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別に今までだって乱暴にされたわけではない。
初夜だって雑だったけれど、彼の言うように急いで事を終わらせようとしていたのだとしたら、ああなるのかもしれない。
アーファ様は私の肯定を受け止めてから、緊張した面持ちで私を寝台に組み敷く。
顔の横に手をついて私を見下ろすその表情に思わず息を吞んだ。
普段は『そんなこと興味もありません』といった振る舞いをしているくせに、灰色の瞳に欲情を滾らせている。
「あ、あの……アーファ様」
鼓動が速くなって落ち着かない。
彼と身体を重ねるのは初めてではないのに、顔を見合わせると途端こんなにも緊張するものなのか。
「無理です。いまさらやめられません」
「い、いえ、そうではなくて。恥ずかしくて……」
アーファ様は頬を赤らめて、私と同じように緊張していることが見てとれた。
「脱がせてもいいですか?」
「はい……」
ナイトガウンの腰紐を引かれて、前面を大きく開かれる。露わになった胸元にひんやりとした空気が触れて、何もしていないのに身体が刺激に震えた。
「奇麗な身体ですね」
彼はそう呟いて、ついと視線を逸らす。
「……あまり見ないようにして正解だった……」
「アーファ様?」
「い、いえ、こちらの話です!」
目を逸らされるのも悲しいが、あられもない姿を見つめられるというのも恥ずかしいものだ。
アーファ様の手は下穿きに伸びて、結んであった紐を楽々と解く。背に敷かれたままになっていたガウンと共に、彼はそれらを床に放った。
「触れてもいいですか?」
「は、はい……」
素直に頷くと、アーファ様の指がそっと腰のくびれを撫でる。少し触れられただけなのに、緊張に強ばっていた身体はぴくりと過敏に反応して小さく跳ねた。
「くすぐったいですか?」
大きな手は肌を滑るように移動し、乳房を優しく揉みしだく。彼の手の中で柔らかく形を変えていくうちに、胸の先端が期待するように硬く強ばった。
「あぁっ……」
自分のものとは思えない甘い声が口から漏れた。
淫らな声音に煽られるように、彼は乳嘴に口づけて、軽く吸う。
「ひ……、そ、そんな……うそ……」
知識としては、性交時にそういうことをするとは知っていた。
胸の頂から疼痛が伝わってきて、ぎゅっと寝台の敷布を握る。次第に刺激は心地よさに変わっていく。
(痛いのか気持ちがいいのか、よく分からないわ……)
彼の舌先は胸の蕾を転がし続け、腹の奥に溜まる熱に、無意識に腰が浮いた。
「……あっ、ん……、胸ばかり、やだ」
「柔らかくて触れているだけで気持ちがいいです」
「だ、だからって……」
指と口で両方の乳房を執拗に責められて、股のあいだの疼きを誤魔化すように太ももを擦り合わせる。
アーファ様は私の変化に目ざとく気付き、恍惚とした瞳を細めさせて笑んだ。
「……かわいい……」
その甘い言葉が心を刺激し、私の興奮をさらに煽ろうとする。なんだか悔しくて視界が滲んできた。
「どうして……そんなことを言うのですか!」
甘い吐息に混じる泣きそうな声を聞いて、アーファ様は驚いたように目を見張る。
「もしかして、僕がわざと言っていると思っていますか?」
アーファ様は覆い被さるように身を寄せて、私の鼻先にまで顔を近づけた。胸元が密着し、彼の駆け足な鼓動が直に伝わってくる。
「だ、だって、そんな私の機嫌をとるようなこと言わないで!」
「そんなつもりはありません」
「私のことをそんなふうに思うはずが――」
「ペレーネ、貴女はとても可愛いです」
アーファ様は言葉尻を遮るように告げて、私のまなじりに口づけた。
頬にたくさんの接吻を降らせ、唇が触れた箇所は風呂上がりのように火照る。
(ず、ずるい人だわ……! こんなときにそんなことを言うなんて)
むしろ、こんなときだからこそ言うのだろう。
頭の中の冷静な私が『そんなものだ』と囁くが、期待に満ちた私が『本心かもしれないわ』と囁いて惑わそうとしてくる。
「ペレーネ、嫌だったら仰ってください」
彼は予防線を張るように告げて、私の腹を撫でる手を股のあいだへ伸ばす。濡れた蜜口を左右に割り開き、指をつぷりと中へ沈めた。
「あぁ……ぁっ……」
彼の指は卑猥な音を立てて中を弄び、肉襞は抵抗するようにぎゅうぎゅうと締めつける。
同時に空いた指が花芯を嬲った。
「ひっ……」
頭の中でちかちかと光が点滅する。気持ちがよくて、思考がまとまらない。
(こ、こんなの、知らない……っ)
媚びるような声が溢れそうで唇を噛むと、アーファ様は濡れた秘部から指を抜き、私の口の端に接吻をした。
「っ!?」
不思議な場所に触れられた気がして、顔を持ち上げると、壮絶な色気を漂わせたアーファ様と目が合う。
「このくらいの位置なら許してくださいますか?」
「え……?」
一瞬、何を言われているのか分からなかった。
「やはり唇に近すぎますか? 頬は……平気そうですね」
アーファ様はそう言って、頬に幾度も口づけを落とす。
(こ、この方、私が口づけを拒んだから、唇に触れないギリギリにしているのね……!)
なんとも言えない配慮の仕方に愛しさを感じて表情が緩む。
「あ、あの、アーファ様」
「はい。何でしょうか」
口づけをしたい。そう言いかけて、はたと動きが止まる。
あんなにも彼を拒んでいたくせに、今更何を言おうとしているのだろう。こんな気まぐれでは、ますます面倒な女だと思われるに違いない。
「ペレーネ?」
「なんでもありません! さ、さあ、続きをどうぞ!」
「は、はい。ええと……?」
意気込んで伝えるような言葉ではない。
顔が熱い。
気まずくてアーファ様から顔を背けると、彼は愉快そうに笑った。
「貴女が前向きに考えてくださっていて嬉しいです」
「前向き!?」
「はい。僕と身体を重ねることを、以前ほど嫌がっていないのかと思いました」
「そ、それは……、ええ、前向きに考えまして……」
「嬉しいです」
にっこりと微笑みを返されて、なんとも言えない気持ちになる。
何も考えてなどいない。ただ、彼に触れたくなっただけ。
(そんなこと、どう説明したらいいの……!?)
頭の中でぐるぐると言い訳を考えていると、アーファ様は身体を傾けて、私の首筋に唇を寄せて肌に吸い付いた。そして、膝裏に触れて大きく脚を開かせる。
しとどに濡れた秘部がさらけ出され、何度も同じことをしたはずなのに羞恥に頬が熱い。
「本当に嫌ではありませんか?」
アーファ様は再度確認するように告げて、寝間着を脱ぎ捨てた。
(あ、あら……?)
見たことがあるはずなのに、見たことがない。
彼の裸身は思っていたよりも滑らかで、引き締まっている。そして、存在を誇示するようにいきり立つ肉杭も、認知しているものよりも大きい気がした。
「あまり見られると恥ずかしいです……」
「な、なんだか、記憶しているものよりも大きいような……?」
「ペレーネが見ていたのは……中途半端に勃った状態かと……」
「えっ!?」
私はよく見もせず知らないうちに、こんな大きなものを身体に受け入れていたというのか。
喉をごくりと鳴らすと、アーファ様は困ったように眉を下げて言った。
「やめておきますか?」
「い、いいえ、少々驚いただけです!」
ぶんぶんと首を横に振ると、彼は私の頬に口づけを落とした。
「嫌だったら、いつでも仰ってください」
何度も確認するように伝えられる言葉。
私の今までの言動や振る舞いが、彼をそうさせているのだと思うと心苦しい。
「挿れますね……」
この寝台で同じ台詞を何度も聞いた。
それなのに、いつもとは異なる感情に心がずっと震えている。
アーファ様は蜜口に肉杭の先端をあてがうと、押し開くようにゆっくりと私の身体を貫いた。
「はぁ……、いつもより……絡みついてくる……」
彼はたまらずといった調子で喘ぐ。切なげに眉を寄せて、ぐっと瞼を閉じる。
容赦なく沈み込んでくるものの感覚に、以前のような不快感はない。それどころか、ぐちょぐちょに濡れそぼったそこは、喜んで彼のものを咥え込んでいる。
奥にたどり着いた肉杭は一旦動きを止めてから、ゆるゆると前後に動き始めた。
あんなにも嫌だと思っていた行為なのに、昂ぶりが肉壁を滑り、伝わる刺激が気持ちいい。
「あぁ……あっ……ぁっ!」
淫音を響かせながら小刻みに寝台は軋む。
アーファ様を見上げると、頬は上気して赤く、形のいい輪郭から汗が伝う。
いつだって、彼の余裕のない姿ばかり見ていた。それでも真っ直ぐに言葉と行動を尽くそうと努力してくれる。
「アーファ様!」
何かが胸の奥にこみ上げるような気がして、アーファ様の背に腕を伸ばし強く抱きしめた。
彼は驚いて目を瞬かせる。
「もっと……っ……して……」
お腹の深いところが気持ちいい。頭が蕩けて自分ではないみたいだ。視界が潤んで、涙がはらはらと目尻を伝った。
アーファ様の荒い息を吐き出す唇が、私の耳たぶを咥える。悪寒にも似た痺れが一気に背中を駆け抜けて、彼のものを喜んで咥えていた部位が収縮した。
「ペレーネ……」
切なげな低い声で名を呼ぶから、身もだえするような快感が腹の奥に疼いて、ぶるぶると身体が震える。
そして、彼を受け入れていた深い場所に熱い精が放たれたのを感じた。
アーファ様は私の頬に何度も接吻を降らせる。
(ああ、もっと早くに口づけをしたいと言うべきだったわ……)
そんな後悔が触れられるたびに湧くが、時間が経つほど言えなくなってしまう。
アーファ様はそんな私の心情に気付くはずもなく、繋がりを抜いて、絶頂の余韻に浸る私の身体を抱き寄せた。
「大丈夫ですか?」
彼は息を弾ませたまま怖々と訊ねてくる。
ここまでしておいて、今更何を言っているのだろう。
彼の胸元に抱き寄せられた顔を上げると、同じように私を見ていたアーファ様と目が合う。
「あの……、何か言っていただけると嬉しいのですが」
「……気持ちよくて……驚きました」
素直に答えるとなんだか恥ずかしい。火照っている頬を指でさする。
「僕も気持ちよかったです」
そんなふうに伝えられるのも恥ずかしい。
そして、彼は一瞬言葉を詰まらせたが、意を決したように言った。
「ペレーネ、いつか僕のことを好きになってください」
真剣な面持ちで伝えられた言葉が胸をひどく揺さぶる。
「アーファ様……」
「ごめんなさい、眠くなってきました……。僕が眠るまで見張っていてくださいね」
彼は冗談めかしてそう言い、吸い寄せられるように瞼を閉じた。すぐに規則正しい寝息を立てはじめる。
(疲れていただろうに、色々無理をさせてしまったわ……)
今朝は二日酔いから始まり、なぜか坑道へついてきて、峠で昼食をご一緒した。仕事も進められなかっただろうから、明日は大忙しに違いない。
彼のあどけない寝顔を見つめ、目の下の隈を指の背で撫でる。
「いつか、好きに……」
アーファ様の言葉に理由の分からない違和感を覚えたけれど、私はそれを呑み込んだ。
初夜だって雑だったけれど、彼の言うように急いで事を終わらせようとしていたのだとしたら、ああなるのかもしれない。
アーファ様は私の肯定を受け止めてから、緊張した面持ちで私を寝台に組み敷く。
顔の横に手をついて私を見下ろすその表情に思わず息を吞んだ。
普段は『そんなこと興味もありません』といった振る舞いをしているくせに、灰色の瞳に欲情を滾らせている。
「あ、あの……アーファ様」
鼓動が速くなって落ち着かない。
彼と身体を重ねるのは初めてではないのに、顔を見合わせると途端こんなにも緊張するものなのか。
「無理です。いまさらやめられません」
「い、いえ、そうではなくて。恥ずかしくて……」
アーファ様は頬を赤らめて、私と同じように緊張していることが見てとれた。
「脱がせてもいいですか?」
「はい……」
ナイトガウンの腰紐を引かれて、前面を大きく開かれる。露わになった胸元にひんやりとした空気が触れて、何もしていないのに身体が刺激に震えた。
「奇麗な身体ですね」
彼はそう呟いて、ついと視線を逸らす。
「……あまり見ないようにして正解だった……」
「アーファ様?」
「い、いえ、こちらの話です!」
目を逸らされるのも悲しいが、あられもない姿を見つめられるというのも恥ずかしいものだ。
アーファ様の手は下穿きに伸びて、結んであった紐を楽々と解く。背に敷かれたままになっていたガウンと共に、彼はそれらを床に放った。
「触れてもいいですか?」
「は、はい……」
素直に頷くと、アーファ様の指がそっと腰のくびれを撫でる。少し触れられただけなのに、緊張に強ばっていた身体はぴくりと過敏に反応して小さく跳ねた。
「くすぐったいですか?」
大きな手は肌を滑るように移動し、乳房を優しく揉みしだく。彼の手の中で柔らかく形を変えていくうちに、胸の先端が期待するように硬く強ばった。
「あぁっ……」
自分のものとは思えない甘い声が口から漏れた。
淫らな声音に煽られるように、彼は乳嘴に口づけて、軽く吸う。
「ひ……、そ、そんな……うそ……」
知識としては、性交時にそういうことをするとは知っていた。
胸の頂から疼痛が伝わってきて、ぎゅっと寝台の敷布を握る。次第に刺激は心地よさに変わっていく。
(痛いのか気持ちがいいのか、よく分からないわ……)
彼の舌先は胸の蕾を転がし続け、腹の奥に溜まる熱に、無意識に腰が浮いた。
「……あっ、ん……、胸ばかり、やだ」
「柔らかくて触れているだけで気持ちがいいです」
「だ、だからって……」
指と口で両方の乳房を執拗に責められて、股のあいだの疼きを誤魔化すように太ももを擦り合わせる。
アーファ様は私の変化に目ざとく気付き、恍惚とした瞳を細めさせて笑んだ。
「……かわいい……」
その甘い言葉が心を刺激し、私の興奮をさらに煽ろうとする。なんだか悔しくて視界が滲んできた。
「どうして……そんなことを言うのですか!」
甘い吐息に混じる泣きそうな声を聞いて、アーファ様は驚いたように目を見張る。
「もしかして、僕がわざと言っていると思っていますか?」
アーファ様は覆い被さるように身を寄せて、私の鼻先にまで顔を近づけた。胸元が密着し、彼の駆け足な鼓動が直に伝わってくる。
「だ、だって、そんな私の機嫌をとるようなこと言わないで!」
「そんなつもりはありません」
「私のことをそんなふうに思うはずが――」
「ペレーネ、貴女はとても可愛いです」
アーファ様は言葉尻を遮るように告げて、私のまなじりに口づけた。
頬にたくさんの接吻を降らせ、唇が触れた箇所は風呂上がりのように火照る。
(ず、ずるい人だわ……! こんなときにそんなことを言うなんて)
むしろ、こんなときだからこそ言うのだろう。
頭の中の冷静な私が『そんなものだ』と囁くが、期待に満ちた私が『本心かもしれないわ』と囁いて惑わそうとしてくる。
「ペレーネ、嫌だったら仰ってください」
彼は予防線を張るように告げて、私の腹を撫でる手を股のあいだへ伸ばす。濡れた蜜口を左右に割り開き、指をつぷりと中へ沈めた。
「あぁ……ぁっ……」
彼の指は卑猥な音を立てて中を弄び、肉襞は抵抗するようにぎゅうぎゅうと締めつける。
同時に空いた指が花芯を嬲った。
「ひっ……」
頭の中でちかちかと光が点滅する。気持ちがよくて、思考がまとまらない。
(こ、こんなの、知らない……っ)
媚びるような声が溢れそうで唇を噛むと、アーファ様は濡れた秘部から指を抜き、私の口の端に接吻をした。
「っ!?」
不思議な場所に触れられた気がして、顔を持ち上げると、壮絶な色気を漂わせたアーファ様と目が合う。
「このくらいの位置なら許してくださいますか?」
「え……?」
一瞬、何を言われているのか分からなかった。
「やはり唇に近すぎますか? 頬は……平気そうですね」
アーファ様はそう言って、頬に幾度も口づけを落とす。
(こ、この方、私が口づけを拒んだから、唇に触れないギリギリにしているのね……!)
なんとも言えない配慮の仕方に愛しさを感じて表情が緩む。
「あ、あの、アーファ様」
「はい。何でしょうか」
口づけをしたい。そう言いかけて、はたと動きが止まる。
あんなにも彼を拒んでいたくせに、今更何を言おうとしているのだろう。こんな気まぐれでは、ますます面倒な女だと思われるに違いない。
「ペレーネ?」
「なんでもありません! さ、さあ、続きをどうぞ!」
「は、はい。ええと……?」
意気込んで伝えるような言葉ではない。
顔が熱い。
気まずくてアーファ様から顔を背けると、彼は愉快そうに笑った。
「貴女が前向きに考えてくださっていて嬉しいです」
「前向き!?」
「はい。僕と身体を重ねることを、以前ほど嫌がっていないのかと思いました」
「そ、それは……、ええ、前向きに考えまして……」
「嬉しいです」
にっこりと微笑みを返されて、なんとも言えない気持ちになる。
何も考えてなどいない。ただ、彼に触れたくなっただけ。
(そんなこと、どう説明したらいいの……!?)
頭の中でぐるぐると言い訳を考えていると、アーファ様は身体を傾けて、私の首筋に唇を寄せて肌に吸い付いた。そして、膝裏に触れて大きく脚を開かせる。
しとどに濡れた秘部がさらけ出され、何度も同じことをしたはずなのに羞恥に頬が熱い。
「本当に嫌ではありませんか?」
アーファ様は再度確認するように告げて、寝間着を脱ぎ捨てた。
(あ、あら……?)
見たことがあるはずなのに、見たことがない。
彼の裸身は思っていたよりも滑らかで、引き締まっている。そして、存在を誇示するようにいきり立つ肉杭も、認知しているものよりも大きい気がした。
「あまり見られると恥ずかしいです……」
「な、なんだか、記憶しているものよりも大きいような……?」
「ペレーネが見ていたのは……中途半端に勃った状態かと……」
「えっ!?」
私はよく見もせず知らないうちに、こんな大きなものを身体に受け入れていたというのか。
喉をごくりと鳴らすと、アーファ様は困ったように眉を下げて言った。
「やめておきますか?」
「い、いいえ、少々驚いただけです!」
ぶんぶんと首を横に振ると、彼は私の頬に口づけを落とした。
「嫌だったら、いつでも仰ってください」
何度も確認するように伝えられる言葉。
私の今までの言動や振る舞いが、彼をそうさせているのだと思うと心苦しい。
「挿れますね……」
この寝台で同じ台詞を何度も聞いた。
それなのに、いつもとは異なる感情に心がずっと震えている。
アーファ様は蜜口に肉杭の先端をあてがうと、押し開くようにゆっくりと私の身体を貫いた。
「はぁ……、いつもより……絡みついてくる……」
彼はたまらずといった調子で喘ぐ。切なげに眉を寄せて、ぐっと瞼を閉じる。
容赦なく沈み込んでくるものの感覚に、以前のような不快感はない。それどころか、ぐちょぐちょに濡れそぼったそこは、喜んで彼のものを咥え込んでいる。
奥にたどり着いた肉杭は一旦動きを止めてから、ゆるゆると前後に動き始めた。
あんなにも嫌だと思っていた行為なのに、昂ぶりが肉壁を滑り、伝わる刺激が気持ちいい。
「あぁ……あっ……ぁっ!」
淫音を響かせながら小刻みに寝台は軋む。
アーファ様を見上げると、頬は上気して赤く、形のいい輪郭から汗が伝う。
いつだって、彼の余裕のない姿ばかり見ていた。それでも真っ直ぐに言葉と行動を尽くそうと努力してくれる。
「アーファ様!」
何かが胸の奥にこみ上げるような気がして、アーファ様の背に腕を伸ばし強く抱きしめた。
彼は驚いて目を瞬かせる。
「もっと……っ……して……」
お腹の深いところが気持ちいい。頭が蕩けて自分ではないみたいだ。視界が潤んで、涙がはらはらと目尻を伝った。
アーファ様の荒い息を吐き出す唇が、私の耳たぶを咥える。悪寒にも似た痺れが一気に背中を駆け抜けて、彼のものを喜んで咥えていた部位が収縮した。
「ペレーネ……」
切なげな低い声で名を呼ぶから、身もだえするような快感が腹の奥に疼いて、ぶるぶると身体が震える。
そして、彼を受け入れていた深い場所に熱い精が放たれたのを感じた。
アーファ様は私の頬に何度も接吻を降らせる。
(ああ、もっと早くに口づけをしたいと言うべきだったわ……)
そんな後悔が触れられるたびに湧くが、時間が経つほど言えなくなってしまう。
アーファ様はそんな私の心情に気付くはずもなく、繋がりを抜いて、絶頂の余韻に浸る私の身体を抱き寄せた。
「大丈夫ですか?」
彼は息を弾ませたまま怖々と訊ねてくる。
ここまでしておいて、今更何を言っているのだろう。
彼の胸元に抱き寄せられた顔を上げると、同じように私を見ていたアーファ様と目が合う。
「あの……、何か言っていただけると嬉しいのですが」
「……気持ちよくて……驚きました」
素直に答えるとなんだか恥ずかしい。火照っている頬を指でさする。
「僕も気持ちよかったです」
そんなふうに伝えられるのも恥ずかしい。
そして、彼は一瞬言葉を詰まらせたが、意を決したように言った。
「ペレーネ、いつか僕のことを好きになってください」
真剣な面持ちで伝えられた言葉が胸をひどく揺さぶる。
「アーファ様……」
「ごめんなさい、眠くなってきました……。僕が眠るまで見張っていてくださいね」
彼は冗談めかしてそう言い、吸い寄せられるように瞼を閉じた。すぐに規則正しい寝息を立てはじめる。
(疲れていただろうに、色々無理をさせてしまったわ……)
今朝は二日酔いから始まり、なぜか坑道へついてきて、峠で昼食をご一緒した。仕事も進められなかっただろうから、明日は大忙しに違いない。
彼のあどけない寝顔を見つめ、目の下の隈を指の背で撫でる。
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