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51、私は転生者
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バーチャ海は国の最北端にある。
南国のキラキラ輝く海とは違って、黒味がかった藍色や灰色が混じった波の色は見ているだけで気分が
沈んでゆく。
おまけに海はとても濃い瘴気でおおわれていた。
「ここの海底にひそむ魔物が漁師たちの船を襲撃するので、我が国の漁獲高は他国にくらべて著しくさえない。
けど、この課題も今日で解決だな。
エリザの手にかかれば、魔物も一網打尽だ」
「魔物だけじゃないわ。
目の前にいる、うっとおしいチビも今日でおわりよ。
さっさとかたずけて、王宮へ帰り最高のワインで乾杯しましょう」
船上のうえでも、リオンにベッタリと身体を密着させたエリザが勝ち誇った顔をこちらへむけた。
「バーカ。
オマエみたいな腐った魔女に、ポポが負けるわけないだろ!」
「マカの言う通りざんすよ」
私の顔の周りをフワフワと漂いながら、チビ達が「ベー」と舌をだす。
「お黙り。
たかがお菓子の精霊風情で、私に大きな口をきくとは無礼ね。
サッサとここから消えてもらうわ」
水色の長い髪をヒラヒラと風になびかせたエリザは、きっと眉をつりあげるとチビ達に人差し指をふり
魔法を発動させた。
どうやらエリザには、普通の人には見えない精霊の姿が見えるようだ。
(レオンに見えているのは、私がレオンに魔法をかけたから)
「チビ達が見えているって事は、なかなかの魔力をもっているようね。
でも、1度目のように私はやられないから」
そう言うと、エリザの指先からこぼれる銀色の光に「消えて」とつぶやき、エリザの魔法を消去する。
「その程度の魔法でドヤ顔とは笑えるわね。
それに1度めとはどういう意味なの。
まさか転生したとでもいうつもり?」
「そうよ。私は転生して、今は2度目の人生を生きているの。
1度目ではね。
私はアナタに毒殺されたのよ。
ねえ。教えて。
喜んで聖女の座を譲ったのに、私が殺された理由を」
「それはポポがこの国を愛しているからよ。
もし、私がシュメール国を滅ぼそうしたら、きっとポポは全力で抵抗してくるでしょ。
だからよ。
今の私も同じ事を考えているからわかるの」
「シュメールを滅ぼすですって!
エリザ、どうしてそんな事をするの?」
「前の王、サルラに青春をメチャクチャにされたからよ!
アイツのせいで、私は子供を産めない身体になったの。
けど、アイツは他の女と子供をつくり、私の事なんかすっかり忘れていた。
だから罰をあたえないとね」
床をけって、宙にフワリと浮いたエリザを見上げた私は、大きく目を見開き驚きの声をあげた。
「エリザがまるで別人になってる!
あ、復讐の為にリオン好みの女に化けていたのね。
だけど、今の方が断然可愛いわ」
「オイラもこっちのエリザの方がずーと好きだぞ」
「ワタクシもざんす」
黒目黒髪の姿に戻ったエリザは地味だけど、とても感じがいい。
ま、リオンだけはそうじゃなかったみたいだけど。
「げえええ、誰だ、あの陰気な女は。
ダッサあー。まるで汚物じゃないか。
オレはあんなブスと愛をささやいていたのか。
エリザ。オマエはオレの人生最大の汚点だ!」
今まで私達の話を黙って聞いていたリオンが、自分の胸に手をあてて「ゲエゲエ」と吐きそうなそぶりをする。
「それ以上言うと、魔法でボコボコにするわよ」
「バーカ。
レオンがいないとしょぼい魔法しか使えないくせに、大きな口をたたくな。
よく、聞け。
オマエの魔力を封じるために、オレが船底にレオンを閉じ込めてやった。
ざまあみろ!」
リオンが私を指さしして、ケタケタと嫌な笑い声をあげた時だった。
「『オマエはオレの人生最大の汚点だ!』ですって。
サルラも同じ事を言って、私をおとしめた。
どんなに時がたっても、この言葉だけは許せない。
魔物達よ!
船上に美味しい人間を用意したから、遠慮なく召し上がれ」
髪を逆立てたエリザが海にむかって、上下に指をふる。
すると船内はグラリと左右に大きく揺れ、海底から半魚人達がザクザクザクと不気味な足音をたてて、おしよせてきたのだ。
南国のキラキラ輝く海とは違って、黒味がかった藍色や灰色が混じった波の色は見ているだけで気分が
沈んでゆく。
おまけに海はとても濃い瘴気でおおわれていた。
「ここの海底にひそむ魔物が漁師たちの船を襲撃するので、我が国の漁獲高は他国にくらべて著しくさえない。
けど、この課題も今日で解決だな。
エリザの手にかかれば、魔物も一網打尽だ」
「魔物だけじゃないわ。
目の前にいる、うっとおしいチビも今日でおわりよ。
さっさとかたずけて、王宮へ帰り最高のワインで乾杯しましょう」
船上のうえでも、リオンにベッタリと身体を密着させたエリザが勝ち誇った顔をこちらへむけた。
「バーカ。
オマエみたいな腐った魔女に、ポポが負けるわけないだろ!」
「マカの言う通りざんすよ」
私の顔の周りをフワフワと漂いながら、チビ達が「ベー」と舌をだす。
「お黙り。
たかがお菓子の精霊風情で、私に大きな口をきくとは無礼ね。
サッサとここから消えてもらうわ」
水色の長い髪をヒラヒラと風になびかせたエリザは、きっと眉をつりあげるとチビ達に人差し指をふり
魔法を発動させた。
どうやらエリザには、普通の人には見えない精霊の姿が見えるようだ。
(レオンに見えているのは、私がレオンに魔法をかけたから)
「チビ達が見えているって事は、なかなかの魔力をもっているようね。
でも、1度目のように私はやられないから」
そう言うと、エリザの指先からこぼれる銀色の光に「消えて」とつぶやき、エリザの魔法を消去する。
「その程度の魔法でドヤ顔とは笑えるわね。
それに1度めとはどういう意味なの。
まさか転生したとでもいうつもり?」
「そうよ。私は転生して、今は2度目の人生を生きているの。
1度目ではね。
私はアナタに毒殺されたのよ。
ねえ。教えて。
喜んで聖女の座を譲ったのに、私が殺された理由を」
「それはポポがこの国を愛しているからよ。
もし、私がシュメール国を滅ぼそうしたら、きっとポポは全力で抵抗してくるでしょ。
だからよ。
今の私も同じ事を考えているからわかるの」
「シュメールを滅ぼすですって!
エリザ、どうしてそんな事をするの?」
「前の王、サルラに青春をメチャクチャにされたからよ!
アイツのせいで、私は子供を産めない身体になったの。
けど、アイツは他の女と子供をつくり、私の事なんかすっかり忘れていた。
だから罰をあたえないとね」
床をけって、宙にフワリと浮いたエリザを見上げた私は、大きく目を見開き驚きの声をあげた。
「エリザがまるで別人になってる!
あ、復讐の為にリオン好みの女に化けていたのね。
だけど、今の方が断然可愛いわ」
「オイラもこっちのエリザの方がずーと好きだぞ」
「ワタクシもざんす」
黒目黒髪の姿に戻ったエリザは地味だけど、とても感じがいい。
ま、リオンだけはそうじゃなかったみたいだけど。
「げえええ、誰だ、あの陰気な女は。
ダッサあー。まるで汚物じゃないか。
オレはあんなブスと愛をささやいていたのか。
エリザ。オマエはオレの人生最大の汚点だ!」
今まで私達の話を黙って聞いていたリオンが、自分の胸に手をあてて「ゲエゲエ」と吐きそうなそぶりをする。
「それ以上言うと、魔法でボコボコにするわよ」
「バーカ。
レオンがいないとしょぼい魔法しか使えないくせに、大きな口をたたくな。
よく、聞け。
オマエの魔力を封じるために、オレが船底にレオンを閉じ込めてやった。
ざまあみろ!」
リオンが私を指さしして、ケタケタと嫌な笑い声をあげた時だった。
「『オマエはオレの人生最大の汚点だ!』ですって。
サルラも同じ事を言って、私をおとしめた。
どんなに時がたっても、この言葉だけは許せない。
魔物達よ!
船上に美味しい人間を用意したから、遠慮なく召し上がれ」
髪を逆立てたエリザが海にむかって、上下に指をふる。
すると船内はグラリと左右に大きく揺れ、海底から半魚人達がザクザクザクと不気味な足音をたてて、おしよせてきたのだ。
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