ゆとりある生活を異世界で

コロ

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北の地にて

Buckwheat

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ワイナール皇国歴286年、8の月




「さぁ着いたよ、あの街門の向こうがコウトーだ」

「「「「「うん!」」」」」
「おっきーねー」
「たかいねー」
「ひろいねー」
「「「「「すごいねー‼︎」」」」」

「君達が住んでいたアヌビスと比べてどうかな?」

「「「「「??わかんない??」」」」」

「ふふっ…まぁそうか
よし、では私達がロウ君と一緒に住んでいるおウチへ行こうか?
ここから少し遠くまで歩くが大丈夫かな?」

「「「「「うん!」」」」」
「ヘッチャラだよ!」
「うん、小さい子達も歩くのはだいじょうぶ!」
「オイラたち皆んな歩くのはヘッチャラだよ」

「そうかね?では早速行こうか」

「「「「「うん‼︎」」」」」

「「ロベルト様」」

「うん?リズ、ミア、どうしたのかね?」

「ロベルト様は馬車に御乗りください」
「はい。いくら私どもが付いていても、まだまだコウトーは湧き立っております
万が一という事もありますから」

「ふう…やれやれ……私も見縊られたものだ…
リズ?ミア?私もコロージュンなのだよ?」

「はい。それは重々承知しています」
「はい。しかし、万が一にも備えないのはロウ様が1番嫌がられる事です」

「あゝ…君達の気持ちは解るよ……
しかし、まだ君達はロウ君を解っていない部分があるのでは無いかな?
そうだな……では、こう考えてみたまえ
今、この場で私が馬車に乗り、子供達を歩かせ独り安全に屋敷に還る
そして、安全な屋敷で子供達の到着を待つとしよう
その話を聞いたロウ君がどう思うかな?
私には、何も文句は言わないが眉をひそめて難しい顔をしたロウ君が見えるよ」

「「それは……」」

「リズとミアにも見えただろう?」

「「はい…」」

「そのロウ君の顔は何と言っていた?」

「「……」」
リズとミアが無言で頭を振る

「ロウ君はね?《大人はオトナの務めを果たせ》と言っているのさ」
ロベルトが肩を竦める
「まぁ、幼い身で大人の務めを果たすロウ君に直接言われても腹も立たないけどね?ククッ…」

「申し訳ありません」
「出過ぎた事を申し上げました」

「なに、構わないさ。気にしてはいないよ?
さ!子供達‼︎ロウ君の事でも噂しながら私のお家へ歩こうか?
ウワサをすれば早く還ってくるかもしれないよ?」
ロベルトが子供達にウィンクする

「「「「「ホントに⁉︎」」」」」
「する!するよオジさん‼︎」
「ウン!ロウがアロを降参させたの教えてあげるわ!」
「あ、オイラも!ワラシのこと教える‼︎」

「お⁉︎そうか~それは楽しみだなぁ」







「やあ、お目覚め?
あ、申し訳ないんだけど縛を解く訳にはいかないんだよね?
貴方達は何ら警告する事もなく、俺たちに矢を射かけてきた
それも、ただ河を渡ってきていただけの俺たちに。だね?
それはまぁ、俺からしたら《怖いもの知らずのバカ》って認識ではあるんだけど
結局ね?行為自体は敵対行動をしたんだよ?
わかる?ガードナー辺境伯領の御役人おバカさん?
あ⁉︎ごめんねぇ~~?クチがきけないんだよねぇ~~?
今回、俺の《魔縄縛》はさ?ちょっと魔力強めにしてあるからさ
身体拘束と口封じも同時に行使しちゃったりしてね、ヘヘッ…
ん?おやおや~?心の声が漏れてきてるなぁ~?
なんだって?俺みたいなガキが何故そんな魔法をって?
やれやれ…」
ロウが腰に手を充て、軽く俯き頭を振る
「やっぱり、御役人と書いて《おバカ》と読むのかぁ
自分の頭で考える事もしないんだね?
点数稼ぎにガードナー辺境伯の威光を笠に着て突然集落を襲うぐらいの悪知恵は働かせられるのにね?」
徴税官達の目が大きく見開かれ、微かに怯えの影が見えた
「やあっっぱりかあぁぁぁ~♪ククククク…
ウリシュクの皆んな?」
ロウが少し離れた場所で見守るウリシュク達に向き直り
「安心しなよ、貴方達の先祖とバスター・ガードナーの約束は生きていたよ」

「なに⁉︎本当か⁉︎」「そうだったのか⁉︎」「しかし、何故それが分かったのだ?」「うむ、その者等は何も話してはおらぬだろう?」

「ん?その辺りは、後でキチンと説明してあげるよ」

「む?そうか」「オマエが後で説明すると言うなら待とう」「うむ、オマエは我等に悪意が無いからな」

「うん、もう少し待っててね?
さて、ある意味自縄自縛な御役人おバカさんに
さっきの疑問のヒントをあげようかな?
俺たちは河を渡って何処から来たのかな~?
そして、河の向こうの領の大元の支配家の特技…いや、御家芸は何かな~?
それに、貴方達は最初俺たちに向かって何と言った?何呼ばわりした?
妖魔とでも言わなかった?
さぁ、thinking timeだ!時間はタップリあるから考えてなよ」

「「「「「?⁉︎?⁉︎」」」」」



「ワンワン?」(根に持ってるね?)

「まぁね?でも、小悪党な小役人で良かったよ
簡単な鎌かけにアッサリと引っかかってくれたからね?
でも、俺は祖父さんや叔父さんみたいに脳関係は上手くは出来ないなぁ
妙に引っかかって鎌かけしなかったらガードナー辺境伯の直接指示だって思い込んでたよ
思い込みなんかでカチコミなんてアホな事になってたかもしれないからね?
そうなってたらガードナー家とウチは下手したら戦争になってたかもしれない
隣接する敵なんて厄介以上だよ
遠交近攻なんて実際にやってしまったら、横腹から第三勢力に食いつかれるからね
敵味方の数が不明な内はやってられないよ
でもまぁ、徴税官達の独断で兵達は知らなかったみたいだし
もっとしっかり頭の中の記憶を引き出せるようにならないと、勘違いから大変な事をしでかしそうで怖いな」

「ワフッ」(練習あるのみだね)

「うん、そうだねコマちゃん

さて、徴税官達は暫く放っておこう
それに、あの徴税官おバカ達のお陰でウリシュクの皆んなが
ここに恒久的に住めるようにする方策も思い付いたから
もう、子供の樽流しの心配も要らないよ」

「「「「「本当か⁉︎」」」」」

「うん、本当だよ。
ガードナー辺境伯が、よほど話が分からないバカじゃない限りは大丈夫だよ
その為にも、まずは貴方達が普段から食べている黒麦?料理が知りたいな?」

「うむ!任せよ」「あゝ!久方ぶりにオスも腕を奮おう」「メスどもも今日は豪華にせよ」
「「「「「わかってるよ!任せな!」」」」」
「さぁ子供達も手伝いな?」
「「「「「うん!」」」」」






「やあ!ウッスイさん、お言葉に甘えて油を見せてもらいにきたよ
チッキーちゃんも呼びに来てくれて、ありがとうな?
ミアさんじゃないが、俺からも駄賃をあげるよ」
ポロがチッキーの頭を撫でながら銀貨1枚をチッキーの手に握らせる

「えっ⁉︎お父ちゃんに言われて呼びに行っただけだから貰えないよ⁉︎」

「良いんだよ?ちゃんとお遣いが出来たんじゃないか
それは働いたって事だろう?
働いたんなら賃金を貰わなきゃな?」

「え⁉︎でも~」
チッキーが困った様にウッスイを見る
「ポロさんよ?有り難いんだが、子供に銀貨は多くないか?」

「何言ってんだよウッスイさん、ミアさんからは2枚貰ってんだろう?
その半分じゃないか?
それに、金は多く持ってても困る事はないさ
見せびらかさなきゃな?」

「それは…そうなんだろうが…」

「だが、チッキーちゃん?
金を持ってる事をヒトに言う分には大丈夫だが
見せびらかしちゃダメだからね?
ヒトは実際に目にしてしまうとトチ狂ってしまうからな?
しっかりと仕舞ってな?」

「うん!ありがとう!」

「うん、ヨシヨシ
さぁ、じゃあ油を見せてもらっても構わないかな?ウッスイさん」

「あゝ、こっちだ
ポロさんが紹介してくれた宿屋だから、1階奥に盗まれない様に置かせてくれたんだ
油が入った壺を部屋まで上げなくて済んだから助かったよ」

「お?そうなのかい?じゃあ、俺からも後で礼を言っとくよ」

「そうしてくれるか?
じゃあ油の所で村の仲間も待ってるから行こう」

「あゝ、そうしよう。さあ、キッツ、ネイラー、行くぞ」

「「はい」」

ウッスイ、チッキー親娘に続いて、ポロ、キッツ、ネイラーも後を追い、宿屋奥へと入っていく
そして、倉庫みたいな部屋へ入ると2人の獣人が待っていた

「やあ、どうも、油を見せてもらいにきたパウル商会のポロですよ
後ろの2人は部下のキッツとネイラー、今回はヨロシクお願いしますね」

「あゝ、ウッスイから話は聞いたよ
私は鹿のヘルクだ」
「俺は山羊のカイナだ」
「ポロさんよ、今回は4壺分運んできてんだ
これが売れたら暫くは油は休みになる」

「ん?あゝそうか?その黄色い花を栽培してないから、咲いて種が採れるまで油が作れないんだね?」

「あゝそうなんだよ、せっかくロウが教えてくれた知識でもモノが無きゃあな?」
「うむ、あの菜の花は村内の彼方此方あちらこちらで咲くとはいえ、纏まった数がある訳でも無いからな
せっかくロウが教えてくれたのに残念だ」
「まったくな?ヴァイパーのお陰で魔獣が出なくなったから山の藪クラまで入っていけるようになったってのになぁ」

「……ま、まぁ、その辺りは後で詳しく話を聞かせてくれるかい?」
「「……」」
キッツ、ネイラーが微妙な顔で頷いているも、ポロから聞いているからか余計な事は言わない
「あ、キッツ?木碗を出してくれ、それに油を入れてから明るい場所で油を検証させてもらおう」
「はい」
「ネイラーは書き物の用意を」
「はい」

キッツが木の碗に油を入れたら、全員が宿屋の外にまで出て
油を陽にかざしたり、手に取ったり、少しだけ舐めたりして検証していく

「「「なるほど~」」」
「こりゃあ良い油だね⁉︎」
「うん、今までいくらで売ってたか知らないけど、これは良い値で卸せるよ」
「量さえあれば大儲けが見込めるね」

「「「そうなのか⁉︎」」」

「あゝ間違いないと思うよ?
そりゃ、今から菜の花?って言ってたかな?その花を増やしたりとか諸々の準備は必要になるだろうが
必要な事をコツコツと準備していけば年々収穫は上がっていくものだろう?
それは普段が農家の者なら解るんじゃないか?」

「「「なるほど…確かに」」」

「うん、じゃあ今まで何て言う商店に卸してたのか
1壺あたりで価格はいくらだったのかを教えてくれないか?
我々が、それは適正な価格だったのかを検証してみるし
それでアンタらが儲かってるようだったら
それは邪魔しないで、我々は別口での商いの事を検討するよ」

「アンタらは、それで良いのか?」
「うん、あまり得しないんじゃないか?」

「ん?構わないよ?俺たちは商人だから損をしない方法は考えてるんだよ
それに、ロ…あー、いや、なんでもない」

「「「??」」」



「おや?ポロじゃないか?
こんな往来で何をしているのかな?商談かい?」

「「「「「え?」」」」」
油の事で話していた全員が声の方へ振り向くと、そこには子供達をゾロゾロと引き連れたロベルトがいた

「あれ?ロベルト様?

え⁉︎ロベルト様⁉︎こんな場所を歩いて如何されたんですか⁉︎
それに…少人数の騎士団も居るとは言え、その子供達は…」

「あゝこの子達はアヌビスでロウ君が保護した子達でね
私に少し考えがあってね?屋敷まで連れて行っているんだよ」

「あ…ロウ様が⁉︎あっ⁉︎」
ポロが慌てて振り向くと、真剣な目でロベルト達を見つめるチッキーがいた






「あの者達は、そのまま縛っておくのか?」
「いいのか?」

「うん、構わないと思う
まぁ本当に悪いのは3人の徴税官達で、他の兵達は命令で来ていると考えると兵は解放してもいいかもしれないんだけど
あの中に命令だけじゃなく、徴税官に心酔してて来ているのが居るかもしれないから
そんなのが混じっていたら無用の殺生をしなくちゃならないからね」

「「「「「なるほどな?」」」」」
「ちゃんと理由があるのだな?」
「ふむ。それよりも、まずは我等が食べ物をくらうがよい」

「うん、じゃあ早速いただきますね」
『うん、これは蕎麦粥か…アレは蕎麦焼きかな?あっちは蕎麦がきか?マンジュウにしてあるな?
アレは?蕎麦のパン?ん?あゝ蕎麦麩か⁉︎
しかし、やっぱり蕎麦料理って蕎麦単体で作るなら古今東西で似通ったモノになるんだな
前世でも世界中で似たような料理ばかりだったしな』
「うん、とっても美味しいよ。素朴な味で風味もいいね?
確かにソバ…いや、黒麦なら栄養素的にもこれだけ食べて生きていけるのも納得出来るなぁ」

「栄養素?なんだそれは?」

「え?あゝ、黒麦にはね?肉や魚を食べなくても身体を動かしてくれるチカラがあるって事だよ」

「ワフッワフッ」(さすがに詳しいね。蕎麦は前世で大好物だったもんね)

『ハハッ…3食が蕎麦だった日もあったし、蕎麦の簡易的なホームページも作ってたからね
前世で本来は居酒屋じゃなく、蕎麦屋をやりたかったぐらいだしなぁ
そんで、地元に帰ったら蕎麦屋ってのが無くて泣けたなぁ…
うどん・蕎麦の店はあったけど、専門店じゃないから蕎麦湯すら出なかったしな
地元で手打ち蕎麦の店を出したかったなぁ…』


「ん?オマエは黒麦の事を知っているのか?」
「河の向こうにもあるのか?」

「うん、まぁ知っている食べ物だったよ?
でも、河の向こうには無かったと思う…まぁ、俺が見付けられなかっただけかもしれないけど
でもね?この黒麦は、これからのウリシュクの皆んなに起こるかもしれない禍根を断てるかもしれないよ?」

「む?黒麦がか?」
「我等が普通に食べているものなのにか?」

「うん。そうだね、信じられないかもしれないけど試してみる価値はあると思う
その為には、この集落代表として大人のウリシュクが2人ぐらいと
黒麦を1樽ぐらい北辺境領領府に持っていく必要があるんだけど、どうかな?」

「ふむ…それは構わぬ」
「うむ、そのぐらいで後々の騒ぎが避けれるのならばな?」
「1樽分の黒麦ぐらい譲るは容易い事よ」

「そう?それなら話しは早いね
でも、ずっと思ってたんだけど、貴方達の集落ってヒトが少ないね?
ザッと見た感じじゃ20人ぐらいかな?
ウリシュクって元々が極々少数種なの?」

「うん?あゝ…我等は家族…一族単位で集落を作るからな」
「うむ。違うウリシュクの集落があれば、それは違うウリシュクの一族だ」

「あ⁉︎なるほどね!だからこその人数なんだね?
じゃあ、ウリシュク種としては結構いるのかな?
上手くいけば全ウリシュクが助かるかもしれないね?」

「「「「「ほう⁉︎」」」」」
「ならば早速用意して、領府とやらに向かおうではないか」
「そうだな、早い方がよかろう」
「あの者達はどうするのだ?殺さぬのだろう?」

「うん、殺さないよ?でも、利用させてはもらうけどね?
まぁ、あっちは俺に任せて?貴方達は用意をお願いね」

「うむ、わかった」
「よし、黒麦を1樽用意しろ」
「2人分の旅支度もだ!」




「さてと…今から2人ぐらいの縛を解くけど、暴れないでくれるとありがたいな?
変に暴れでもされたら殺してしまわなきゃならない
これは、脅しと受け取ってもらっても良いよ
もちろんクチだけじゃないから確実に実行する
そして、実行する以上は無残に、無慈悲に実行させてもらう
それは貴方達が先に敵対行為をしているから、俺たちに遠慮する必要が無いって事だよ
もう既に実感していると思うけど、貴方達は俺たちにはどうしても敵わない
貴方達全員でも俺たちに何かするのは不可能なんだよね
それを踏まえて、兵の2人ぐらいの縛を解く
理解出来たら頷いてくれるかな?」

兵達が一斉にコクコクと頷いた





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