【R18】初夜を迎えたら、夫のことを嫌いになりました

みっきー・るー

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 別に今までだって乱暴にされたわけではない。
 初夜だって雑だったけれど、彼の言うように急いで事を終わらせようとしていたのだとしたら、ああなるのかもしれない。
 アーファ様は私の肯定を受け止めてから、緊張した面持ちで私を寝台に組み敷く。
 顔の横に手をついて私を見下ろすその表情に思わず息を吞んだ。
 普段は『そんなこと興味もありません』といった振る舞いをしているくせに、灰色の瞳に欲情を滾らせている。

「あ、あの……アーファ様」

 鼓動が速くなって落ち着かない。
 彼と身体を重ねるのは初めてではないのに、顔を見合わせると途端こんなにも緊張するものなのか。

「無理です。いまさらやめられません」
「い、いえ、そうではなくて。恥ずかしくて……」

 アーファ様は頬を赤らめて、私と同じように緊張していることが見てとれた。

「脱がせてもいいですか?」
「はい……」

 ナイトガウンの腰紐を引かれて、前面を大きく開かれる。露わになった胸元にひんやりとした空気が触れて、何もしていないのに身体が刺激に震えた。

「奇麗な身体ですね」

 彼はそう呟いて、ついと視線を逸らす。

「……あまり見ないようにして正解だった……」
「アーファ様?」
「い、いえ、こちらの話です!」

 目を逸らされるのも悲しいが、あられもない姿を見つめられるというのも恥ずかしいものだ。
 アーファ様の手は下穿きに伸びて、結んであった紐を楽々と解く。背に敷かれたままになっていたガウンと共に、彼はそれらを床に放った。

「触れてもいいですか?」
「は、はい……」

 素直に頷くと、アーファ様の指がそっと腰のくびれを撫でる。少し触れられただけなのに、緊張に強ばっていた身体はぴくりと過敏に反応して小さく跳ねた。

「くすぐったいですか?」

 大きな手は肌を滑るように移動し、乳房を優しく揉みしだく。彼の手の中で柔らかく形を変えていくうちに、胸の先端が期待するように硬く強ばった。

「あぁっ……」

 自分のものとは思えない甘い声が口から漏れた。
 淫らな声音に煽られるように、彼は乳嘴に口づけて、軽く吸う。

「ひ……、そ、そんな……うそ……」

 知識としては、性交時にそういうことをするとは知っていた。
 胸の頂から疼痛が伝わってきて、ぎゅっと寝台の敷布を握る。次第に刺激は心地よさに変わっていく。

(痛いのか気持ちがいいのか、よく分からないわ……)

 彼の舌先は胸の蕾を転がし続け、腹の奥に溜まる熱に、無意識に腰が浮いた。

「……あっ、ん……、胸ばかり、やだ」
「柔らかくて触れているだけで気持ちがいいです」
「だ、だからって……」

 指と口で両方の乳房を執拗に責められて、股のあいだの疼きを誤魔化すように太ももを擦り合わせる。
 アーファ様は私の変化に目ざとく気付き、恍惚とした瞳を細めさせて笑んだ。

「……かわいい……」

 その甘い言葉が心を刺激し、私の興奮をさらに煽ろうとする。なんだか悔しくて視界が滲んできた。

「どうして……そんなことを言うのですか!」

 甘い吐息に混じる泣きそうな声を聞いて、アーファ様は驚いたように目を見張る。

「もしかして、僕がわざと言っていると思っていますか?」

 アーファ様は覆い被さるように身を寄せて、私の鼻先にまで顔を近づけた。胸元が密着し、彼の駆け足な鼓動が直に伝わってくる。

「だ、だって、そんな私の機嫌をとるようなこと言わないで!」
「そんなつもりはありません」
「私のことをそんなふうに思うはずが――」
「ペレーネ、貴女はとても可愛いです」

 アーファ様は言葉尻を遮るように告げて、私のまなじりに口づけた。
 頬にたくさんの接吻を降らせ、唇が触れた箇所は風呂上がりのように火照る。

(ず、ずるい人だわ……! こんなときにそんなことを言うなんて)

 むしろ、こんなときだからこそ言うのだろう。
 頭の中の冷静な私が『そんなものだ』と囁くが、期待に満ちた私が『本心かもしれないわ』と囁いて惑わそうとしてくる。

「ペレーネ、嫌だったら仰ってください」

 彼は予防線を張るように告げて、私の腹を撫でる手を股のあいだへ伸ばす。濡れた蜜口を左右に割り開き、指をつぷりと中へ沈めた。

「あぁ……ぁっ……」

 彼の指は卑猥な音を立てて中を弄び、肉襞は抵抗するようにぎゅうぎゅうと締めつける。
 同時に空いた指が花芯を嬲った。

「ひっ……」

 頭の中でちかちかと光が点滅する。気持ちがよくて、思考がまとまらない。

(こ、こんなの、知らない……っ)

 媚びるような声が溢れそうで唇を噛むと、アーファ様は濡れた秘部から指を抜き、私の口の端に接吻をした。

「っ!?」

 不思議な場所に触れられた気がして、顔を持ち上げると、壮絶な色気を漂わせたアーファ様と目が合う。

「このくらいの位置なら許してくださいますか?」
「え……?」

 一瞬、何を言われているのか分からなかった。

「やはり唇に近すぎますか? 頬は……平気そうですね」

 アーファ様はそう言って、頬に幾度も口づけを落とす。

(こ、この方、私が口づけを拒んだから、唇に触れないギリギリにしているのね……!)

 なんとも言えない配慮の仕方に愛しさを感じて表情が緩む。

「あ、あの、アーファ様」
「はい。何でしょうか」

 口づけをしたい。そう言いかけて、はたと動きが止まる。
 あんなにも彼を拒んでいたくせに、今更何を言おうとしているのだろう。こんな気まぐれでは、ますます面倒な女だと思われるに違いない。

「ペレーネ?」
「なんでもありません! さ、さあ、続きをどうぞ!」
「は、はい。ええと……?」

 意気込んで伝えるような言葉ではない。
 顔が熱い。
 気まずくてアーファ様から顔を背けると、彼は愉快そうに笑った。

「貴女が前向きに考えてくださっていて嬉しいです」
「前向き!?」
「はい。僕と身体を重ねることを、以前ほど嫌がっていないのかと思いました」
「そ、それは……、ええ、前向きに考えまして……」
「嬉しいです」

 にっこりと微笑みを返されて、なんとも言えない気持ちになる。
 何も考えてなどいない。ただ、彼に触れたくなっただけ。

(そんなこと、どう説明したらいいの……!?)

 頭の中でぐるぐると言い訳を考えていると、アーファ様は身体を傾けて、私の首筋に唇を寄せて肌に吸い付いた。そして、膝裏に触れて大きく脚を開かせる。
 しとどに濡れた秘部がさらけ出され、何度も同じことをしたはずなのに羞恥に頬が熱い。

「本当に嫌ではありませんか?」

 アーファ様は再度確認するように告げて、寝間着を脱ぎ捨てた。

(あ、あら……?)

 見たことがあるはずなのに、見たことがない。
 彼の裸身は思っていたよりも滑らかで、引き締まっている。そして、存在を誇示するようにいきり立つ肉杭も、認知しているものよりも大きい気がした。

「あまり見られると恥ずかしいです……」
「な、なんだか、記憶しているものよりも大きいような……?」
「ペレーネが見ていたのは……中途半端に勃った状態かと……」
「えっ!?」

 私はよく見もせず知らないうちに、こんな大きなものを身体に受け入れていたというのか。
 喉をごくりと鳴らすと、アーファ様は困ったように眉を下げて言った。

「やめておきますか?」
「い、いいえ、少々驚いただけです!」

 ぶんぶんと首を横に振ると、彼は私の頬に口づけを落とした。

「嫌だったら、いつでも仰ってください」

 何度も確認するように伝えられる言葉。
 私の今までの言動や振る舞いが、彼をそうさせているのだと思うと心苦しい。

「挿れますね……」

 この寝台で同じ台詞を何度も聞いた。
 それなのに、いつもとは異なる感情に心がずっと震えている。
 アーファ様は蜜口に肉杭の先端をあてがうと、押し開くようにゆっくりと私の身体を貫いた。

「はぁ……、いつもより……絡みついてくる……」

 彼はたまらずといった調子で喘ぐ。切なげに眉を寄せて、ぐっと瞼を閉じる。
 容赦なく沈み込んでくるものの感覚に、以前のような不快感はない。それどころか、ぐちょぐちょに濡れそぼったそこは、喜んで彼のものを咥え込んでいる。
 奥にたどり着いた肉杭は一旦動きを止めてから、ゆるゆると前後に動き始めた。
 あんなにも嫌だと思っていた行為なのに、昂ぶりが肉壁を滑り、伝わる刺激が気持ちいい。

「あぁ……あっ……ぁっ!」

 淫音を響かせながら小刻みに寝台は軋む。
 アーファ様を見上げると、頬は上気して赤く、形のいい輪郭から汗が伝う。
 いつだって、彼の余裕のない姿ばかり見ていた。それでも真っ直ぐに言葉と行動を尽くそうと努力してくれる。

「アーファ様!」

 何かが胸の奥にこみ上げるような気がして、アーファ様の背に腕を伸ばし強く抱きしめた。
 彼は驚いて目を瞬かせる。 

「もっと……っ……して……」

 お腹の深いところが気持ちいい。頭が蕩けて自分ではないみたいだ。視界が潤んで、涙がはらはらと目尻を伝った。
 アーファ様の荒い息を吐き出す唇が、私の耳たぶを咥える。悪寒にも似た痺れが一気に背中を駆け抜けて、彼のものを喜んで咥えていた部位が収縮した。

「ペレーネ……」

 切なげな低い声で名を呼ぶから、身もだえするような快感が腹の奥に疼いて、ぶるぶると身体が震える。
 そして、彼を受け入れていた深い場所に熱い精が放たれたのを感じた。
 アーファ様は私の頬に何度も接吻を降らせる。

(ああ、もっと早くに口づけをしたいと言うべきだったわ……)

 そんな後悔が触れられるたびに湧くが、時間が経つほど言えなくなってしまう。
 アーファ様はそんな私の心情に気付くはずもなく、繋がりを抜いて、絶頂の余韻に浸る私の身体を抱き寄せた。

「大丈夫ですか?」

 彼は息を弾ませたまま怖々と訊ねてくる。
 ここまでしておいて、今更何を言っているのだろう。
 彼の胸元に抱き寄せられた顔を上げると、同じように私を見ていたアーファ様と目が合う。

「あの……、何か言っていただけると嬉しいのですが」
「……気持ちよくて……驚きました」

 素直に答えるとなんだか恥ずかしい。火照っている頬を指でさする。

「僕も気持ちよかったです」

 そんなふうに伝えられるのも恥ずかしい。
 そして、彼は一瞬言葉を詰まらせたが、意を決したように言った。

「ペレーネ、いつか僕のことを好きになってください」

 真剣な面持ちで伝えられた言葉が胸をひどく揺さぶる。

「アーファ様……」
「ごめんなさい、眠くなってきました……。僕が眠るまで見張っていてくださいね」

 彼は冗談めかしてそう言い、吸い寄せられるように瞼を閉じた。すぐに規則正しい寝息を立てはじめる。

(疲れていただろうに、色々無理をさせてしまったわ……)

 今朝は二日酔いから始まり、なぜか坑道へついてきて、峠で昼食をご一緒した。仕事も進められなかっただろうから、明日は大忙しに違いない。
 彼のあどけない寝顔を見つめ、目の下の隈を指の背で撫でる。

「いつか、好きに……」

 アーファ様の言葉に理由の分からない違和感を覚えたけれど、私はそれを呑み込んだ。
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