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第四章
北の国旅行のパーティーメンバー
しおりを挟む「常々お伝えしていました北の国への旅行ですが、一週間後と決定致しました。その際大勢で行く事も憚れるという理由で最大5名の定員とさせていただきます。なお、本日はその5名の選出という事で話し合いを行う予定です」
というトモコの話から突如始まった会議(?)は、浮島の“エルフ街”の一角にある屋敷で開催されている。
呼び出されたメンバーは、ヴェリウス、ロード、ショコラ、魔神の少年、エルフ、そして私だ。
バイリン国から帰ってきて2週間目の事であった。
ちなみに“エルフ街”とは、今後エルフ達が住む予定なので通り名を勝手に付けさせてもらった。
「それではこれから、“北の国”に行くパーティーメンバーを決めたいと思いますが、メンバー5人の内3人はすでに決定済みです」
「トモコせんせー、その3人とは誰の事でしょうかー?」
「勿論、エルフのデリ…デリケート? さんと、私トモコに、みーちゃんの3人です」
「あの…デリケートではなく、“デリキャット”と申します…」
「デリバリー猫のエルフさんです!!」
「デリ、??」
名前を間違われたあげくに変な通り名をつけられたエルフの彼は大いに困惑している。
そしてすでに3人は決定されているという出来レースに場がざわついた。
「ちょっと待て。エルフとミヤビはわかる。けど、何でトモコが決定してやがるんだ」
ロードの一言に、そうだそうだとブーイングがあがる。
「皆様ご静粛に」
裁判長の持つハンマーをカンカンと鳴らしたトモコは、
「それは私が北の国に行ってみたいからです!!」
と言いきった。
勿論会議は難航する事となる。
「当然ミヤビのつがいである俺はパーティーに入るべきだろうが」
「ロード様はお仕事がお忙しいかと思うので、替わりにショコラが入ります~。そして主様をお守りします~」
ロードのトモコとほぼ変わらない理由での立候補はどうなのかと思っていると、ショコラがロードを押し退けて参戦してきたのだ。
『ミヤビ様…私は用があるので御一緒出来ませんが、くれぐれも皆からはぐれぬようご注意ください』
しかし突然のヴェリウス落脱に皆が目を剥いた。
「ヴェリウスが降りるなら替わりにオレが参戦するぜ!! 北の国なら魔族が居た地だし、行った事があるから詳しいんだ!! 神王様っオレが居れば便利ですよ!!」
魔神の少年はそう言ってアピールしてきた。この中で一番まともな自己アピールかもしれない。
「ロード様やトモコ様はバイリン国に行ってらっしゃるのですから、今度はショコラが主様と一緒に旅行に行きたいです~!! それに主様をお守りする騎士はショコラなのです~!!」
ショコラにそう言われてしまえば、どちらかが脱落するしかなくなる。
そしてトモコが行動を移したのだ。ロードを見てニヤリと笑いながら。
「この間バイリン国に行ったロードさんは、ショコたんの言う通り、お仕事がた~んまりたまっているようですね~。貴方の部下も、上司のルーベンスさんやルマンド王も、さらには同僚ですら困っていましたよ。どうしますか~?」
ヌフフと笑うトモコに、ぐぬぬっと唸るロードはかなり悔しそうだがマヌケにうつった。
「はい。というわけでメンバーが決定しました!! まずみーちゃん、デリ猫さん、ショコたん、ジュリーさん、私です!!」
わーっと拍手しているパーティーメンバーを項垂れて見ているロードと、フンッと嘆息しているヴェリウス。
ロードは可哀想だが、仕事が溜まっているなら仕方ない事だろう。ヴェリウスは用事がある事だし…と納得して、トモコから配られた予定表に目を通したのだ。
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『ロードよ、ルーベンス・タッカード・ルーテルについて調べてみたが、確かに奴の小飼の諜報員は各国に居るようだ。が、どうあがいても2~3日でバイリンからルマンドに情報を届けられるような者は居なかったぞ』
浮島での会議が終わり、解散した後の事。
ヴェリウスとロードは天空神殿にて真剣な表情で話し合いをしていた。
「やっぱりか…なら何故奴はバイリンでの出来事を知る事ができたんだ…」
この世界ではルマンド王国から遠く離れたバイリンの国の情報を届けるにしても、早馬ですら一週間以上はかかる。鳥ならば3日程度で移動可能かもしれないが、この世界では長距離を飛ぶには天敵が多すぎるのだ。まず途中で魔獣に食われてしまうだろう鳥を長距離で情報交換に使う者はいない。
念話を使えるならば一瞬だが、人間で念話を使用できる程魔力を持つ者は居ないのが現状である。
しかし、ルーベンス・タッカード・ルーテルはバイリンの情報を知っていたのだ。事件が起きてから2、3日程度しか経ってなかったというのに。
『引き続き奴と奴の周辺を調べてみる事にしよう』
「…まだ敵と決まったわけでもねぇし、特に何かを仕掛けられたわけでもねぇが…」
『ミヤビ様が自ら近付いてしまう者だ。注意するにこしたことはない』
ヴェリウスの言葉に眉間のシワを深くし頷いたロードは、立ち上がると深淵の森へと続く扉をくぐったのだ。
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