鉄の城に砂の唄が呻く

”不幸なりに、それなりに楽しく生きてきた筈だった”

人生そんなに恵まれた方じゃなかったけれど、それなりに楽しく生きてきたと思っていたのに。
ツレが消えた。きっかけは些細なようでいてそうでもなかったけれど、とにかくいつもつるんでいたツレが界隈に姿を見せなくなって一週間、口約束で借りていた数百万の借金を急に返せと督促を喰らったかと思ったら、終いには母さんが突然死んだ。
人生の坂を急転直下で転がり落ちて、地べたに激突した俺は何が悲しいかって、借金がどうとか、自分の身の上がどうとか、そんな事微塵も効いていなかったけれど、とにかく。

独りぼっちになってしまった。だから。

傘も差せない雨の中、コンクリートジャングルの中で、俺は。

生きることが、どうでも良くなってしまった。

不幸なりにそれなりの人生だった主人公が天涯孤独の身になった事をきっかけに自暴自棄に陥り、自分の命を売る選択をした。

身を呈して誰かの盾になる。

それがお金になって、誰かの命が助かって、それで。
俺の命ひとつで、全部清算しておしまいにしよう、ってそう思っただけの事が。

「人間って、思ったより簡単に死ぬだろ」

ただ、生き意地汚い自分を知るだけだった。
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