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ラストバトル
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アルベロとキッドは、シンのいる小高い丘まで来た。
丘に不釣り合いな椅子に座るシンと、そこに跪くアポカリプス。
シンは、アルベロを見てにっこり微笑んだ。
「やっほ~♪」
「……シン・アースガルズ」
「シンでいいよ。それより、かなり強くなったね。たった百日、気の持ちようでこうも変わるなんて、やっぱり人ってすごいね」
「身体鍛えても百日ぽっちじゃ意味ないからな。だから……ジャバウォックと話した」
「……ふーん」
シンは、椅子に寄り掛かる。
足を組みかえ、アルベロを見て笑った。
「命を捨てる覚悟、だね?」
「…………」
「やめときなよ。キミはまだ若い……こんなところで死ぬなんてもったいないよ」
「だから?」
「だから、あたしと一緒に来ない? アルベロが望むことなんでもしてあげる。好きなだけ抱いていいし、欲しいものがあるならなんでも手に入れてあげる。どう?」
「いらねーよ。それに、俺はお前ほど寂しいわけじゃない?」
「……寂しい?」
「ああ。お前さ……明るく振舞ってるけど、なんとなくわかる。寂しいんだろ?」
「……寂しい、ねぇ? うーん。考えたことなかったな。話相手ならいっぱいいるし、別に寂しい……かな? うーん」
シンは考え込んでしまった。
なんとなく、アルベロにはわかった。
シンは、一人ぼっちだ。いくら召喚獣を人の姿に似せようと、ヒトの真似事をさせようと……それは、人ではない。
アルベロだって理解している。召喚獣は召喚獣、人は人だ。
だからこそ、手を取りあえる。でも、シンはそれがない。利用するだけのモノにしか見ていない。
「お前の左手……クイーン・オブ・ハート。そこに、クイーンの意識はあるか?」
「そんなのないよ。昔、ジャバウォックにやられて消えちゃった」
「そうか……でも、ジャバウォックは言ってた。クイーンの意識はまだ残ってるって」
「え……?」
「お前、その左手、道具としか見てないもんな。本当の意味で、クイーンに話しかけたことあるか?」
「そんなの当たり前じゃん。あたしは、クイーンを愛してるし! クイーンだってあたしを」
「じゃあ……なんでクイーンの意志は出てこない?」
「そ、それは……」
シンは答えられなかった。
俯き、首を傾げ、腕をプラプラさせる。まるで子供のように。
真に通じ合っていれば、クイーンの声は聞こえるはず。アルベロとモグが通じあっているように、シンとクイーンも話し合えるはずだ。
それができない今が、最大にして最後のチャンス。
シンから、クイーンを引き剥がす。
やり方は、一つだけある。
「シン・アースガルズ……お前の中にあるクイーンを引きずり出す。そして……」
引き剝がす。
アルベロは、右腕を構える。
すると……跪いていたアポカリプスが立ちあがった。
その眼は、アルベロに向けられている。
だが……ずっと黙っていたキッドが前に出る。
「そこの雑魚、相手してやるよ」
「……主。ゴミの始末をしてきます」
「任せるね。あたし、アルベロともっと話したくなっちゃった」
アポカリプスは一礼した。
すると、その肉体が変化していく。
キラキラした鋼のような皮膚が盛り上がり、まるで鎧のようになる。顔も兜を模したような形になり、手には大きな剣が握られた。
召喚獣としての姿。だが、これまでのような巨大化とは違い、肉が詰め込まれ精錬されたようなデザインだった。
キッドは軽く口笛を吹く。
「この子、ベルゼブブより……ううん、あたしが召喚した中で最強の力を持ってるよ。キミ程度じゃ挽肉にされて終わりかもね」
「クソボケか? オレがこんな雑魚にやられるわけねーだろ」
キッドはアルベロの肩をパシッと叩く。
「死んだら殺す」
「お前もな。キッド」
「フン……」
キッドは笑い、アルベロは左手の拳をキッドへ突き付けた。
キッドは、右の拳をアルベロの拳にぶつける。
「終わったら……一杯付き合えよ」
「ああ。もうすぐ十六歳だし、いくらでも付き合ってやる」
「へ……生意気なガキ。じゃ、後でな。アルベロ」
「おま、名前」
キッドは飛び出し、左手をアポカリプスに向けた。
「穿て───『ヘッズマン』!!」
「ゴミを消去する」
弾丸が発射され、アポカリプスは弾丸を躱し───そのまま二人は丘の奥に消えて行った。
残されたのは、シンとアルベロ。
「じゃ、始めよっか」
シンは立ち上がり、座っていた椅子を異空間に収納する。
左手をアルベロに向け、アルベロも右手を向ける。
「献上せよ、『クイーン・オブ・ハート』」
「奪え、『ジャバウォック』」
男と女、黒と白、赤と青、王と女王、右と左。
どこまでも正反対な二人は、唯一同じである金色の瞳で互いを見つめた。
「アルベロ、後悔するといいよ。あたしに喧嘩を売ったことをね」
「お前こそ後悔しろ……俺は、絶対に負けない!!」
最終決戦、開始。
丘に不釣り合いな椅子に座るシンと、そこに跪くアポカリプス。
シンは、アルベロを見てにっこり微笑んだ。
「やっほ~♪」
「……シン・アースガルズ」
「シンでいいよ。それより、かなり強くなったね。たった百日、気の持ちようでこうも変わるなんて、やっぱり人ってすごいね」
「身体鍛えても百日ぽっちじゃ意味ないからな。だから……ジャバウォックと話した」
「……ふーん」
シンは、椅子に寄り掛かる。
足を組みかえ、アルベロを見て笑った。
「命を捨てる覚悟、だね?」
「…………」
「やめときなよ。キミはまだ若い……こんなところで死ぬなんてもったいないよ」
「だから?」
「だから、あたしと一緒に来ない? アルベロが望むことなんでもしてあげる。好きなだけ抱いていいし、欲しいものがあるならなんでも手に入れてあげる。どう?」
「いらねーよ。それに、俺はお前ほど寂しいわけじゃない?」
「……寂しい?」
「ああ。お前さ……明るく振舞ってるけど、なんとなくわかる。寂しいんだろ?」
「……寂しい、ねぇ? うーん。考えたことなかったな。話相手ならいっぱいいるし、別に寂しい……かな? うーん」
シンは考え込んでしまった。
なんとなく、アルベロにはわかった。
シンは、一人ぼっちだ。いくら召喚獣を人の姿に似せようと、ヒトの真似事をさせようと……それは、人ではない。
アルベロだって理解している。召喚獣は召喚獣、人は人だ。
だからこそ、手を取りあえる。でも、シンはそれがない。利用するだけのモノにしか見ていない。
「お前の左手……クイーン・オブ・ハート。そこに、クイーンの意識はあるか?」
「そんなのないよ。昔、ジャバウォックにやられて消えちゃった」
「そうか……でも、ジャバウォックは言ってた。クイーンの意識はまだ残ってるって」
「え……?」
「お前、その左手、道具としか見てないもんな。本当の意味で、クイーンに話しかけたことあるか?」
「そんなの当たり前じゃん。あたしは、クイーンを愛してるし! クイーンだってあたしを」
「じゃあ……なんでクイーンの意志は出てこない?」
「そ、それは……」
シンは答えられなかった。
俯き、首を傾げ、腕をプラプラさせる。まるで子供のように。
真に通じ合っていれば、クイーンの声は聞こえるはず。アルベロとモグが通じあっているように、シンとクイーンも話し合えるはずだ。
それができない今が、最大にして最後のチャンス。
シンから、クイーンを引き剥がす。
やり方は、一つだけある。
「シン・アースガルズ……お前の中にあるクイーンを引きずり出す。そして……」
引き剝がす。
アルベロは、右腕を構える。
すると……跪いていたアポカリプスが立ちあがった。
その眼は、アルベロに向けられている。
だが……ずっと黙っていたキッドが前に出る。
「そこの雑魚、相手してやるよ」
「……主。ゴミの始末をしてきます」
「任せるね。あたし、アルベロともっと話したくなっちゃった」
アポカリプスは一礼した。
すると、その肉体が変化していく。
キラキラした鋼のような皮膚が盛り上がり、まるで鎧のようになる。顔も兜を模したような形になり、手には大きな剣が握られた。
召喚獣としての姿。だが、これまでのような巨大化とは違い、肉が詰め込まれ精錬されたようなデザインだった。
キッドは軽く口笛を吹く。
「この子、ベルゼブブより……ううん、あたしが召喚した中で最強の力を持ってるよ。キミ程度じゃ挽肉にされて終わりかもね」
「クソボケか? オレがこんな雑魚にやられるわけねーだろ」
キッドはアルベロの肩をパシッと叩く。
「死んだら殺す」
「お前もな。キッド」
「フン……」
キッドは笑い、アルベロは左手の拳をキッドへ突き付けた。
キッドは、右の拳をアルベロの拳にぶつける。
「終わったら……一杯付き合えよ」
「ああ。もうすぐ十六歳だし、いくらでも付き合ってやる」
「へ……生意気なガキ。じゃ、後でな。アルベロ」
「おま、名前」
キッドは飛び出し、左手をアポカリプスに向けた。
「穿て───『ヘッズマン』!!」
「ゴミを消去する」
弾丸が発射され、アポカリプスは弾丸を躱し───そのまま二人は丘の奥に消えて行った。
残されたのは、シンとアルベロ。
「じゃ、始めよっか」
シンは立ち上がり、座っていた椅子を異空間に収納する。
左手をアルベロに向け、アルベロも右手を向ける。
「献上せよ、『クイーン・オブ・ハート』」
「奪え、『ジャバウォック』」
男と女、黒と白、赤と青、王と女王、右と左。
どこまでも正反対な二人は、唯一同じである金色の瞳で互いを見つめた。
「アルベロ、後悔するといいよ。あたしに喧嘩を売ったことをね」
「お前こそ後悔しろ……俺は、絶対に負けない!!」
最終決戦、開始。
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