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【番外編】子供がほしい
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すっかり王宮生活にも慣れてきて、俺は1人でも王宮の中をウロウロする様になった。
今日の工房での作業は午前中で済んだし、フリーレンから『午後のお茶を一緒にしましょう』と誘いがあったので、それまで、庭園をぶらぶら散歩することにした。
かなり離れたところから護衛が付いて来てはいるようだが、1人の時間を邪魔されるほどではない。
ふと植え込みの向こうにヤンとフリーレンが立ち話をしているのが見えた。
声をかけようか迷ったが、大事な話かもしれないので、終わってから声をかけようと思って、近くの芝に腰を下ろして待つことにした。
ふとフリーレンを見遣ると、フリーレンの表情が少し物憂げに曇っているように感じた。
その表情は、つい先日見たものと同じで…俺の心はざわつき始めた。
フリーレンは何に悩んでいるのか…心当たりがないでもないが、確信がないというか…確信するのが怖くて聞けずにいた…
気づけば俺は、植え込みの近くまでそろりそろりと近づき聞き耳を立てていた…
「…現状に不満があるわけではないのだが…やはり、兄上夫婦が子どもを囲んで幸せそうにしているのを見ていると、温かい家庭への憧れが沸々と湧き上がってしまってね…私は虐げられたりこそしなかったが、生まれた時から魔力タンクとしての役割を期待されていたし、貴族どもからの嫌がらせもあったし、普通の家庭と同じというわけには行かなかった…奴隷になってからは言うに及ばずだ…私も兄上のような温かい家庭をどうしても諦めきれないのだ…」
「しかし陛下…今のお立場では…その…」
「ああ…わかっている。だから、私は近々国王の立場を降りようと思っているんだよ…もう一月もすれば結界石の魔力も満ちるだろう…そうすれば、魔力の弱い国王が即位しようとも結界石は200年は保つだろうし…兄上に王位を譲ろうと思う。もともと、執務は兄上と父上が行ってきたのだし、魔力さえ満ちれば、私がここにいる必要もないだろう…」
目の前が真っ暗になるのを感じた。
やはり、先日王太子宮を訪ねた時に見たフリーレンの物憂げな表情は気のせいではなかったのだ…
それは俺が最も心配していた事だった…男の俺ではフリーレンの子を産んでやることはできない。
フリーレンはちゃんと嫁をもらって家庭を築くべきじゃないかと…
愛妾を娶ることは可能だが、それでも俺が王妃でいる限り、普通の温かい家庭とは言えないだろう…
それに国王の愛妾の子と王太子の嫡男の王位継承争いなんて面倒なことになりかねない。
フリーレンは美しいし、優秀だ。少し引き摺っていた足も王宮の優秀な治癒魔術のおかげでほとんどわからないほどになっている。
たとえ身分を隠し平民のような暮らしをしようと、フリーレン自身を求める女性は星の数ほどいるだろう…
フリーレンの幸せを思うなら俺から離れてやるべきなのだろうが、この国では国王と王妃が離縁することはできない…
だからフリーレンは国王から降りようとしているのだ…
俺と別れるために……
それからの事はよく憶えていないが、気づけば工房に戻って来ていた。
遣いの者がフリーレンとの茶会にと呼びに来たが、作業の手が離せないからと断りを告げた。
その夜は部屋に戻らず工房で一夜を明かした。
食事も工房に運んでもらい、できる限りフリーレンに会わないように過ごした。
フリーレンが執務で留守にしているタイミングを狙って部屋に戻り、風呂に入り、着替えを済ませて工房に篭る生活をした。
何度かフリーレンが工房へ押しかけてきたが、フリーレンにどう接したらいいか分からず、居留守を使ったり、気づかないふりをした。
フリーレンが話をしたいと何度も訪ねたり、扉に張り付くようになったので、どうしても仕上げたい物があるから集中させてほしい、心配いらないと扉越しに伝えた。
そうして半月ほど経った。
フリーレンが海外からの要人の対応で外せないタイミングを見計らって、俺は部屋に戻った。
フリーレンのいないうちに、俺の荷物を全て運び出すつもりだった…
しかし、そっと開けた部屋の中には、涙目のフリーレンがいた。
「マルコさん…会いたかった…」
「フ…フリーレン…なんでここに?公務はどうした?」
「父上と兄上が対応しています。マルコさんより大切な公務なんてありませんよ。」
隣国の王族が来ているというのに国王が顔を出さないなんて、俺でもまずいとわかる。フリーレンがわからないはずがないが、フリーレンは意に介さない様子で続けた。
「今までも私がいないタイミングを見計らって部屋に戻っていたでしょう…やはり、私を避けていたのですね。理由を聞いても?」
フリーレンの真っ直ぐな視線に耐えられず、俺は目を逸らしてしまった。
まだ別れ話をする覚悟はできていなかったが、こうなっては下手な言い訳をしても論破されるだけだろう…
フリーレンは俺よりずっと賢い…
俺は観念してあの日聞いてしまったことを話した。
「それで、フリーレンが子どもと温かい家庭を望んでいることを知って…でも俺はお前の子を産んでやる事はできないから…離れてやることしかできないと思ったんだ…でも、なかなか決心が付かなくて…合わせる顔がなかったんだ…」
「……っっ……マルコさんは、また私から離れようとしているのですか…」
フリーレンの顔がみるみる強張っていく。
あまりの物言いにだんだん腹が立って来て、思わず大きな声が出た。
「俺だってお前と離れたいわけじゃない!だけど、お前の幸せには俺は邪魔だろう!温かい家庭がほしいって、お前が望んだんじゃないか!」
フリーレンは俺の言葉に一瞬目を見開き、その後目を伏せて「はぁ~」とため息を付いた。
「マルコさんに見せたい物があります…一緒に来てください」
フリーレンは、そういうと俺の手を取った。
久々のフリーレンの温もりに、手を繋いだだけだというのに俺は泣きそうになった…
次の瞬間にはぐらりと視界が歪み、見知らぬ農村に立っていた。
てっきり謁見の間に移動して準備された離縁証でも見せられるのかと思っていたのだが…
「フリーレン、俺を連れて瞬間移動したのか?」
フリーレンは自分より大きなものは移動できないんじゃなかったか…
「お気付きですか?私は国に戻ってから騎士達と一緒に身体を鍛えていたんですよ。今じゃマルコさんより大きいんですよ。」
もともと強い男だったが、そういえば腕や肩周りも大きくなっている気がする。
国に戻って栄養事情が良くなったこともあるのだろう…
以前より少しがっしりした胸板をうっとりと見つめ、ハッと我に返った。いかんいかん…
「ここは?」
目の前にあるのは、俺の実家より一回り大きいくらいの一軒家だった。しかし作りはずっとしっかりしていて、材質の良さが感じられる。
「国王を退位した後に住むために準備中の家です。」
もう退位した後に住む場所を手配しているのか…用意の良いことだ…
ここでフリーレンは嫁をもらい、温かい家庭を築こうとしているのか…
およそ、王族が住むような邸ではなく、こぢんまりとしていて、それが逆に誰かに用意された物でなくフリーレンのこだわりが表れているようで切なくなった。
大きな邸なら『親戚のおじさん』が1人くらい居候していても問題ないだろうが、この家では距離感が近すぎる。
いつか別れる覚悟はしていたとはいえ、実際に目の当たりにするのはきついものがある。フリーレンは俺が決心を鈍らせないようにと現実を突きつけようとしているのだろうか…
俺はフリーレンに手を引かれ、敷地の中へと進んだ。
小さな庭があり、そこには花壇と家庭菜園ができる程度の畑があった。
初めて出会った日にフリーレンに作ってやった卵がゆを思い出す。
あの時は、久々に自分の作ったものを人が美味そうに食べている姿に心がじんわりと温かくなったな…
まさか互いに肌を重ね、婚姻を交わすほど愛し合うとは思いもしなかった…
そうだ…あの頃はフリーレンが怪我が治れば旅立つと自分に言い聞かせていたんだったな…
さらにフリーレンは玄関の鍵を開けて中へと進む。
廊下の先にはリビングルームとダイニングキッチンがあった。
職業病でつい、調度品に目が行ってしまう。
そこで、俺はハッとした。
それらの家具は全て見覚えがある…いや、見間違えるはずがない。
テーブル、椅子、食器棚に至るまで、俺が作ったものだ…
ずいぶん昔に作った懐かしい物もある。隣国から集めたのだろうか…
今では王妃印の最高級品と言われているが、それでも元彼の作った家具で固めた家に新しい嫁を迎えるのは無神経ではないだろうか…子どもを選んでも尚、俺を偲んでくれるのか…いや、家具を見て俺の事を思い出すから心配するなということか…それとも、家具を見ても何とも思わないくらいもう心が離れているということなのか…
真意を掴めずフリーレンの顔を見上げるが、フリーレンは「これでわかったか」と言わんばかりのドヤ顔だ…いや、わからんって…
そのまま手を引いて隣の部屋に連れて行かれた。
そこは子ども部屋だった。そう、明らかに子供が使う部屋だった。小さな椅子、小さな机、小さなベッド…いやいや、気が早すぎないか?普通はまずベビーベッドだろう…いきなり赤ん坊は座ったりしないぞ!
そこで俺はハッとした。
まさか、俺の知らないところで既に通じていた女性がいたのか?もう子供がいるのか?それとも子連れの女性か?
「孤児院から子どもを引き取ろうと思っているのです。」
戸惑っている俺に、フリーレンがようやく説明を始めた。
「私は自分の血筋を残すことに興味はありません。寧ろ残せば、今後王位継承争いの火種を生むことになります。
そんな事をせずとも世の中には、愛されるべき存在なのに愛されずに生まれ育った子がたくさんいます。
私はマルコさんと2人の子どもとしてそういう子を引き取って、愛して育てたい。温かいどこにでもある家庭が私の憧れなのです。
しかし国王であるうちは、その子を王位継承問題に巻き込んでしまうことになる。血が繋がっていなくとも、いや、繋がっていないからこそ、嫌がらせをする貴族なども出てくるでしょう…
私が国王を退位するのはそのためです。貴方と離縁するためじゃない!」
「……………っっ」
国王を退位するのは俺と離縁するためじゃなかったのか…
子どもは養子を迎えるつもりだったのか…
俺と2人で一緒に子供を育てるつもりだったのか…
ここは、これから俺たちが家族として住む場所…
俺は、ぐるりと家の中を見渡した。
俺が作った家具達…そして、どことなく実家の造りに似ている間取り…
窓の外にチラッと見えた景色に、思わず「あ!」と声を上げてしまった。
そこには、木製シャッターの付いた小さな小屋があった。
実家の裏にあった工房がそのまま移築されていたのだ。
「ふふ…子ども部屋から工房の様子が見えるようになってるんですよ…」
「フリーレン…すまん…こんなに俺の事を思ってくれていたのに…俺は…俺は…」
俺は膝からその場に崩れてしまった。涙が止まらない…
こんなに愛してくれているフリーレンの気持ちを俺は疑ってしまったんだ…そして、また離れようとした…
フリーレンはその場に腰を下ろすとそんな俺を丸ごとギュッと抱きしめてくれた。
「貴方を一生手放さないと言ったでしょう?」
「………うん…」
俺は鼻を啜りながら頷くことしかできなかった。
「国の都合で王妃にしてしまって、マルコさんの穏やかな生活を奪ってしまった事、他国に連れ去ってしまった事、本当は心苦しく思っていたのです。本来ならあの村で2人で暮らしていくつもりだったのに私の事情に巻き込んでしまった…」
「……………」
「でも、悪いことばかりじゃありませんでしたよ…
隣国ロージア王国は、かなり魔物被害が大きかったのですが、結界のお陰でラクシミール国内は魔物の被害が出ませんでした。だから国境近くのマルコさんの村もかなり被害が出ましたが、我が国が彼らを難民として受け入れた事で死者をほとんど出さずに済んだのです。アンネ婆さん達も無事です。
ここは、彼らが避難し新たな生活ができるように開拓した村なのです。
ラクシミール国内ではありますが、以前と同じ温かい人たちに囲まれた村で、私と本当の家族になってほしいと思ったのです…」
「ねぇ…マルコさん…?」
フリーレンが俺の顔を覗き込む。
気になっていた村の人たちの無事を知ってホッとすると同時に、俺の大切な人たちを無条件に受け入れ、支える手配をしてくれたフリーレンへの感謝の思いが込み上げてくる。
俺は言葉が出す、涙でぐちゃぐちゃの顔のまま、フリーレンの頬に口づけた。その口を追いかけるようにして、フリーレンも俺の唇にそっと唇を合わせてくる…俺たちは何度も角度を変えながら唇を啄み合い、次第に深い口づけになっていった。
フリーレンが涙でぐちゃぐちゃの俺を抱き抱えて隣の部屋へと移動した…そこは2人のための寝室だった。
こぢんまりとした家に似つかわしくない大きなベッドが部屋の中央に鎮座している。
フリーレンは、そこに俺を下ろすと、宝物でも扱うように優しい手付きで俺の服のボタンを外していく。
はらりと、はだけた胸元にフリーレンは幾つも跡を残していった…
「ああ…マルコさん…貴方に2週間も触れられなくて僕の中は、マルコさん不足で空っぽです…」
「そ、そうか…そりゃ済まないことをしたな…」
うぅ…素直に俺もだと言えない自分が情けない…
「やはり、1年くらいは子供を引き取らずに2人の時間を満喫することにします…」
「そうか…そうだな…うん…まぁ…急がなくてもな…」
子どもを引き取れば、今のような甘い時間は減ってしまうからな…俺もそれは気になるところだ…
「今日はたっぷり甘えさせてくださいね…」
「はは…そうだな…こんなでっかい子供も悪くないな」
フリーレンが俺の乳首にチュゥっと吸い付いたので、俺は奴の頭をぐしゃぐしゃに撫でてやった。
「マルコさんのミルク、飲みたいな…」
フリーレンは俺の胸に頬を乗せながら甘えて来た。
なんだか、今日のフリーレンは子供っぽい。
子供の頃に満たされなかった想いを埋めたいのかもしれない。
俺は、貧乏だったが温かい家庭に育ったので、フリーレンの辛い子供時代は想像することしかできないが、今夜くらいはそんなフリーレンを甘やかしてやりたい。
「よしよし…いくらでもお飲み…」
うっかりそう言ってしまった…フリーレンは嬉しそうな顔をして俺のベルトをいそいそと外し始めた。
ミルクってそれか…「いくらでも」とか言っちまったが大丈夫かなぁ…
ズボンが引き下ろされると、わずかに芯を持ち始めた萎えた陰茎がポロんとまろび出た。
ズボンが半分ずり下げられただけの間抜けな格好だが、フリーレンは嬉しそうにそれを口に含み、舌で器用に皮を捲りながらカリを擦る。
俺の陰茎はあっという間にフリーレンの口の中で育っていく。
そこで、ハタと気づいたが、俺はフリーレンがいないうちに風呂に入るつもりでいたから、風呂に入ってない。
「フリーレン、そこ汚いからちょっと待て!」
「今さら何言ってるんですか…ちゃんと綺麗にしてあげますよ…」
フリーレンは言葉通り、汚れを舐めとるように丁寧に俺のチンコを舐めしゃぶった。舌で浄化魔法をかけているようで、どんどん俺のチンコが綺麗になっていく。そういえば、コイツはチート野郎だった…
じんわりと伝わる魔力が気持ち良すぎて俺はあっという間に上り詰めて射精してしまった。
俺の精液を口で受け止めたフリーレンは美味しそうに飲み下した。
「マルコさんのミルクならいくらでも飲めます」
フリーレンはにっこりと笑って怖いことを言い放った。
その後、俺はズボンが足に引っかかったまま、フリーレンに足を持ち上げられ、赤ん坊がおしめを変える時の様なポーズで後孔をほぐされた。
もうどちらが赤ん坊役か分からなくなってきた…
そのまま十分開かない足をぐっと抑えられてまんぐり返しの体制で、フリーレンの剛直が入ってきた。
真上から突き入れる様にずぷっと亀頭が入ったかと思うと、前立腺のあたりをゴリゴリと擦り上げる。
「あ~♡フリーレン…そこ…つよ…すぎるから…」
おれは強すぎる刺激に悶えるしかできない。
「マルコさんのアヘ顔、最高に可愛いです…すみません、マルコさんタンクが空っぽなんです。優しくできる自信がないので先に謝っておきます…」
そう言うと、一気に奥まで剛直を突き入れてきた。
「ああーーーっ♡」
ズンズンと奥の奥の入っちゃいけなそうなところまでフリーレンにこじ開けられ突き上げられて、俺は悲鳴を上げることしかできない。
もともとおれが悪いので、今夜はとことんフリーレンの望みを叶えるしかないな…
俺は観念してフリーレンにキスをしてやった。
その晩、完全に抱き潰された俺はそのまま、新居のベッドで気を失い、知らないうちに転移魔法で王宮のベッドに戻っていた…
これから、どこにでもいる普通の家庭を作ったとしても、どこにでもある様な些細な事で悩んだり、些細な事で喧嘩したりするんだろう…
それでも、フリーレンは決して俺を手放さないと言ってくれた。だから、俺もどんな事があっても、フリーレンと2人で生きていく未来を選ぶと誓おう…
それが、世間の最良と違っても、きっと俺たちの最良なのだ…
今日の工房での作業は午前中で済んだし、フリーレンから『午後のお茶を一緒にしましょう』と誘いがあったので、それまで、庭園をぶらぶら散歩することにした。
かなり離れたところから護衛が付いて来てはいるようだが、1人の時間を邪魔されるほどではない。
ふと植え込みの向こうにヤンとフリーレンが立ち話をしているのが見えた。
声をかけようか迷ったが、大事な話かもしれないので、終わってから声をかけようと思って、近くの芝に腰を下ろして待つことにした。
ふとフリーレンを見遣ると、フリーレンの表情が少し物憂げに曇っているように感じた。
その表情は、つい先日見たものと同じで…俺の心はざわつき始めた。
フリーレンは何に悩んでいるのか…心当たりがないでもないが、確信がないというか…確信するのが怖くて聞けずにいた…
気づけば俺は、植え込みの近くまでそろりそろりと近づき聞き耳を立てていた…
「…現状に不満があるわけではないのだが…やはり、兄上夫婦が子どもを囲んで幸せそうにしているのを見ていると、温かい家庭への憧れが沸々と湧き上がってしまってね…私は虐げられたりこそしなかったが、生まれた時から魔力タンクとしての役割を期待されていたし、貴族どもからの嫌がらせもあったし、普通の家庭と同じというわけには行かなかった…奴隷になってからは言うに及ばずだ…私も兄上のような温かい家庭をどうしても諦めきれないのだ…」
「しかし陛下…今のお立場では…その…」
「ああ…わかっている。だから、私は近々国王の立場を降りようと思っているんだよ…もう一月もすれば結界石の魔力も満ちるだろう…そうすれば、魔力の弱い国王が即位しようとも結界石は200年は保つだろうし…兄上に王位を譲ろうと思う。もともと、執務は兄上と父上が行ってきたのだし、魔力さえ満ちれば、私がここにいる必要もないだろう…」
目の前が真っ暗になるのを感じた。
やはり、先日王太子宮を訪ねた時に見たフリーレンの物憂げな表情は気のせいではなかったのだ…
それは俺が最も心配していた事だった…男の俺ではフリーレンの子を産んでやることはできない。
フリーレンはちゃんと嫁をもらって家庭を築くべきじゃないかと…
愛妾を娶ることは可能だが、それでも俺が王妃でいる限り、普通の温かい家庭とは言えないだろう…
それに国王の愛妾の子と王太子の嫡男の王位継承争いなんて面倒なことになりかねない。
フリーレンは美しいし、優秀だ。少し引き摺っていた足も王宮の優秀な治癒魔術のおかげでほとんどわからないほどになっている。
たとえ身分を隠し平民のような暮らしをしようと、フリーレン自身を求める女性は星の数ほどいるだろう…
フリーレンの幸せを思うなら俺から離れてやるべきなのだろうが、この国では国王と王妃が離縁することはできない…
だからフリーレンは国王から降りようとしているのだ…
俺と別れるために……
それからの事はよく憶えていないが、気づけば工房に戻って来ていた。
遣いの者がフリーレンとの茶会にと呼びに来たが、作業の手が離せないからと断りを告げた。
その夜は部屋に戻らず工房で一夜を明かした。
食事も工房に運んでもらい、できる限りフリーレンに会わないように過ごした。
フリーレンが執務で留守にしているタイミングを狙って部屋に戻り、風呂に入り、着替えを済ませて工房に篭る生活をした。
何度かフリーレンが工房へ押しかけてきたが、フリーレンにどう接したらいいか分からず、居留守を使ったり、気づかないふりをした。
フリーレンが話をしたいと何度も訪ねたり、扉に張り付くようになったので、どうしても仕上げたい物があるから集中させてほしい、心配いらないと扉越しに伝えた。
そうして半月ほど経った。
フリーレンが海外からの要人の対応で外せないタイミングを見計らって、俺は部屋に戻った。
フリーレンのいないうちに、俺の荷物を全て運び出すつもりだった…
しかし、そっと開けた部屋の中には、涙目のフリーレンがいた。
「マルコさん…会いたかった…」
「フ…フリーレン…なんでここに?公務はどうした?」
「父上と兄上が対応しています。マルコさんより大切な公務なんてありませんよ。」
隣国の王族が来ているというのに国王が顔を出さないなんて、俺でもまずいとわかる。フリーレンがわからないはずがないが、フリーレンは意に介さない様子で続けた。
「今までも私がいないタイミングを見計らって部屋に戻っていたでしょう…やはり、私を避けていたのですね。理由を聞いても?」
フリーレンの真っ直ぐな視線に耐えられず、俺は目を逸らしてしまった。
まだ別れ話をする覚悟はできていなかったが、こうなっては下手な言い訳をしても論破されるだけだろう…
フリーレンは俺よりずっと賢い…
俺は観念してあの日聞いてしまったことを話した。
「それで、フリーレンが子どもと温かい家庭を望んでいることを知って…でも俺はお前の子を産んでやる事はできないから…離れてやることしかできないと思ったんだ…でも、なかなか決心が付かなくて…合わせる顔がなかったんだ…」
「……っっ……マルコさんは、また私から離れようとしているのですか…」
フリーレンの顔がみるみる強張っていく。
あまりの物言いにだんだん腹が立って来て、思わず大きな声が出た。
「俺だってお前と離れたいわけじゃない!だけど、お前の幸せには俺は邪魔だろう!温かい家庭がほしいって、お前が望んだんじゃないか!」
フリーレンは俺の言葉に一瞬目を見開き、その後目を伏せて「はぁ~」とため息を付いた。
「マルコさんに見せたい物があります…一緒に来てください」
フリーレンは、そういうと俺の手を取った。
久々のフリーレンの温もりに、手を繋いだだけだというのに俺は泣きそうになった…
次の瞬間にはぐらりと視界が歪み、見知らぬ農村に立っていた。
てっきり謁見の間に移動して準備された離縁証でも見せられるのかと思っていたのだが…
「フリーレン、俺を連れて瞬間移動したのか?」
フリーレンは自分より大きなものは移動できないんじゃなかったか…
「お気付きですか?私は国に戻ってから騎士達と一緒に身体を鍛えていたんですよ。今じゃマルコさんより大きいんですよ。」
もともと強い男だったが、そういえば腕や肩周りも大きくなっている気がする。
国に戻って栄養事情が良くなったこともあるのだろう…
以前より少しがっしりした胸板をうっとりと見つめ、ハッと我に返った。いかんいかん…
「ここは?」
目の前にあるのは、俺の実家より一回り大きいくらいの一軒家だった。しかし作りはずっとしっかりしていて、材質の良さが感じられる。
「国王を退位した後に住むために準備中の家です。」
もう退位した後に住む場所を手配しているのか…用意の良いことだ…
ここでフリーレンは嫁をもらい、温かい家庭を築こうとしているのか…
およそ、王族が住むような邸ではなく、こぢんまりとしていて、それが逆に誰かに用意された物でなくフリーレンのこだわりが表れているようで切なくなった。
大きな邸なら『親戚のおじさん』が1人くらい居候していても問題ないだろうが、この家では距離感が近すぎる。
いつか別れる覚悟はしていたとはいえ、実際に目の当たりにするのはきついものがある。フリーレンは俺が決心を鈍らせないようにと現実を突きつけようとしているのだろうか…
俺はフリーレンに手を引かれ、敷地の中へと進んだ。
小さな庭があり、そこには花壇と家庭菜園ができる程度の畑があった。
初めて出会った日にフリーレンに作ってやった卵がゆを思い出す。
あの時は、久々に自分の作ったものを人が美味そうに食べている姿に心がじんわりと温かくなったな…
まさか互いに肌を重ね、婚姻を交わすほど愛し合うとは思いもしなかった…
そうだ…あの頃はフリーレンが怪我が治れば旅立つと自分に言い聞かせていたんだったな…
さらにフリーレンは玄関の鍵を開けて中へと進む。
廊下の先にはリビングルームとダイニングキッチンがあった。
職業病でつい、調度品に目が行ってしまう。
そこで、俺はハッとした。
それらの家具は全て見覚えがある…いや、見間違えるはずがない。
テーブル、椅子、食器棚に至るまで、俺が作ったものだ…
ずいぶん昔に作った懐かしい物もある。隣国から集めたのだろうか…
今では王妃印の最高級品と言われているが、それでも元彼の作った家具で固めた家に新しい嫁を迎えるのは無神経ではないだろうか…子どもを選んでも尚、俺を偲んでくれるのか…いや、家具を見て俺の事を思い出すから心配するなということか…それとも、家具を見ても何とも思わないくらいもう心が離れているということなのか…
真意を掴めずフリーレンの顔を見上げるが、フリーレンは「これでわかったか」と言わんばかりのドヤ顔だ…いや、わからんって…
そのまま手を引いて隣の部屋に連れて行かれた。
そこは子ども部屋だった。そう、明らかに子供が使う部屋だった。小さな椅子、小さな机、小さなベッド…いやいや、気が早すぎないか?普通はまずベビーベッドだろう…いきなり赤ん坊は座ったりしないぞ!
そこで俺はハッとした。
まさか、俺の知らないところで既に通じていた女性がいたのか?もう子供がいるのか?それとも子連れの女性か?
「孤児院から子どもを引き取ろうと思っているのです。」
戸惑っている俺に、フリーレンがようやく説明を始めた。
「私は自分の血筋を残すことに興味はありません。寧ろ残せば、今後王位継承争いの火種を生むことになります。
そんな事をせずとも世の中には、愛されるべき存在なのに愛されずに生まれ育った子がたくさんいます。
私はマルコさんと2人の子どもとしてそういう子を引き取って、愛して育てたい。温かいどこにでもある家庭が私の憧れなのです。
しかし国王であるうちは、その子を王位継承問題に巻き込んでしまうことになる。血が繋がっていなくとも、いや、繋がっていないからこそ、嫌がらせをする貴族なども出てくるでしょう…
私が国王を退位するのはそのためです。貴方と離縁するためじゃない!」
「……………っっ」
国王を退位するのは俺と離縁するためじゃなかったのか…
子どもは養子を迎えるつもりだったのか…
俺と2人で一緒に子供を育てるつもりだったのか…
ここは、これから俺たちが家族として住む場所…
俺は、ぐるりと家の中を見渡した。
俺が作った家具達…そして、どことなく実家の造りに似ている間取り…
窓の外にチラッと見えた景色に、思わず「あ!」と声を上げてしまった。
そこには、木製シャッターの付いた小さな小屋があった。
実家の裏にあった工房がそのまま移築されていたのだ。
「ふふ…子ども部屋から工房の様子が見えるようになってるんですよ…」
「フリーレン…すまん…こんなに俺の事を思ってくれていたのに…俺は…俺は…」
俺は膝からその場に崩れてしまった。涙が止まらない…
こんなに愛してくれているフリーレンの気持ちを俺は疑ってしまったんだ…そして、また離れようとした…
フリーレンはその場に腰を下ろすとそんな俺を丸ごとギュッと抱きしめてくれた。
「貴方を一生手放さないと言ったでしょう?」
「………うん…」
俺は鼻を啜りながら頷くことしかできなかった。
「国の都合で王妃にしてしまって、マルコさんの穏やかな生活を奪ってしまった事、他国に連れ去ってしまった事、本当は心苦しく思っていたのです。本来ならあの村で2人で暮らしていくつもりだったのに私の事情に巻き込んでしまった…」
「……………」
「でも、悪いことばかりじゃありませんでしたよ…
隣国ロージア王国は、かなり魔物被害が大きかったのですが、結界のお陰でラクシミール国内は魔物の被害が出ませんでした。だから国境近くのマルコさんの村もかなり被害が出ましたが、我が国が彼らを難民として受け入れた事で死者をほとんど出さずに済んだのです。アンネ婆さん達も無事です。
ここは、彼らが避難し新たな生活ができるように開拓した村なのです。
ラクシミール国内ではありますが、以前と同じ温かい人たちに囲まれた村で、私と本当の家族になってほしいと思ったのです…」
「ねぇ…マルコさん…?」
フリーレンが俺の顔を覗き込む。
気になっていた村の人たちの無事を知ってホッとすると同時に、俺の大切な人たちを無条件に受け入れ、支える手配をしてくれたフリーレンへの感謝の思いが込み上げてくる。
俺は言葉が出す、涙でぐちゃぐちゃの顔のまま、フリーレンの頬に口づけた。その口を追いかけるようにして、フリーレンも俺の唇にそっと唇を合わせてくる…俺たちは何度も角度を変えながら唇を啄み合い、次第に深い口づけになっていった。
フリーレンが涙でぐちゃぐちゃの俺を抱き抱えて隣の部屋へと移動した…そこは2人のための寝室だった。
こぢんまりとした家に似つかわしくない大きなベッドが部屋の中央に鎮座している。
フリーレンは、そこに俺を下ろすと、宝物でも扱うように優しい手付きで俺の服のボタンを外していく。
はらりと、はだけた胸元にフリーレンは幾つも跡を残していった…
「ああ…マルコさん…貴方に2週間も触れられなくて僕の中は、マルコさん不足で空っぽです…」
「そ、そうか…そりゃ済まないことをしたな…」
うぅ…素直に俺もだと言えない自分が情けない…
「やはり、1年くらいは子供を引き取らずに2人の時間を満喫することにします…」
「そうか…そうだな…うん…まぁ…急がなくてもな…」
子どもを引き取れば、今のような甘い時間は減ってしまうからな…俺もそれは気になるところだ…
「今日はたっぷり甘えさせてくださいね…」
「はは…そうだな…こんなでっかい子供も悪くないな」
フリーレンが俺の乳首にチュゥっと吸い付いたので、俺は奴の頭をぐしゃぐしゃに撫でてやった。
「マルコさんのミルク、飲みたいな…」
フリーレンは俺の胸に頬を乗せながら甘えて来た。
なんだか、今日のフリーレンは子供っぽい。
子供の頃に満たされなかった想いを埋めたいのかもしれない。
俺は、貧乏だったが温かい家庭に育ったので、フリーレンの辛い子供時代は想像することしかできないが、今夜くらいはそんなフリーレンを甘やかしてやりたい。
「よしよし…いくらでもお飲み…」
うっかりそう言ってしまった…フリーレンは嬉しそうな顔をして俺のベルトをいそいそと外し始めた。
ミルクってそれか…「いくらでも」とか言っちまったが大丈夫かなぁ…
ズボンが引き下ろされると、わずかに芯を持ち始めた萎えた陰茎がポロんとまろび出た。
ズボンが半分ずり下げられただけの間抜けな格好だが、フリーレンは嬉しそうにそれを口に含み、舌で器用に皮を捲りながらカリを擦る。
俺の陰茎はあっという間にフリーレンの口の中で育っていく。
そこで、ハタと気づいたが、俺はフリーレンがいないうちに風呂に入るつもりでいたから、風呂に入ってない。
「フリーレン、そこ汚いからちょっと待て!」
「今さら何言ってるんですか…ちゃんと綺麗にしてあげますよ…」
フリーレンは言葉通り、汚れを舐めとるように丁寧に俺のチンコを舐めしゃぶった。舌で浄化魔法をかけているようで、どんどん俺のチンコが綺麗になっていく。そういえば、コイツはチート野郎だった…
じんわりと伝わる魔力が気持ち良すぎて俺はあっという間に上り詰めて射精してしまった。
俺の精液を口で受け止めたフリーレンは美味しそうに飲み下した。
「マルコさんのミルクならいくらでも飲めます」
フリーレンはにっこりと笑って怖いことを言い放った。
その後、俺はズボンが足に引っかかったまま、フリーレンに足を持ち上げられ、赤ん坊がおしめを変える時の様なポーズで後孔をほぐされた。
もうどちらが赤ん坊役か分からなくなってきた…
そのまま十分開かない足をぐっと抑えられてまんぐり返しの体制で、フリーレンの剛直が入ってきた。
真上から突き入れる様にずぷっと亀頭が入ったかと思うと、前立腺のあたりをゴリゴリと擦り上げる。
「あ~♡フリーレン…そこ…つよ…すぎるから…」
おれは強すぎる刺激に悶えるしかできない。
「マルコさんのアヘ顔、最高に可愛いです…すみません、マルコさんタンクが空っぽなんです。優しくできる自信がないので先に謝っておきます…」
そう言うと、一気に奥まで剛直を突き入れてきた。
「ああーーーっ♡」
ズンズンと奥の奥の入っちゃいけなそうなところまでフリーレンにこじ開けられ突き上げられて、俺は悲鳴を上げることしかできない。
もともとおれが悪いので、今夜はとことんフリーレンの望みを叶えるしかないな…
俺は観念してフリーレンにキスをしてやった。
その晩、完全に抱き潰された俺はそのまま、新居のベッドで気を失い、知らないうちに転移魔法で王宮のベッドに戻っていた…
これから、どこにでもいる普通の家庭を作ったとしても、どこにでもある様な些細な事で悩んだり、些細な事で喧嘩したりするんだろう…
それでも、フリーレンは決して俺を手放さないと言ってくれた。だから、俺もどんな事があっても、フリーレンと2人で生きていく未来を選ぶと誓おう…
それが、世間の最良と違っても、きっと俺たちの最良なのだ…
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