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聖女だった令嬢

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 十階にはゾンビが沸いていた。
 人型だけど全身がボロボロで悪魔のような目つきをしている。ゾンビは、こちらに気づくと襲ってきた。

「ここは、わたくしが相手をしましょう」
「おぉ、ついにレイアが動いてくれるのか。君の能力を見せてくれ」
「では、皆さん離れていて下さいませ」

 手をゾンビ達に向け、レイアは何か詠唱。やがて、手に光が宿ると――それは放たれた。こ、これは……!

 白い光が放出されると、ゾンビ達が浄化されていた。

 間違いない、これは聖属性魔法だ。

「すごい……」
「聖属性魔法の『ホーリークロス』です。申し遅れましたが、これでもわたくしは聖女(?)なのです!」

 マジ? 聖女だったのか。
 いや、この場合は聖男?
 単に『聖者』でいいか。


「なるほどなぁ、レイアにこんな特殊能力があったとは……」


 十階も難なくクリアしていく。しかし、ガーネットスターのメンバーは、思ったよりもレベルが高いな。こりゃ、楽勝で進めちゃうな。もっとタワーの階層を増やさないとなぁ。

「あの、カムイ様……」
「あー、ごめん、コーラル。ちょっと考え事をしていたよ」
「休憩しますか?」

「いや、それより今日の攻略はここまでにしよう。サンプルも結構取れたし、今後の開発に活かさせてもらうよ。みんな、ありがとう」

 礼を言うと、みんな納得してくれた。

「こちらこそ楽しい時間を過ごせたよ、カムイくん。このタワーダンジョンは興味深かった! 考古学者としての血が騒いだね」

 ほぼ静観していたドウェインがそう言った。そういえば、この人、荷物持ちばかりだったな。ドウェインは何か力を持っていないのだろうか。

 まあいいか、まだ難易度もそれほど高いわけじゃないし、今日は緩くも無事に終わった。帰ろう。

「では、テレポートします!」


 ◆


 タワーダンジョンの目の前には、まだ冒険者がたくさんいた。諦めの悪い。

「レイア、僕はしらばくタワーダンジョンの開発に注力しようと思う。やっぱり、まだまだ物足りないと実感したよ」
「そうですか? 今のままでも結構良い雰囲気でしたし、アイテムだってこんなにたくさん」

 今日そこそこダンジョンも歩いて回ったけど、ドロップ品やらレアアイテムも入手していた。その全てはレイア達に任せたけど。


「ああ、でももっと楽しめるようなダンジョンにしたいと思う。百階まで作ったら、また同行をお願いしたい」
「はい、分かりました。わたくしは、南のギルド拠点にいますので、そこを訪ねて下さいませ」

「了解した。じゃあ、また」


 レイア達は去っていく。
 久しぶりに僕とコーラルの二人きりになった。今まで賑やかなパーティなだけあって、静かになったな。

 そんな中、タワーダンジョン前にいる冒険者達が駆け寄ってきた。


「あの、管理人さんですよね!?」「俺たちもタワーダンジョンに入れてくれよ!」「管理人さん!」「なあ、管理人さんってば!」「管理人さん、イケメンよね。どう、あたしと二人きりで♪」「頼むから解放してくれよ~!」


 あわわ……こりゃ大変だ。
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