短編官能集

山代裕春

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それとこれ…その後

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妻「んぅ…」
目が覚めたら一人、いつものことだ。
妻「…」
綺麗に拭かれた身体、仕事柄癖なのだろう。
妻「ん♡…」
余韻が酷い、あれだけされれば当然か…
妻「…」
奥が疼く、自身の欲求の深さを笑われている気分だ。
妻「ぁ…」
夫の羽織が落ちている、普段そんなミスしないのに…
妻「……」
徐に手に取り羽織ると重く錆びた香りが私を襲う。
妻「…」
私はこの香りが大嫌いだ。
妻「お前様…」

ガチャ…

不意に開く扉、そこには普段通りの夫がいた。
夫「何してんの?」
妻「・・・」
言葉が出てこない、顔が熱い。
夫「俺の羽織…」
妻「え、あ…いや…あ、あの」
慌てる私に夫は笑う、久しぶりに見た笑顔に驚いてしまった。
夫「可愛いことしちゃってぇ…」
妻「…」
夫は私に近づきベットに座ると、羽織を取り上げ床に捨てる。
夫「寝ぼけて忘れてたんだなぁ…ごめんね?」
妻「いえ…」
多分嘘だ。
夫「身体は?辛くない?」
心配そうに見る夫、不意に甘い香りが漂う。
妻「…」
夫「?」
この人また…
妻「また私のシャンプー使いましたね?」
夫「え、ダメだった?」
妻「何度目ですか、いい加減覚えてください!」
夫「えぇえーだってぇ愛しい妻の香り嗅ぎながら仕事したぁい」
妻「変態!」
とは言いつつ二度と使うなとは言えない。
夫「…元気になってきたね」
妻「…」
夫は床に落とした羽織を手に取り立ちあがろうとする。
夫「じゃあね」

ガシッ…

妻「…」
夫「どした?眠れない?」
私は素直じゃない、だからこそ夫は意地悪に聞く。
妻「……ここにいて…」
夫「…」
俺は素直じゃない、だからこそ妻は言わせる。
夫「……分かった…」
再度羽織を床に捨て妻とベットに横たわる、綺麗な黒髪をそっと撫で柔らかく折れそうな身体を抱き寄せる。
妻(くるしい…)
甘く柔らかい香り…俺はこの香りが愛しい。
夫「すみ…」
妻が顔を上げる、頬を撫でそっと唇にキスをした。
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