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信頼の失墜

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『A級召喚士の怠慢。生徒を見殺しにした生徒会長!』
『アルベロ氏語る。生徒を見殺しにせよと命令した【誰か】とは!』
『学園の在り方を問う。等級至上主義の実態!』

 こんな見出しの新聞が、S級寮の談話室に山のように積み重ねてあった。
 どれも、学園の批判ばかり。S級召喚士の擁護や、アルベロに対するファンレターも多くあった……なぜか『負けないで!』や『生徒会に屈するな!』などの意見が多かったが。
 ヨルハは新聞を放り、ため息を吐く。

「やっちゃったわね」
「な、なにがだよ。俺、本当のことを言っただけだぞ」
「まるで、あんたを見殺しにしようとした生徒と、そういう命令をした教師が『悪』になってるわ。学園に資金援助していた貴族もいくつか離れちゃったし、あなた個人あてに資金援助をしたいって貴族も出てきてる」

 記者会見の翌日の早朝なのに、どこも動きは速い。
 ヨルハはソファに座り、脚を組み替える。

「何より、この『誰か』が世間に知られたら終りね。徹底的に叩かれるし、学園で仕事なんてできない。この『誰か』に賛同していた人たちは離れるだろうし、S級召喚士が世間のヒーローになっている今、この『誰か』の見方をすることは得策じゃない。それに……生徒会長、彼女も悪役になってるわ」
「ま、俺にとってはどうでもいいけどな」
「それと、ラッシュアウト家に肩入れする貴族も増えてるわ。たった一日、数時間の会見でよくもまぁ……あなたがラッシュアウト家を大きくしてるようなものね」
「……それはおもしろくないな」
「ま、あなたやわたしに直接の影響はあまりないわ。どうせあなた、貴族の資金援助や強力なんて必要ないでしょ?」
「ああ。優秀なお姫様がいるからな」
「あら素敵。わかってるじゃない」

 ヨルハはクスっと笑った。
 再び足を組み替える……スカートが短いので、細く白い脚がよく見えた。
 アルベロは、それを見ないように言う。

「資金援助とかするなら、F級のクラスメイトたちの実家に送金してくれよ。どの子もあまり家族からいい扱いじゃなかったみたいだし……俺から、墓に花やお菓子を供えてくれって伝えてくれ」
「……わかった。伝えておくわ」

 ヨルハは微笑みつつ頷く。
 きっと約束を守ってくれる。そういう笑顔だった。

「さて。そろそろ生徒会も知った頃かな♪」
「……お前、楽しそうだな」
「ええ。まぁね~♪」

 ヨルハは、黒い笑みを浮かべていた。

 ◇◇◇◇◇◇

「なんだ、これは……!!」

 新聞を手に、エステリーゼは震えていた。
 生徒会室に届いた新聞を読むのがエステリーゼの日課だ。
 先日のアルベロの記者会見が書かれているはずなので確認しようとしたら……書かれていたのは、エステリーゼに対する酷評と学園の不満だった。
 生徒会と教師がF級を見捨てた。新聞にはそう書かれていた。

「姉上!! 新聞……」
「知っている……おのれ!!」

 ラシルドが慌てて生徒会室へ。
 他にも、数人の生徒会役員が新聞片手に生徒会室に入ってきた。
 そして、額に青筋を浮かべたオズワルドが、新聞とは別に数枚の羊皮紙を持って生徒会室へ。

「お、オズワルド先生……?」
「見ろ……学園の資金提供者がいくつか離れた。これからはS級召喚士を直接支援すると言ってな……!!」

 羊皮紙は、いくつかの大手商会と貴族からだった。
 S級召喚士を見殺しにするような生徒会や教師とは付き合えない───そんな内容だった。
 オズワルドは、テーブルに拳を叩きつけた。

「おのれ!! おのれおのれ!! S級め……どこまで我々を侮辱する!! A級召喚士はこの国、いや世界の宝であるぞ!!」

 その宝がS級になりつつあることを認められないオズワルド。
 A級召喚士が、S級への通過点になるのも、そう遠くない未来だった。
 オズワルドは、エステリーゼに言う。

「エステリーゼくん……彼を、アルベロ・ラッシュアウトを呼びたまえ」
「……どうされるおつもりで?」
「なぁに。個人面談だよ。生徒会長の呼び出し、そして教師の面談……彼も生徒である以上断れんだそうさ。少し調子に乗っているようだから、いろいろ話をしないとねぇ」
「ですが、奴は」
「問題ない。力では敵わないかもしれないが、ここは学園。そして奴は生徒だ。教師の私と生徒会長のきみの前では一生徒にすぎない」
「わかりました。では、放課後にでも呼び出しましょう」
「うむ、頼んだぞ」

 オズワルドは、憎々し気に微笑んだ。
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