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第三章
え? ヒロイン?
しおりを挟むリン視点です。
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俺の憧れの人、第3師団長、ロード・ディーク・ロヴィンゴッドウェル様に声をかけてもらえた。
ルマンド王国最強の四天王と言われる4人の師団長の内の1人で、その中でも“力”に特化したあのロード様に!!
俺は人生で一番といって良いほど興奮していた。
ルマンド王国の騎士になれるかもしれないと思ったさっきよりも。
こんなに嬉しい事が続いて大丈夫だろうかと心配になる程幸せだ。
ロード様はあの時と変わらず気さくで、大きくて、格好良くて、せっかく声をかけてもらったのに、緊張して上手く話せなかった。
後で話があると言われた時は、俺は何か粗相でもしてしまっただろうかとさすがに顔が強張ったが、訓練所の入り口にトモコとミヤビを見つけて、性奴隷の件かと納得した。
他国の事だけどロード様は気にしてくれているんだと、改めてロード様の優しさにじんとした。
けど、ロード様とトモコ達は一体どういった関係なんだろうか? トモコがルマンド王国の貴族なら、ロード様と知り合いでもおかしくはないかと考えていると、入り口に向かって行ったロード様は、ミヤビを抱き上げて去っていったのだ。
ミヤビはトモコの侍女だよな??
「ーー…あれが噂の女神様か…」
と部隊長がボソリと呟いた。
「え!? あれが師団長の噂のつがいですか!?」
スイさんが太い尻尾をさらに太くしてビンッと伸ばす。
「みたいだな。俺も初めて見たが…」
「確か人族の女神様という噂でしたよね」
部隊長に先輩騎士が口にした言葉にさらに驚愕した。
ミヤビが人族の女神様!? トモコの侍女じゃなくて!?
「らしいが…もしかしたら人族の女神様はあの白髪の女性で、師団長のつがいはその御遣い様かもしれんな」
「てことは、精霊ですか?」
ああ、トモコが人族の女神様でミヤビが御遣い様か…それならまぁ…いや、俺は神様にあんな態度をとっちまったのか!? 大変だっ しかもミヤビはロード第3師団長のつがい…なんて事だ!! 謝らないとっ
「しっかしウチの師団長はすげぇな!! つがいが御遣い様で、知り合いが神様だもんなぁ」
「師団長の足元にチラッと見えたんですけど、世界を救ってくださった神獣様のお姿もありましたよ」
「嘘だろ!? もう夢の中の世界だな!!」
スイさんの話に興奮している部隊長に、先輩騎士もスイさんも激しく頷いている。
勿論俺だって大興奮だ。
憧れてやまないロード様に声をかけてもらえた事。これもトモコ…様やミヤビ…様に会ってなけりゃ叶わなかった事だしな。
フォルプロームから一瞬でルマンド王国に来たり、魔獣が喋ったり、あんな美味い料理出したりと、今思えば不思議な事ばかりだったのも、女神様や精霊様だったからなんだなと納得しながら、ふと思う。精霊様って容姿端麗の方が多いって話だけど、ミヤビ…様みたいに平凡な容姿の精霊様もいるんだな、と。
◇◇◇
入団手続きを終えて、明日から俺はルマンド王国の騎士なんだ、と幸せを噛みしめていれば、スイさんにロード師団長様の執務室に案内すると言われて気を引き締めた。
「ロード師団長にそう頻繁に会えると思うなよ。部隊長だって滅多に会えない天上の方なんだからな」
「はい。分かっています」
チクリと刺された言葉に尻尾が垂れてしまう。
意地悪で言ったんじゃないってわかってるけど、身分差を突きつけられた気がして…。
「あー…今のはそういうんじゃなくて…新人で師団長に目をかけて貰えてると勘違いして図に乗ったりとか、後は、嫉妬で先輩や同僚にいじめにあうとか、そういうのに気を付けろよって意味でな…」
スイさんは俺の尻尾を見て慌ててフォローしてくれた。
「はい。ありがとうございます! ロード師団長様が俺に声をかけてくれたのは、ちょっと故郷の事で話さないといけない事があったからですし、図に乗ったりとかそんな事はありませんので大丈夫ですっ」
「そ、そっか」
ちょっと言葉がキツイだけで、実は優しいスイさんに、先輩に恵まれたなぁと思いながら俺はロード様の執務室に向かったのだった。
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