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本編

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「それで、トオルはどんな事が得意なんだ?」

俺の頭を撫で続けながらアレンさんが聞いてくる。

あ、そういえば、仕事を紹介してもらうって話だった…。

「えっと、得意かは、わからないんですけど一応前は料理を作る仕事をしてました。」

「料理?トオル、料理作れるのか?」

アレンさんは、驚いたように撫でるのを辞めて顔を覗き込んできた。

「まぁ、一応…」

散々才能がないと言われ続けたけど…
でも、やっぱり自分が作った料理を食べて笑顔になってくれるのは嬉しいと思う。


「凄いじゃないか!
騎士団の野営とかでたまに料理をしてる所を見るが酷いありさまだぞ?
今度俺にも作ってくれ!」

素直に褒められたことが嬉しくて食い気味に
「もちろん!」と即答してしまった。

それを聞いてアレンさんは、嬉しそうにクスクス笑うので恥ずかしくなってしまい

「野菜たっぷり使いますね!」
と照れ隠しで付け足して置いた。

それを聞いてアレンさんの笑みが凍りついたのが可笑しくて今度は俺が笑ってしまった。


「あ、そういえば…」とアレンさんが自分のカバンを漁り始める。

なんだろう?と思って見ていると
アレンさんの小さなカバンから明らかに物理法則を無視したように俺のリュックサックが出てきた。
まるで某青い猫型ロボットがポケットからドアをだしているようで唖然としてしまう。

「このカバン?トオルのだよな?
倒れていたところに落ちてたから拾って来たんだ。」
と言いながらリュックサックを渡してくれる。

小説とかに出てくるアイテムバックってやつだろうか?
とりあえずお礼をいいながら受け取って中身を確認する。

父のレシピ帳や、仕事道具の包丁とケースなどが入っていた。

父から貰った愛情の証。
無くしたと思っていたため、レシピ帳を抱きしめながらついつい涙ぐんでしまう。

「トオル?」
いきなり泣き出した俺にアレンさんはびっくりしたのか優しく背中をさすってくれた。

「大事な物なんです。もう見れないと思ってたから……アレン、荷物を持って来てくれてありがとうございます…。」


「そうだったのか……。よかった。そっちの布で巻いてあるやつはなんだ?」


言われて包丁ケースを広げて見せる。
就職して1年目の誕生日に師匠ことシェフが買ってくれたものだった。

お前も料理人なら自分の道具を大事に使いこなしてみろと言われ、5本のセットをプレゼントしてくれた。

あ、そうか、研がないとと思って持って帰って来てたんだ。

よかった…
もうずっと愛用している包丁達もこの世界に持って来れたことに安堵した。


「これは、師匠に貰った包丁です。
凄く厳しい人だったけど凄くよくしてくれたんです。。」

「手に取ってみてもいいか?」

「もちろんですよ。」

アレンさんは、牛刀をケースから抜き出して手に取る。

「丁寧に手入れが行き届いてる包丁だな。
凄く大事にされているのがわかる…」

「そうかな……
そう言って貰えると頑張って手入れをしたかいがあります。」




「トオル、仕事のほうは心当たりがあるから明日聞いてみる。
これだけ道具を大事に出来るんだ。
きっと、腕は確かだろう。

とりあえず、今日は、もう休め。
ウトウトしてきてるだろ?」

アレンさんは、そう言うと俺から荷物を取り上げてお姫様抱っこで俺をベッドまで運んでしまう。

またお姫様抱っこされてしまった…
そんなに軽々と持ち上げられるのは男としてちょっとショックだな…

でも、実際泣き疲れていたため、すぐに眠気が襲ってくる。

しかも、さっきみたいにアレンさんが頭を撫でてくるせいで眠気が加速してしまいすぐ眠りに落ちてしまった。







コーヒーのいい香りに誘われて、目を覚ますと外は明るくなっていた。

テーブルの方でアレンさんがコーヒーを飲んでた。
アレンさんは、俺が目を覚ましたのに気づいて手を止めてこちらに歩いて来る。

「トオル、おはよう。
よく眠れたみたいだね?
食べれそうなら朝食を持って来るが?」

優しく俺の頭を撫でながら聞いてくれる。

アレンさん、俺の事を凄い子供扱いしてないか?
でも、兄がいたらこんな感じだろうか?
ふとそんなことを考えこんなにしっかりしていそうなイケメンが実は野菜が嫌いで子供っぽいことを思い出してクスクス笑ってしまう。

「アレンさん、おはようございます。」

あ、やばい、ついついさんづけで読んでしまった。

「なんだ?もう呼び捨てで呼んでくれないのか?」

ちょっと拗ねたような、さみしそうな顔でそんなことを言ってくる。

「あ、すみません、ついつい……
アレン、おはようございます。」

慌てて言い直す。

「出来れば敬語も無しだと嬉しいんだけどな…
壁を感じて…
何故だから分からないがトオルとはもっと仲良くなりたいと思う。」


最後の方は声が小さくて聞き取れなかった。

「え?」

聞き返して見たが教えて貰えなかった。






♦♦♦♦♦

拙い文章ですが、読んでいただきありがとうございます。

気ままに書いておりますので
誤字、脱字、おかしな日本語等あると思います。
ご指摘ありましたらよろしくお願いいたします。
また、感想、要望等もお待ちしております。
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