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日常編⑭
第370話、エルミナのダイエット②
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「……なるほどな」
「なるほどね」
「…………」
目を覚ましたエルミナに、三種類のハーブと乾燥肝臓を溶かしたスープを飲ませ、事情を聞いた。
どうも、太ったことを気にしているらしい。お酒を飲み、運動もせず、お菓子をいっぱい食べての生活で、お腹周りにお肉が付着。メージュたちに指摘されたことを気にしていた。
「でもさ、いきなり全身鎧を着て走るってのも身体に悪いんじゃないの?」
「だって……いっぱい運動して汗かけば痩せるもん」
「極端すぎだぞ……」
エルミナはしょんぼりしている。
うーん、見た感じ全く変わっていないように見えるけど。
「ま、あたしも女だし気持ちはわかるわ。でもダイエットなんてしたことないし……なにかアドバイスできればいいんだけど」
「そうだな……」
ちょっと考える。
ローレライとクララベル……うーん、龍人って太るのかな? 本来はあんな大きなドラゴンに変身するし、ドラゴン形態では木箱いっぱいのリンゴを食べていたな。
シルメリアさん……ダメだ。スタイル抜群だ。というか銀猫たちは不摂生なんてしない。
「じゃあ、ミュディに聞いてみるか」
「……なんでミュディ?」
「いや、なんとなく」
「お兄ちゃん、それミュディに言ったら嫌われるかもね」
「え!? なんで!?」
「いや、ダイエットのやり方を聞きに行くって、太ってるからやったことあるんでしょ?って取られちゃうかも。お兄ちゃんにそんなこと言われたら怒るかもね」
「そ、そうなのか?」
「女の子はそんなものよ」
シェリーは腰に手を当てて人差し指まで立てた。まるで姉のように俺に説教する。
さすがに、ジーグベッグさんの蔵書に『ダイエットの秘訣』なんてなさそうだし、とりあえずミュディを頼るか。今日は休みで部屋にいるはず。
「じゃ、行ってみるか」
「うん」
「はぁぁ……痩せたい」
俺、シェリー、エルミナはさっそくミュディの部屋に向かった。
◇◇◇◇◇◇
「ダイエット……? ねぇアシュト、なんでわたしに聞きに来たの?」
「え、いや、まぁその」
「わたし、ダイエット経験者に見えるんだ?」
「えっと……すみませんでした」
「ふふふ」
なんかミュディが怖かった。
シェリーは呆れ、エルミナは未だにどんよりしてる。
さて、気を取り直して……気が付いた。ミュディの部屋にはカレラさんもいる。
すると、メリルちゃんを抱っこして頭を撫でるカレラさんがこんなことを言った。
「ああ、ダイエットですの? それならわたくし、美容体操や栄養指導の講師もしておりますので、指導してあげてもよろしいですわよ」
「ほんとっ!?」
「ええ。村でお世話になってるお礼ですわ」
「にゃあー」
メリルちゃん、気持ちいいのか蕩けている。
というわけで、カレラさんによるダイエット指導が始まった。
◇◇◇◇◇◇
「……あの、なんで俺まで」
「別にいいでしょ!!」
「わ、わたしも?」
「あ、あたしまで……」
着替えた俺たちは、家の裏庭に集まっていた。
カレラさんも着替え、これから『美容体操』なる運動を始めるらしい。
メリルちゃんもちょこんと俺の隣にいる。
「ではこれより始めましょう。エルミナさん、わたくしの行う運動を毎日続ければ必ずダイエットは成功します。ミュディさんたちは健康的なお肌を、アシュト様は運動不足を解消することが可能です」
「え、ほんと!?」
「お肌……ふむ、いいわね」
「う、運動不足……まぁそうだけど、指摘されるとけっこうキツイな」
「では、始めます」
カレラさんの美容体操が始まった。
最初は普通の準備運動みたいだったけど、やたら曲げ伸ばしたりひねったりとけっこうキツイ。
終わる頃には、身体がめっちゃほぐれていた。
次は食事だ。
野菜を中心としたメニューで、肉は鳥のささみだけ。水分を多くとるようにして睡眠は長めにとる。
ここでエルミナが騒いだ。
「お、お酒!! お酒は!?」
「駄目です」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
この世の終わりみたいな声を出すエルミナ。
いや、酒はダメだろ……痩せる気あるのかよ。
「アシュト様。これから毎日エルミナさんと寝室を共にしてください。お酒を飲まないように監視を」
「は、はぁ……」
「アシュトぉ~」
「悪いけど、酒はダメな」
「うぇぇぇぇーんっ!!」
確かにダイエットも大事だけど、エルミナの不摂生は健康にもよくない。
酒をがぶ飲みし、お菓子や甘い物を好きな時に好きなだけ食べ、夜更かししては酔い潰れる……そんな生活では、いつか大きな病気になってしまう。
これを機に、エルミナを矯正する。酒を禁止するのではなく適度な量で。お菓子も少なくし、運動をさせる。
「わ、わたしはお酒苦手だから。紅茶ならいいよね?」
「構いませんが、砂糖を何個も入れたりミルクをたくさん入れるのはダメですわ」
「はうっ……」
「あたしは甘い物好きだけど量はわきまえてるし、竜騎士の訓練中には食べれないしねー」
この中ではシェリーが最強だな。
俺も甘いのは食べるけど、仕事中に糖分を取るって感じだし。
あとは、おやつを食べに来たミュアちゃんたちと一緒に食べるくらいだ。
「では、美容体操と食事療法でダイエットをしていきましょう」
カレラさん、すごく張り切ってる……頑張ろう。
◇◇◇◇◇◇
十日後。
カレラさんの指導をずっと受けていたので身体がずいぶんと軽く感じた。
ミュディやシェリーの肌ツヤもよくなり、エルミナも腰回りがキュッとくびれた。
ローレライやクララベルが『私たちも参加したかった。なぜ教えないのか』と俺に詰め寄って怖い笑みを浮かべるというハプニングはあったが、ダイエットは成功したと思う。
「カレラ、ほんっとにありがとう!! みてみて、このくびれ!!」
「ええ。と、はしたないですわ!!」
エルミナは服を捲ってくびれを見せつける。それに、この十日でカレラさんはずいぶんと仲良くなった。
俺もずいぶんと身体が軽い。適度な運動と睡眠はやっぱり大事だ。
「ふふふ。これでメージュたちにも馬鹿にされないわ!! ちょっと行ってくる!!」
「あ、おい……って、行っちまった」
エルミナはダッシュで家を出て行った。
ここから後日談だが、メージュたちにくびれを自慢したエルミナは酒を解禁。今まで飲めなかった分を取り戻すため連日飲みまくり……まぁ、お察しください。
「なるほどね」
「…………」
目を覚ましたエルミナに、三種類のハーブと乾燥肝臓を溶かしたスープを飲ませ、事情を聞いた。
どうも、太ったことを気にしているらしい。お酒を飲み、運動もせず、お菓子をいっぱい食べての生活で、お腹周りにお肉が付着。メージュたちに指摘されたことを気にしていた。
「でもさ、いきなり全身鎧を着て走るってのも身体に悪いんじゃないの?」
「だって……いっぱい運動して汗かけば痩せるもん」
「極端すぎだぞ……」
エルミナはしょんぼりしている。
うーん、見た感じ全く変わっていないように見えるけど。
「ま、あたしも女だし気持ちはわかるわ。でもダイエットなんてしたことないし……なにかアドバイスできればいいんだけど」
「そうだな……」
ちょっと考える。
ローレライとクララベル……うーん、龍人って太るのかな? 本来はあんな大きなドラゴンに変身するし、ドラゴン形態では木箱いっぱいのリンゴを食べていたな。
シルメリアさん……ダメだ。スタイル抜群だ。というか銀猫たちは不摂生なんてしない。
「じゃあ、ミュディに聞いてみるか」
「……なんでミュディ?」
「いや、なんとなく」
「お兄ちゃん、それミュディに言ったら嫌われるかもね」
「え!? なんで!?」
「いや、ダイエットのやり方を聞きに行くって、太ってるからやったことあるんでしょ?って取られちゃうかも。お兄ちゃんにそんなこと言われたら怒るかもね」
「そ、そうなのか?」
「女の子はそんなものよ」
シェリーは腰に手を当てて人差し指まで立てた。まるで姉のように俺に説教する。
さすがに、ジーグベッグさんの蔵書に『ダイエットの秘訣』なんてなさそうだし、とりあえずミュディを頼るか。今日は休みで部屋にいるはず。
「じゃ、行ってみるか」
「うん」
「はぁぁ……痩せたい」
俺、シェリー、エルミナはさっそくミュディの部屋に向かった。
◇◇◇◇◇◇
「ダイエット……? ねぇアシュト、なんでわたしに聞きに来たの?」
「え、いや、まぁその」
「わたし、ダイエット経験者に見えるんだ?」
「えっと……すみませんでした」
「ふふふ」
なんかミュディが怖かった。
シェリーは呆れ、エルミナは未だにどんよりしてる。
さて、気を取り直して……気が付いた。ミュディの部屋にはカレラさんもいる。
すると、メリルちゃんを抱っこして頭を撫でるカレラさんがこんなことを言った。
「ああ、ダイエットですの? それならわたくし、美容体操や栄養指導の講師もしておりますので、指導してあげてもよろしいですわよ」
「ほんとっ!?」
「ええ。村でお世話になってるお礼ですわ」
「にゃあー」
メリルちゃん、気持ちいいのか蕩けている。
というわけで、カレラさんによるダイエット指導が始まった。
◇◇◇◇◇◇
「……あの、なんで俺まで」
「別にいいでしょ!!」
「わ、わたしも?」
「あ、あたしまで……」
着替えた俺たちは、家の裏庭に集まっていた。
カレラさんも着替え、これから『美容体操』なる運動を始めるらしい。
メリルちゃんもちょこんと俺の隣にいる。
「ではこれより始めましょう。エルミナさん、わたくしの行う運動を毎日続ければ必ずダイエットは成功します。ミュディさんたちは健康的なお肌を、アシュト様は運動不足を解消することが可能です」
「え、ほんと!?」
「お肌……ふむ、いいわね」
「う、運動不足……まぁそうだけど、指摘されるとけっこうキツイな」
「では、始めます」
カレラさんの美容体操が始まった。
最初は普通の準備運動みたいだったけど、やたら曲げ伸ばしたりひねったりとけっこうキツイ。
終わる頃には、身体がめっちゃほぐれていた。
次は食事だ。
野菜を中心としたメニューで、肉は鳥のささみだけ。水分を多くとるようにして睡眠は長めにとる。
ここでエルミナが騒いだ。
「お、お酒!! お酒は!?」
「駄目です」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
この世の終わりみたいな声を出すエルミナ。
いや、酒はダメだろ……痩せる気あるのかよ。
「アシュト様。これから毎日エルミナさんと寝室を共にしてください。お酒を飲まないように監視を」
「は、はぁ……」
「アシュトぉ~」
「悪いけど、酒はダメな」
「うぇぇぇぇーんっ!!」
確かにダイエットも大事だけど、エルミナの不摂生は健康にもよくない。
酒をがぶ飲みし、お菓子や甘い物を好きな時に好きなだけ食べ、夜更かししては酔い潰れる……そんな生活では、いつか大きな病気になってしまう。
これを機に、エルミナを矯正する。酒を禁止するのではなく適度な量で。お菓子も少なくし、運動をさせる。
「わ、わたしはお酒苦手だから。紅茶ならいいよね?」
「構いませんが、砂糖を何個も入れたりミルクをたくさん入れるのはダメですわ」
「はうっ……」
「あたしは甘い物好きだけど量はわきまえてるし、竜騎士の訓練中には食べれないしねー」
この中ではシェリーが最強だな。
俺も甘いのは食べるけど、仕事中に糖分を取るって感じだし。
あとは、おやつを食べに来たミュアちゃんたちと一緒に食べるくらいだ。
「では、美容体操と食事療法でダイエットをしていきましょう」
カレラさん、すごく張り切ってる……頑張ろう。
◇◇◇◇◇◇
十日後。
カレラさんの指導をずっと受けていたので身体がずいぶんと軽く感じた。
ミュディやシェリーの肌ツヤもよくなり、エルミナも腰回りがキュッとくびれた。
ローレライやクララベルが『私たちも参加したかった。なぜ教えないのか』と俺に詰め寄って怖い笑みを浮かべるというハプニングはあったが、ダイエットは成功したと思う。
「カレラ、ほんっとにありがとう!! みてみて、このくびれ!!」
「ええ。と、はしたないですわ!!」
エルミナは服を捲ってくびれを見せつける。それに、この十日でカレラさんはずいぶんと仲良くなった。
俺もずいぶんと身体が軽い。適度な運動と睡眠はやっぱり大事だ。
「ふふふ。これでメージュたちにも馬鹿にされないわ!! ちょっと行ってくる!!」
「あ、おい……って、行っちまった」
エルミナはダッシュで家を出て行った。
ここから後日談だが、メージュたちにくびれを自慢したエルミナは酒を解禁。今まで飲めなかった分を取り戻すため連日飲みまくり……まぁ、お察しください。
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