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48、エリザという魔女 リオン視点

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「けっ。なにが『希望の2人』だ。
 ポポはなぜ、レオンがいないと魔力が発揮できないのか」
 
オレは力任せに、座っている書斎の机を拳でたたいた。

「その理由はいたって簡単。
 聖女がレオン様を愛している……」
と机の前で、話を続けようとするマッチン宰相を手で制する。

「黙れ。だたの独り言にクソ真面目に答えなくていい。
 それより、今朝の貴族会議にはオレが出席するぞ」

「おや。珍しい。
 煩わしいからって、毎回レオン様を代わりに出席させていたのに。
 一体全体、どういう風の吹きまわしでしょうかね」

「高位貴族しか知らないはずのオレ達の秘密がばれて、王宮中の噂になっているからだ。
 きっとこれは誰かの陰謀に違いない。
 宰相、犯人に心当たりはないか」

「ありますぞ!
たしか息子のイワンが……」

 宰相は言いかけて、すぐに両手で自分の口をおさえかたまった。

「イワンが何か知ってるのか!」

「いえ。いえ。
 息子のイワンも心配しています、と言おうとしただけです。
 それよりも王様。 
 今さら会議に出席しても、バカが、じゃなくて、レオン様に丸投げしていたのが露呈するだけ。
 会議はこれまで通り、王様になり変わったレオン様に任せておきましょう」

「それもそうかな。
 けど、ムシャクシャしてしかたないんだ。
 平民から貴族までが口をそろえて『王にふさわしいのはレオンの方だ』と言ってるようで」

「しかたないじゃないですか。
 本当のことですから。
 あーあああ。
 つい口がすべってしまった」

「もういいから下げれ。このハゲめが」

 オレは机の上に積まれた書類の束を手で床に払った。

 バラバラと落ちたこれらの書類の処理も、ずーとレオンにやらせていたのだ。

「ザコどもがいくら騒いでも、王様の立場はバンジャクですぞ。
 気晴らしでもして、噂が静まるのは待ちましょう。
 そうだ。
 今度のリオン様の誕生パーティーに世界中の美女を集めて、盛大に盛り上がりましょう!」
 
 書類を拾いながら宰相がにやにやした顔をこちらにむける。

 それから約1月後。

 王宮で催された誕生パーティはひときわ華やかな宴となった。

「王様、おめでとうございます」

「こんなお美しい王様は初めてです」

 肌の露出の多いドレスを着た各国の美女が、オレの周囲に山のように集まる。

 オレは大広間の隅にいるポポに見せつけるつもりで、女達の唇に順番に長いキスをおとす。

「どうだ。妬けるだろう」

 チラリとポポの方に視線を移すと、なんとポポはレオンと楽しそうに笑っていたのだ。

ポポめ。ぶっ殺してやるぞ。

ムショウに腹が立ち、オレは庭園に飛びだした。

 そして、そこで出会ってのだ。

 真実の愛の女に。

「両手を翼にして王様の為に飛んでまいりましたが、途中でカラスの襲撃にあいパーティーに遅れてしまいましたわ。
申し訳けありません。
 ワタクシはスイウン国の王女。
 エリザベートカノンと申します。
 エリザとお呼びくださいませ」

 咲き乱れるバラ園の真ん中で微笑むエリザと視線がぶつかった時、脳内が真っ白に発光したのだ。

 長身の肢体は、キュッと腰がくびれ細いのに胸はこんもりと盛り上がっている。

 背中の半分まであるシルクのような水色のまっすぐの髪。

 髪と同じ色の瞳はうるみ、プックリとした唇はまるで誘っているように色っぽい。

「本当に空を飛んできたのか?」

「はい。
スイウン国の王女は皆魔法が使えるのです。
 魔力では、王様を悩ましているシュメール国の聖女ポポ様にも負けませんことよ」

「オレがアイツに悩んでいるだと、バカバカしい」

「違いますか?」

「ああ。今その証拠をみせてやる」

 オレはエリザを両手でガシリと抱きしめると、荒々しいキスを何度もおとした。

 エリザは天があたえた、オレの救世主にちがいない。





 
 


 

 

 
 

 
 
  


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