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7. 高嶺のsub様の初めてのプレイ
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授業終わりに理人と待ち合わせをした。
理人に連れてたられたのは、大学から10分くらい歩いた場所にあるタワーマンションだった。
「ここは理人の家?」
「いや、違うよ。普段は実家から通ってるんだけど、40分くらいかかるから、空き時間や遅くなった時用にこの部屋を借りてるんだ…」
30階建ての25階。広々とした3LDKは俺のアパートが3つは入りそうだ。休憩のためにこんな家を借りるなんて、やっぱり理人はお金持ちなんだなと実感する。
「アイスコーヒーでいい?」
「いや、お構いなく」
「ふふ…買ってきただけのペットボトルだから気にしないで」
理人は氷の入ったグラスにペットボトルからアイスコーヒーを注いで持ってきた。
「プレイをするなら、2人っきりの方がいいと思って。ここなら他の人のグレアに反応する事はないから……春人のグレアに僕がどうなるかしっかり見てほしいんだ。」
そうか…俺のために提案してくれたんだな…
「理人にプレイごっこを提案されてから、俺もダイナミクスについて少し勉強したんだ…subにとってdomとのプレイがどれほど大切なものかも知った。ごめん、それまで趣味くらいの認識だった…neutralにとっての恋愛よりももっと切実なものだったんだな…」
本には高ランクになるほど、不安症を薬で抑えるのも難しいとも書いてあった。理人も強い薬を服用して不安を抑えているんだろうか…
「ダイナミクスが医学的に取り上げられてキチンと治療が始まったのは最近の話だからね。
neutralの人達が正しい知識を持たないのも無理ないよ。僕の方こそ、子供の頃からダイナミクスが当たり前の環境に慣れすぎて、neutralの常識から離れすぎているかもしれないからお互い学ばないとだね」
理人は微笑んで続ける。
「僕の父は知っての通り、D波とS波を発見した研究者だ。父は僕と同じsubなんだけど、そこまで高ランクじゃなくて、それまで特に意識もせず暮らしていたらしい。でも、高校生の時に母に見出されて、sub性に目覚めたみたい。当時はまだ世の中もダイナミクスに偏見が強かったから、2人は表面上は普通の恋人として振る舞っていたんだって…
でも、抗いがたい衝動が身体を駆け巡る不思議に取り憑かれて、教授達の反対も押し切り、ダイナミクスの研究を進めて論文を発表したんだ…
当時はダイナミクス科なんてないから当然普通の内科で、タブーとされるダイナミクスを本気で研究しているから、ずいぶん嫌がらせをされたりもしたみたいだよ。
でも、母だけは『納得するまでやりなさい。私があなたを守るから。私以外の意見に悩まなくていい』って父を支えたんだって。
その後も、『抑制剤の商品化とか特許とか、面倒な事は全部私がしてあげるから、あんたは研究に集中しなさい』って言って、会社立ち上げて全部やっちゃったんだ」
「理人のお母さんは強い人だね」
「うん、domだからね…でもsubも強いんだよ…
subはね、他の誰に何と言われようと、自分が主人って認めた人を信じ切れるんだ。
だから、例えどんなに周りが勘違いだと言っても、もし春人が僕のdomになってくれたら、僕は春人の事だけを信じるよ…
なんて、いきなり重い話してごめんね!今日はお試しというか、練習みたいなものだから、先の事とか気にしないで楽しもうね♪」
「ああ…そう言ってもらえると助かるよ」
「そろそろはじめようか」と、理人はグラスを机に置き、俺の顔を見た。
「その前にセーフワードってのを決めるんだろ?理人が嫌がるようなことをするつもりはないけど、ちゃんと決めておかないとな」
「あ、うん…そうだよね…んじゃ、【高嶺の花】にする」
「高嶺の花?」
「うん、春人も知ってると思うんだけど、僕は、『高嶺の花』とか『高嶺のsub様』って呼ばれてて…
でも、本当は誰にも相手にしてもらえなくて、すごく寂しかったんだ…でも今は春人に会えて、もう1人じゃないって思えたから…」
「そうか…」
俺が本当に理人のdomだったらよかったのにな…
「無理にグレアを出そうとしなくてもいいから、ここに書いたコマンドを僕に言ってくれる?」
理人が一枚のメモを手渡してきた。
そこには、【come 】【kneel 】【look】といった感じの簡単なコマンドが書かれていた。
これは初歩の初歩だと本にも書いてあった。
初心者の俺に配慮してくれたんだろう。
あ、理人もある意味初心者か…ずっと相手が見つからなかったんだもんな…
下の方には、できたときの褒め言葉、rewordが書かれていた 【good】【good boy】【excellent】といった感じだ。
「わかった」
俺はゴクリと唾を飲んで理人の目を見て言ってみた。
「理人、【come】」
理人はパァッと嬉しそうな顔をして、俺の近くまできた。
「【good boy】そのまま次に行くよ。【kneel】」
理人はカラオケボックスの時のように僕の膝の間にペタンと膝を折り尻をついた。手は足の間で床に付いている。
「【good boy】いい子だ、理人。」頭を撫でてやるとトロンと嬉しそうに俺の膝に頬擦りしてくる。
あぁ…理人が可愛すぎる…俺の理性が保つだろうか…
「理人、こっち向いて【look】そう、俺の目をじっと見て、そのままこっちおいで【come】」
俺は自分の肩の辺りをポンと叩いて示した。
理人は僕の膝を跨ぐように座り目を合わせたまま、肩に手を置いた。
そのまま理人の顔が近づいて鼻と鼻が触れ合う距離にきた。
近い…
【good boy】俺が口を動かした時、理人の唇に俺の唇が僅かに掠めた。
あ…ごめん!
謝ろうとしたけど、理人の顔は少しも嫌そうじゃなくて、むしろトロンとしたままうっとりと俺を見つめたままで、俺はたまらなくなってそのまま理人の頭を押さえてキスをしてしまった…その柔らかさと温かさに気づいたら夢中で理人にキスをしていた。舌は入れなかったけど、何度も何度も啄むように角度を変えてキスをして…ハッと気づいた時には、理人は完全に蕩けていた…
やってしまった…声をかけても、理人はあんまり反応しない。酔っ払ったみたいにフニャフニャしたまま俺の肩に縋り付いてぐったりしている。
これがsubスペースってやつだろうか…
俺はぐったりした理人を抱えたまま、「【good】大丈夫だよ。」と言って、頭や背中を撫でてやった。
俺のキスにこんなに気持ちよさそうにしてくれるなんて、理人にも俺と同じように少しは恋愛感情があるんじゃないかと期待してしまう…
30分ほどして理人の意識が戻って来た。
「初めてのプレイでsubスペースに入れるなんて、やっぱり春人は凄い!」
理人はまだ夢見心地で嬉しそうにしていた。
俺は、このまま続けたら理人を押し倒してしまいそうだったので、今日はここまでにしてもらって、そそくさと帰宅した。
帰って調べた結果、domからのキスはご褒美の意味にもなると知って、俺が落胆したのは言うまでもない…
やっぱり理人にとって俺は、ただのご主人様なんだ…
理人に連れてたられたのは、大学から10分くらい歩いた場所にあるタワーマンションだった。
「ここは理人の家?」
「いや、違うよ。普段は実家から通ってるんだけど、40分くらいかかるから、空き時間や遅くなった時用にこの部屋を借りてるんだ…」
30階建ての25階。広々とした3LDKは俺のアパートが3つは入りそうだ。休憩のためにこんな家を借りるなんて、やっぱり理人はお金持ちなんだなと実感する。
「アイスコーヒーでいい?」
「いや、お構いなく」
「ふふ…買ってきただけのペットボトルだから気にしないで」
理人は氷の入ったグラスにペットボトルからアイスコーヒーを注いで持ってきた。
「プレイをするなら、2人っきりの方がいいと思って。ここなら他の人のグレアに反応する事はないから……春人のグレアに僕がどうなるかしっかり見てほしいんだ。」
そうか…俺のために提案してくれたんだな…
「理人にプレイごっこを提案されてから、俺もダイナミクスについて少し勉強したんだ…subにとってdomとのプレイがどれほど大切なものかも知った。ごめん、それまで趣味くらいの認識だった…neutralにとっての恋愛よりももっと切実なものだったんだな…」
本には高ランクになるほど、不安症を薬で抑えるのも難しいとも書いてあった。理人も強い薬を服用して不安を抑えているんだろうか…
「ダイナミクスが医学的に取り上げられてキチンと治療が始まったのは最近の話だからね。
neutralの人達が正しい知識を持たないのも無理ないよ。僕の方こそ、子供の頃からダイナミクスが当たり前の環境に慣れすぎて、neutralの常識から離れすぎているかもしれないからお互い学ばないとだね」
理人は微笑んで続ける。
「僕の父は知っての通り、D波とS波を発見した研究者だ。父は僕と同じsubなんだけど、そこまで高ランクじゃなくて、それまで特に意識もせず暮らしていたらしい。でも、高校生の時に母に見出されて、sub性に目覚めたみたい。当時はまだ世の中もダイナミクスに偏見が強かったから、2人は表面上は普通の恋人として振る舞っていたんだって…
でも、抗いがたい衝動が身体を駆け巡る不思議に取り憑かれて、教授達の反対も押し切り、ダイナミクスの研究を進めて論文を発表したんだ…
当時はダイナミクス科なんてないから当然普通の内科で、タブーとされるダイナミクスを本気で研究しているから、ずいぶん嫌がらせをされたりもしたみたいだよ。
でも、母だけは『納得するまでやりなさい。私があなたを守るから。私以外の意見に悩まなくていい』って父を支えたんだって。
その後も、『抑制剤の商品化とか特許とか、面倒な事は全部私がしてあげるから、あんたは研究に集中しなさい』って言って、会社立ち上げて全部やっちゃったんだ」
「理人のお母さんは強い人だね」
「うん、domだからね…でもsubも強いんだよ…
subはね、他の誰に何と言われようと、自分が主人って認めた人を信じ切れるんだ。
だから、例えどんなに周りが勘違いだと言っても、もし春人が僕のdomになってくれたら、僕は春人の事だけを信じるよ…
なんて、いきなり重い話してごめんね!今日はお試しというか、練習みたいなものだから、先の事とか気にしないで楽しもうね♪」
「ああ…そう言ってもらえると助かるよ」
「そろそろはじめようか」と、理人はグラスを机に置き、俺の顔を見た。
「その前にセーフワードってのを決めるんだろ?理人が嫌がるようなことをするつもりはないけど、ちゃんと決めておかないとな」
「あ、うん…そうだよね…んじゃ、【高嶺の花】にする」
「高嶺の花?」
「うん、春人も知ってると思うんだけど、僕は、『高嶺の花』とか『高嶺のsub様』って呼ばれてて…
でも、本当は誰にも相手にしてもらえなくて、すごく寂しかったんだ…でも今は春人に会えて、もう1人じゃないって思えたから…」
「そうか…」
俺が本当に理人のdomだったらよかったのにな…
「無理にグレアを出そうとしなくてもいいから、ここに書いたコマンドを僕に言ってくれる?」
理人が一枚のメモを手渡してきた。
そこには、【come 】【kneel 】【look】といった感じの簡単なコマンドが書かれていた。
これは初歩の初歩だと本にも書いてあった。
初心者の俺に配慮してくれたんだろう。
あ、理人もある意味初心者か…ずっと相手が見つからなかったんだもんな…
下の方には、できたときの褒め言葉、rewordが書かれていた 【good】【good boy】【excellent】といった感じだ。
「わかった」
俺はゴクリと唾を飲んで理人の目を見て言ってみた。
「理人、【come】」
理人はパァッと嬉しそうな顔をして、俺の近くまできた。
「【good boy】そのまま次に行くよ。【kneel】」
理人はカラオケボックスの時のように僕の膝の間にペタンと膝を折り尻をついた。手は足の間で床に付いている。
「【good boy】いい子だ、理人。」頭を撫でてやるとトロンと嬉しそうに俺の膝に頬擦りしてくる。
あぁ…理人が可愛すぎる…俺の理性が保つだろうか…
「理人、こっち向いて【look】そう、俺の目をじっと見て、そのままこっちおいで【come】」
俺は自分の肩の辺りをポンと叩いて示した。
理人は僕の膝を跨ぐように座り目を合わせたまま、肩に手を置いた。
そのまま理人の顔が近づいて鼻と鼻が触れ合う距離にきた。
近い…
【good boy】俺が口を動かした時、理人の唇に俺の唇が僅かに掠めた。
あ…ごめん!
謝ろうとしたけど、理人の顔は少しも嫌そうじゃなくて、むしろトロンとしたままうっとりと俺を見つめたままで、俺はたまらなくなってそのまま理人の頭を押さえてキスをしてしまった…その柔らかさと温かさに気づいたら夢中で理人にキスをしていた。舌は入れなかったけど、何度も何度も啄むように角度を変えてキスをして…ハッと気づいた時には、理人は完全に蕩けていた…
やってしまった…声をかけても、理人はあんまり反応しない。酔っ払ったみたいにフニャフニャしたまま俺の肩に縋り付いてぐったりしている。
これがsubスペースってやつだろうか…
俺はぐったりした理人を抱えたまま、「【good】大丈夫だよ。」と言って、頭や背中を撫でてやった。
俺のキスにこんなに気持ちよさそうにしてくれるなんて、理人にも俺と同じように少しは恋愛感情があるんじゃないかと期待してしまう…
30分ほどして理人の意識が戻って来た。
「初めてのプレイでsubスペースに入れるなんて、やっぱり春人は凄い!」
理人はまだ夢見心地で嬉しそうにしていた。
俺は、このまま続けたら理人を押し倒してしまいそうだったので、今日はここまでにしてもらって、そそくさと帰宅した。
帰って調べた結果、domからのキスはご褒美の意味にもなると知って、俺が落胆したのは言うまでもない…
やっぱり理人にとって俺は、ただのご主人様なんだ…
応援ありがとうございます!
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