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辺境領での日常

ナムナム“縦書き”南無南無

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ワイナール皇国暦286年、4の月



「目標って、ボウズがか?まだ10年も生きてないだろうに命を狙われてるってのか?ククッ…嘘くせー」

「本当なんだけどな?まぁどうでもいいけど冒険者の居住区まで連れてってよ」

「は?何でだよ?せっかく見付けた悪人が逃げちまうじゃないか」

「大丈夫、悪人は隠れて付いてくるよ
それに、お兄さんが見付けた訳じゃないでしょ
子供の手柄を横取りするのはカッコ悪いよ?」

「グッ……」

「ほら、行くよ」
ロウとワラシが冒険者の尻を押す

冒険者居住区まで歩きながら
「ところで、お兄さんは捜してたヤツを発見した訳だよね?どうするつもりだったの?」

「そりゃ決まってる、取っ捕まえて組合に連れて行くさ」

「どうやって?」

「は?どうやってって、そりゃ腕にモノ言わせてだろう」
ポンと腰の剣を叩く

「ふぅ…無理だね、返り討ちにあうよ」

「はぁ?なんでだ?相手が冒険者殺しだからか?」

「やっぱり分かってないんだね?相手は8人いるんだよ?それも【今は】だよ?もっと増えるかもしれないんだよ?」

「はぁ?8人だ?冗談はよせよ」

「それを冗談と思うから返り討ちにあうんだよ
それに、お兄さんじゃヤツら1人にも勝てないかもしれない
相手は冒険者を5人も苦も無く殺してんのに、何でそんなに簡単に考えてるか理解出来ないよ」

「え?そりゃ組合長が犬獣人の俺なら人間よか強いから大丈夫だろうって言ってたしよ…」

「え?自分の実力を他人評価任せって…よくそれで冒険者として生き残ってこれたね…それに敵も同じ獣人だったらどうするつもりだったのさ…」
ロウが呆気にとられる

「う……それは……」

「殺された彼らもそうだったけど、危なっかしいなぁ…
組合長辺りが、そういう風にしちゃったのか?
辺境みたいに魔獣が多い土地なのに何故だ?
ふぅ…辺境伯の力を削ぐ為の布石なんだろうなぁ
御祖父様も叔父さんも気付いてないんだろうな…」

「ん?そういや、アイツらが言ってたな?化け物の時に子供達がどうとか…
ひょっとして、ボウズ達の事か?」

「今ごろ気付いたの?」
ロウがヤレヤレと肩を竦める
「さっき言ったでしょ?僕らのとばっちりで殺されたって
ところで、殺された冒険者達が住んでたのってどこ?」

話をしながら冒険者居住区へ入っていた

「あゝ居住区に入ったからな、もう直ぐだ。アイツらはパーティーで家を1軒借りてたんだ。あ、ホラ見えたぞ」

「アレかぁ……よし、増えてない」

「ん?何が増えてないんだ?」

「刺客だよ、敵戦力の把握は大事な事でしょ?
ひょっとしたら連絡役なんかは隠れたままかもしれないけど実行役は8人で確定で良いかもしれない
ここまで、のんびり歩いてこれたのはお兄さんのお陰だね、ありがとう」

「何で礼を言われたか分からんのだが…」

「ん、お兄さんが居たからヤツらは手を出しづらくなってたんだよ
これ以上、人が増えるのか増えないのか見極めてんだろうね
こっちの戦力を向こうが見た目通りに勝手に評価してくれるのはありがたいけどどうかな?
お兄さん、次は冒険者が殺されてた場所まで案内してよ
たぶん、そこでヤツらは襲ってくるよ」

「なんでそんなことが判るんだ?」

「あーもう!少しは自分でも考えなよ、冒険者を5人も殺した場所だよ?襲うのに適した場所に決まってるじゃないか」

「あ………でもよ、襲われたらヤバイじゃないか」

「……もう、本当に……ここまでお膳立てして何も手を打ってない訳が無いとは思わないかなぁ……すっごい疲れるんだけど?精神的に……子供だからってナメてんだろうなぁ」

「ワフ!」(ドンマイ!)
「ロウ!ドンマイ?」

「ククッ…コマちゃん、ワラシありがとう
さぁお兄さん行くよ!」


10分ぐらい歩き昼間でも暗い雰囲気の裏路地にやってきた

「ここで5人が死んでたんだ」

「ここかぁ…」
まだ血の痕が残る路上を見てロウが手を合わせる
ワラシもロウの真似をして、意味がわからないながらも手を合わせる

「ボウズ、何してんだ?“いただきます”なんかして」

「え?あーそうか、“いただきます”は英雄が習慣として拡めたけどお悔やみは拡まってないのか
“いただきます”と変わらないよ、“いただきます”は糧になる生き物に感謝と弔いの気持ちで
死者にも生前お世話になった感謝と弔いの気持ちで手を合わせるんだよ
それよりも…来るよっ!」

ロウが冒険者を突き飛ばすと、冒険者の胴体があった所を投げナイフが飛んだ

「チッ!勘がいいこったな小僧」
背後うしろが見えてたとは思わねぇがなぁ?」
「たまたまか?」
「とっとと1匹減らそうと思ったんだがな」

ロウ達の背後から4人出て来る

「ヘマしてんじゃねぇよ」
「あんなデカイ的を外すかね?」
「アテにならねーなぁ」
「まぁいいさ、少し命拾いしただけだ」

ロウ達の前から4人出て来る
ロウ達は裏路地で挟まれる格好になった

「本当に8人いやがった…」

「なんかテンプレ展開だけど…
やっと出てきたね?待ち草臥くたびれちゃったよ
たった8人で僕らを如何にか出来るって思ってるの?
雑魚は何人集まっても雑魚なんだから応援呼んだ方がよくない?
それとも、ごめんなさい~って泣いて帰る?
人数集めて手早くしないと人が沢山来ちゃうよ~」

「はぁ?大層な物言いするじゃねぇかガキ!」
「なんでガキを殺すのに、これ以上要るんだよ」
「あゝ多いぐらいだな」
「そんなに田舎まで来れるかよ」

「ふ~ん、これで全員なんだぁ…やっぱりバカの集まりだったか」

「なんか、いちいちムカつくガキだな」
「サッサと殺っちまおうぜ…」
「あゝイライラしてきた」
「吠え面かくなよ」

「ふふふ…どっちがかなぁ?」

「お…おい、ボウズ!逃げないのか!?」

「逃げる必要なんか無いよ、もうアイツらは詰んでるからね」
言いながらロウが周りを見渡して指をパチンと鳴らす

「はぁ?どう言う……え?」
冒険者の目には刺客達の背後の空気がユラリと揺れた様に見えた

「あ?なにをグダグダ言ってん……」“ドサッ”
「怪我し……」“バタッ”
「ま、待て!う……」“ドスッ”
「死ね……」“ドスン”
「テメーら、お……」“バタン”
「おい!?なにが……」“ゴトッ”
「目にモノみ……」“ガタン”
「デカブツから……」“ゴツン”

「と、こんな感じ」

「う……ウソだろ……何が起こったんだ……」

「皆んな、ご苦労様。でも、まだやる事があるよ
先ずは付与を消すから全員背中向けて」
と全員の付与を消していくと、冒険者には忽然と13人もの人が現れた様に見えた

「…………」

「言葉も無い、か…そりゃそうだわな
さ、パウルの者達は、こいつらを載せて運ぶ荷馬車を大至急持ってきて」

 「「「「「はい」」」」」

「リズ、ミア、フワック達とポロは身体検査で全ての武器や持ち物を回収」

「「「「「「「「はい」」」」」」」」

「回収したら、口の中を調べてみて
ひょっとしたら自害用の毒でも仕込んであるかもしれない
さっきも言ったけど、死に逃げはさせない様に」

「「「「「「「「はい」」」」」」」」

「ロウ様、ありましたよ。毒が仕込んであるか解りませんが変な奥歯があります」

「本当にあったんだ…ポロ、取れる?」

「ええ大丈夫です、爪でえぐり取ります」

「頼むね」

「お、おいおいボウズ…いきなり現れたこいつらは何なんだ?」

「貴方は、もう黙っていなさい!」
「まったくです、ロウ様との会話は漏れ聞こえてました。同じ獣人として恥ずかしい限りです」
「まったくだ、これが同じ獣人かと思うと泣けてくる。ロウ様と対等に話がしたかったら、もう少し頭を使え!だらしない大人だ」
リズ、ミア、ポロの亜人組がおかんむりだ

「ぐっ……なんだってんだよ……」

「判っていないのですか?ロウ様と出会わなければ貴方は殺されていたんですよ?」

「しかし、ボウズもアンタらが居たから安心して動いてたんだろう?」

「そんな訳があるもんかよ、ロウ様は刺客を殺さない為に俺たちを陰控えさせてたんだよ」
「ロウ様が単独だったら刺客達を殺すしかないからです」
「貴方が今無事なのは、殺された冒険者達の仲間だからです。ロウ様の好意で御一緒に行動させてもらえた事に感謝しなさい!」

「リズ、ミア、ポロ、もうその辺にしといて
ほら、荷馬車がきた」

「「「はい」」」

パウルの荷馬車が2台やってきて、荷台に4人づつ積み込み布を被せ屋敷へ帰ろうとすると

「何処行くんだ?組合はアッチだぞ?」

「?辺境伯邸だよ?組合長も捕らえてるし」

「は?いったい何を…」

「貴方の仕事は終わりと言う事です」
「あゝ、もう戻って冒険者として活動しな」
「これ以上首を突っ込むと、私が同じ獣人としてキッチリ〆て差し上げますよ」
皆んなが荷馬車の後を歩く

「…………」
呆然とする犬獣人の肩を、フワック達が無言でポンポンと叩き荷馬車の後を追っていった






「な、なにが!?」

「貴様に聞きたい事があってのぅ」
「何故私がこんな目に遭わなければならないのですか!?」
「ふむ、それは君が彼を怒らせたから、かな?」
「彼?誰の事を言っているのですか!?ここは何処なのですか!?」
「うむ、良い質問だな。ここは屋敷の地下にある魔法の研究室だな」
「彼とはロウ君だね。ここはね、辺境伯家族しか入れないんだよ。元々は避難所だったらしいんだけどね?お陰で龍の襲撃にも耐えられる造りになっているとの事だよ
我が家に関係ない者が入ったのは初めてだろうね、おめでとう」
「それだけ頑丈であるから魔法を使い放題でもあるな」
「その様な場所に何故私が連れ込まれているのですか!?それにロウ様が?何故ロウ様が怒ったら、いつの間にかこんな場所に…」
「龍の逆鱗に触れるとはこういう事さ」
「だから言うたであろう?聞きたい事があると、大人しく質問に答えれば【楽に】地下室を出ていけるぞ?」
「わ、私に何かあれば、組合が…」
「大丈夫だ、組合長の後任は考えておる。貴様は先ほど気を失った時点で勇退だな」
「魔法耐性が弱い者が冒険者組合長と言う要職にあるのも困るからね」
「私が…気を失っていた……」
「あゝ、ロウ君の怒気にあてられてね」
「説明はこんなもので良いだろう、ロウが刺客を捕まえて戻る前に済ませてしまおうか」
「刺客を……」
組合長が青褪めた






「ロウ様、お帰りなさいませ!“旦那様が裏から地下に入る様にと”」
門衛が耳打ちしてきた

「分かった、ありがとう。案内してくれる?」

「はっ!」

「あ、そうだ、フワック達が荷馬車の馭者をしてパウルの者達は戻って良いよ
ありがとう、助かった。後で御礼をするから」

「「「「「はい!ありがとうございます」」」」」

屋敷裏手の蔵のような建物が並ぶ場所にくると、その中の1棟の扉を門衛が開ける
建物内には地下へ続くスロープしかなかったが魔導照明を灯し躊躇無く地下へ降りていく
地下へ降りると広間があり奥へ続く鉄扉てっぴがあった

「なるほどね、ここまで荷車とかで入れる様にして、地下に物資を直接搬入出来るようにしてあるんだね」

「はい、邸内を通すと不都合なモノもありますから」
と門衛が答えながら鉄扉に付いたドアノッカーを“ゴワンゴワン”と鳴らす
暫くすると、鉄扉が開きロシナンテとロベルトが出てきた

「おかえりロウ君」
「ロウ、おかえり。ん?ひいふう…8人も居ったのか」

「えぇ、思ってたより少なかったですね」

「…?フフッ、ロウ君はブレないなぁ」
「ククク…もう驚かんぞ?よし、その8人を奥へ運ぶぞ
フワック達とポロで1人づつ抱えろ、儂とロベルトで1人づつで行く」
「大旦那様!?いけません」
「良いのだよリズ、儂らもロウの役に立たなくてはな」
「ふふふ…そうだよリズ、本来なら辺境伯たる私が全て片付けなくてはならない事なんだからね」
「…はい、ではお願いいたします」

「御祖父様、組合長ボンクラはどうでしたか?何か判明しましたか?」

「うむ、あらかた判ったが…予想通りであり、それ以上でも以下でも無かったな」

「なるほど…と言う事は……皇家からの指示は受けているけど、詳細は知らないし、この刺客達の事も詳しくは教えられずに少し便宜を図れ程度の指示を受けていた。ぐらいが判明した、ですかね?」

「…………はぁ…なんとも……」
「…まだ、驚かなければならなかったか……悔しいのう……」

「あれ?正解でしたか?ヘヘッ♪」

「ヘヘッ♪じゃないわい!最後に本家で会った2年前から、何がどうなってそんな風に育ったのだ!?その頃から少しは片鱗があったが、ここまで一足飛びに成長すると人が入れ替わったと言われても納得してしまいそうだぞ」

『まぁ、ある意味正解なんだけどな。ヘヘッ
3ヶ月前に新しく生まれ変わってるし』
「普通ですよ?周りに恵まれているだけです。ね、コマちゃん、ワラシ」

「わふ」
「?うん!」

「ククク…コマちゃんは兎も角、ワラシは釣られて返事しただけだろう?ロウ君」


地下室の1部屋に入ると、中には椅子に両手足を縛り付けられた組合長が項垂れている
よく見ると目は虚ろでヨダレを垂らしている、もう壊れているのだろう

精神侵略魔法spirit intrusion magicですか?」

「そうだね、少し強くかけたから壊れちゃったね」
「うむ、儂らも滅多に使わぬ…じゃないな、研究ばかりしてきた魔法だからな、加減が解らんかったわ」

「ふふっ…確信犯でしょう御祖父様?」

「ククク…さてな?」
「ハハハ…さて、刺客を起こそうか?」

ロベルトが魔法杖staffを取り出すと刺客達の頭を次々と殴っていく

「あ、アタッ!?」「…っつ」「アテッ」「あ…」「アイタ!」「イッテ…」「ガッ!」「アタタ…」

「やあ、お目覚めみたいだね?叔父さんのstaffの使い方は間違ってる気がするけど、気にしないでいこう
色々と聞かせてもらいたいな?」

「クッ…そんな簡単に話すはずないだろうが」
「ククク…だな」
「おい、俺はお先に逝…グッ………あれ?」

「残念だけど、毒?は取り除いたよ
口の中に結構な違和感があるはずなんだけど、緊張してると気付かないもんなんだね?
そういうのは今後の為になりそうだから有難いな、人体実験は初めてだしね
さぁ、時間はたっぷりあるから楽しんでいこう
あ、何も言いたく無かったら言わなくて良いよ?
僕も色々な方法を試したいからね」

ロウが酷薄な笑みを浮かべた



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