの目の前でヒラヒラさせる。
とたんにレオンは、真っ青になってどもった。
「そ、そ、それはだな」
「ふーん。無実にしては、かなり動揺してるようね」
「ポポ。これは間違いなく黒ざんす」
「い、い、いや、ち、ち、ちがうんだ」
「何が違うんのよ。素直に認めないなら、相手の女の人に聞いてくるからね」
言いながら、地図上の館の場所に指を置いて、移動魔法の呪文をとなえる。
すると、すぐに指先から金色の光がこぼれ、私は地図の中へひきこまれていく。
気がついた時は、私は目指す館の前に立っていた。
「オイラ。その女をボコボコにしてやるからな」
「ワタクシはその女の額に『泥棒猫』って焼き印を押してやるざんす」
隣で、チビ達が吠えていたのが誤算だったけど。
「どさくさに紛れて、2人とも私にひっついてきたんだ…」
やられたという感じで、目を閉じると深いため息をついたのだ。
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