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49、エリザという魔女 エリザ視点

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 スイウン国の王族は魔法が使えた。

 ただ戦争では発揮できない魔法ではあるが。
 
  そのおかげでわが国は、鍛いあげた最強の軍隊を持てたのだけどね。

 軍の次の獲物はシュメール国だ。

 けど、あの国の陥落はお父様に頼んで、私に任せてもらった。

 私をボロくずのように捨てた、前王サルラの復讐の為に。

 憎いサルラはとっくに死んでいる。

 それでも、まだ私が若々しく生きているのは、スイウン人の年の取り方がとても緩やかだから。

 だけど、恨みをかかえて長生きするのは苦痛だ。

 こうなったのも、全部サルサのせい。

 私はリオン好みの女に魔法で姿を変えると、両手を大きく広げて空へ飛びたつ。

 そして、無事王宮内のバラ園に着地した時だった。

 タイミングよく、リオンが現れたのは。

「両手を翼にして王様の為に飛んでまいりましたが、途中でカラスの襲撃にあいパーティに遅れてしまいましたわ。
 申し訳ありません。
 私はスイウン国の王女。
 エリザベートカノンと申します。
 エリザとお呼びくださいませ」

 そう挨拶をした瞬間、すかさずリオンに魅了魔法をかけた。

「本当に空を飛んできたのか?」

 魔法がきいたのね。

 しばらくボーとしていたリオンは、バカにしたような感じで聞いてきた。

 リオンの顔はサルサにそっくり。

 しかも、そっくりなのは外見だけじゃない。

 美しいけど頭の中はお花畑、みたいな雰囲気も似ている。

「はい。
 スイウン国の王女は皆魔法が使えるのです。
 魔力では、王様を悩ましているシュメール国の聖女ポポ様にも負けませんことよ」

「オレがアイツに悩んでいるだと。
 バカバカしい」

 ちょっと挑発してやると、すぐにリオンはのってきた。

「違いますか?」

「ああ、今その証拠をみせてやる」

 リオンはそう言って、私を両手でガシリと抱きしめると、荒々しいキスの何度もおとした。

 アホ男はすっかり私に陶酔しているようだ。

 ひょっとして、私を天があたえた救世主とでも勘違いしているのかしら。

 フフフ。フフ

 吹き出しそうになるのをこらえて、リオンのされるがままに身をまかせる。

 私に触れれば触れるほど、魅了魔法はきいてくるからよ。

 サルラが男を使って私を破滅させたように、今度は私が女を使ってリオンを地獄におとしてやる。

 あらたに決意を強くすると、若い時のサルラと私が脳裏に蘇ってきた。

「サルラ、私、子供ができたみたいなの」

「オレの子っていう証拠はあるのか。
 オレは将来のシュメール王だ。
 卒業したら、国へ帰って聖女と結婚する」

「うそ。
 ずーと王位は継がない。
 スイウンに残って、私と結婚するって言ってたじゃない。
 だから、サルラをうけいれたのよ」

「これだから、遊びなれないブスはうっとおしい。
 あれはただの口説き文句だ。
 腹の中の子供ぐらい、お得意の魔法でなんとかできないのか」

「私をもて遊んだのね」

「てか、利用させてもらった。
 ここの学園の授業はオレにはレベルが高すぎてな。
 オマエに課題をさせる為に近づいたんだ。
 ギャハハ、ハハハ」

 野卑な笑いをたてて、その場から立ち去ろうとするサルラに、私はしがみついた。

「この子はどうなるの。
 もう少し話しあいましょう」

「やーだね」

 サルラがにやついて、私を押しのけてた。

 その力があまりに強すぎて、私は足元をふらつかせてバタリと倒れてしまう。

 その時、身体を地面で強くうち、お腹から血がタラタラと流れた。

「サルラ、助けて」

 なんどもサルラを呼んだのに、サルラは鼻歌をうたいながら去って行った。

 たまたま通りがかった夫婦に病院に連れていってもらったけれど、お腹の子は流れ、私は2度と妊娠できない身体になった。


 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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