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50、エリザからの挑戦状

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「ポポ。たいへんだぞ!」

「たいへんざます!」

 貴重な休日を庭園にあるガゼホでレオンと2人きりで過ごしていたら、お邪魔なチビ達が壁をするぬけてきた。

「これからポポをゆっくり味わうところだったのに。
 残念だな」

 私の身体をグイッとひきよせ、自分の膝の上にのせたレオンが不機嫌そうに眉をしかめる。

「味わうだなんて……。
 エッチな言い方ね」

 ポッと頬をそめてうつむいた。

「もし嫌な気分にさせたのなら謝る」

 レオンはそう言って、私の身体を背中からギュッと抱きしめる。

「どんな言葉もレオンの口からこぼれると、砂糖菓子のように甘くなるの。
 だから気にしないで」
とレオンを振り返ったタイミングで、チュッと頬にキスをされた。

「だめよ。レオン。マカとロンがいるのに恥ずかしいから」
と耳たぶまで真っ赤にしていると、額、首筋、唇とレオンのキスが容赦なくおちてくる。

「そうやって恥じらうポポは世界1可愛いから、我慢できないんだ」

「世界1可愛いだなんて」

 両手を頬にあててモジモジしていると、いつも冷静なレオンがハアハアと息を荒くした。

「もうこれは可愛いを通りすぎている。
 もはや神レベルに尊い」

「私よりレオンの方がずーとずーと尊いの」

「ポポ。オレのポポ」

「レオン。私の…」
と言おうとした時だった。

 頭からザバーっと冷たい水がふってきたのは。

「こら。マカ。
 魔法を悪戯に使ったらダメって言ったでしょ」

 魔法で指から熱風をだして、濡れた身体を乾かしながらマカを見上げる。

「だってさ。
 ずーとオイラ達を無視するんだもん。
 ポポにとって、凄くたいへんな事がおきてるのにさ」

「そう言えば、さっきなんか叫んでたわね。
 で、一体、何がたいへんなの?」

「王宮にエリザが現れた!!!」

 チビ達が声をはりあげた。

「なんですって。
 1度目で私を毒殺したエリザが!」

 死の恐怖が身体によみがえり、顔から一気に血の気がひいてゆくのがわかる。

「新しいリオン王の愛人の魔力がすごいって、王宮でも評判じゃん。
 さっき、オイラ達その女を見かけたんだけどさ。
 あれはどう見てもエリザだった」

「色っぽい身体に長い水色の髪。
 ワタクシもエリザに違いないと思うざます」

「で、ロン。その女はどこへ行ったの?」

「うーん。たぶん王様の私室じゃない。
 リオンとベッタリと腕をくんで廊下を歩いていたから。
 きっと今頃は部屋で、さっきのポポとレオンみたいに……」

「こら。ロン。
 それ以上言うと頭をぶつわよ。
 ほんと。おませなんだから」
と、腕を振り上げたと同時にガセホの扉が荒々しくノックされた。

「ポポ聖女。
 おられますか?
 至急の話があるので、ここをあけて下され」

 声の主はサー教皇とすぐにわかったので、私は扉を開いた。

「そんなにあわててどうしたの?」

「『聖女に認定して欲しい女がいる』と王様から連絡をうけ、さきほどその女に会ってまいりました。
 女の名はエリザといって、驚くほどの魔力の持ち主です」

 やはりエリザだったのね。

 けど、2度目はやられたりしない。

 身体の横で拳をつくり、キュッと唇をかんだ。

「それで?」

申し訳なさそうな顔をしているサー教皇に言葉をうながした時、ノックもなしにバタリと扉が大きく開く。

「だからね。
 私とアナタが魔力を競うの。
 それで勝った方は聖女になり、負けた方は処刑されるってわけよ」
 
 扉のすぐ前に現れたのはエリザだ。

 リオンの腕に自分の腕をからませたエリザの瞳は、意地悪く光っている。
 
「言っておくが、エリザの魔力は強いぞ。
 あと少しでオマエはこの世から消える」
 
 リオンはぎらついた瞳で私をにらんでから、天井を見上げケタケタと笑う。

「聞け!
 勝負は三日後。場所はバーチャ海だ。
 夕日が沈むまでに、1匹でも多く魔獣を倒した方を勝ちとする」

 居丈高に用件を伝えたリオンはエリザと教皇をひきつれ、ガセホを後にした。

「お願い。誰か塩をまいて!」

 聞こえよがしにそう言ってやったのが、私のささやかな抵抗だったのだ。

 

 
  
  
 
 


 
 











 

 

 
 

 
 
 

  
 

 
 



 

 


 




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