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10~カーン視点~
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「ねぇ、貴方もしかしてリューク?」
始まりは前世の名をこっそりと言われたこと。その時感じたのは言われた人物に対しての驚きとやはりそうだったのかという納得感。それとまた会えたことの喜び。
「はい、姉さん……は失礼ですかね」
「ふふ、大丈夫よ。ここにいる使用人たちはみんな同じだから」
「え?」
私が姉さんと言った人物はいたずらが成功したとばかりにくすくす笑っていた。使用人たちもまた微笑ましそうにしていて、相変わらず前世の姉はすごいなと思う。昔から行動力だけは人一倍ある人だったから。
「それでね、リューク………いえ、カーン宰相……貴方に頼みがあるの」
その行動力は暴走するトラック並で、それを止められないことを知った私は頷くしかなく、姉さんを再び死なせないようにあらゆる自殺未遂なる提案をした。これが姉さんの望む幸せの結果に繋がるのだと言われて。
姉さんが言うには、ここは前世でいう本の世界で、姉さんは死ぬ運命にあるらしい。そしてどうあがいても今のところ結果は本と同じ道筋にいっているようで、姉さんはあえてそれに乗ることで本にはなかった未来を作り出そうとしているようだった。
本来死ぬはずの場面で死ななければ本は書き変わるのでは?と。
でもそれをしなくともここから死んだことにして逃げ出せばそんなことにはならないはずで、今から逃げ出すなら手伝うと最初に提案しなかったわけではない。しかしその提案に姉さんは首を横にふった。
「私、あの人を愛してるのよ」
それはそれは幸せそうに笑う元姉の今の姿にそれ以上私は何も言えなかった。
前世で姉は夢の愛ある結婚を叶えずして早死にしてしまったから。今まさにそれを叶えようとしているからこそ本の道筋に逆らえないのだと。
「…………姉さんが………皇后様が望むままに」
姉さんの言う場面で、自殺が未遂に終わらなければ皇后様は姉さんの言うように本の道筋を覆せずに終わりを告げる。だからこそ自殺に見えて尚且つ死なないギリギリはどこだと陛下の見えないところで医学などを学び調べた。
姉も………いや、皇后様も陛下の仕事を手伝い出すようになりそれを理由につけて合間をぬって一緒に調べてくれたものの失敗すれば………なんて内心恐れながら陛下が本通りに不貞を働かないようにと無駄なことを祈らない日はなかった。
結局人質になるお姫様と本の道筋通り皇后様を嫉妬させ一人占めしたいがためにクズな行いをするわけだが。そのせいで最愛の人を失うことになるというのに。本来なら。
皇后様は私が死なせやしない。でもまず本当なら自殺なんて馬鹿げたことはやめてほしい。だが、そうしないと陛下は不貞をやめず姉さんの望む未来は掴めない。
「ふふ、私が描く未来では陛下が私だけを見て愛してくれるの……私がいないと仕事ひとつできないなんて可愛いでしょう?」
そんな未来になるとは限らないのに皇后様はそれを信じて疑わないのだからもはや止めようとすれば自ら下手に自殺して本当に死んでしまうかもしれない。だからこそ私は姉の思うままに動く以外最初から選択肢はなかった。
姉が愛に狂うほど執着するのは前世から同じこと。
「そうですね……」
こうなると陛下が不貞をはからずともいずれ理由をつけて同じようなことを皇后様はしていたような気がする。本当に同情すべきはどちらか………私は今でもわからない。
始まりは前世の名をこっそりと言われたこと。その時感じたのは言われた人物に対しての驚きとやはりそうだったのかという納得感。それとまた会えたことの喜び。
「はい、姉さん……は失礼ですかね」
「ふふ、大丈夫よ。ここにいる使用人たちはみんな同じだから」
「え?」
私が姉さんと言った人物はいたずらが成功したとばかりにくすくす笑っていた。使用人たちもまた微笑ましそうにしていて、相変わらず前世の姉はすごいなと思う。昔から行動力だけは人一倍ある人だったから。
「それでね、リューク………いえ、カーン宰相……貴方に頼みがあるの」
その行動力は暴走するトラック並で、それを止められないことを知った私は頷くしかなく、姉さんを再び死なせないようにあらゆる自殺未遂なる提案をした。これが姉さんの望む幸せの結果に繋がるのだと言われて。
姉さんが言うには、ここは前世でいう本の世界で、姉さんは死ぬ運命にあるらしい。そしてどうあがいても今のところ結果は本と同じ道筋にいっているようで、姉さんはあえてそれに乗ることで本にはなかった未来を作り出そうとしているようだった。
本来死ぬはずの場面で死ななければ本は書き変わるのでは?と。
でもそれをしなくともここから死んだことにして逃げ出せばそんなことにはならないはずで、今から逃げ出すなら手伝うと最初に提案しなかったわけではない。しかしその提案に姉さんは首を横にふった。
「私、あの人を愛してるのよ」
それはそれは幸せそうに笑う元姉の今の姿にそれ以上私は何も言えなかった。
前世で姉は夢の愛ある結婚を叶えずして早死にしてしまったから。今まさにそれを叶えようとしているからこそ本の道筋に逆らえないのだと。
「…………姉さんが………皇后様が望むままに」
姉さんの言う場面で、自殺が未遂に終わらなければ皇后様は姉さんの言うように本の道筋を覆せずに終わりを告げる。だからこそ自殺に見えて尚且つ死なないギリギリはどこだと陛下の見えないところで医学などを学び調べた。
姉も………いや、皇后様も陛下の仕事を手伝い出すようになりそれを理由につけて合間をぬって一緒に調べてくれたものの失敗すれば………なんて内心恐れながら陛下が本通りに不貞を働かないようにと無駄なことを祈らない日はなかった。
結局人質になるお姫様と本の道筋通り皇后様を嫉妬させ一人占めしたいがためにクズな行いをするわけだが。そのせいで最愛の人を失うことになるというのに。本来なら。
皇后様は私が死なせやしない。でもまず本当なら自殺なんて馬鹿げたことはやめてほしい。だが、そうしないと陛下は不貞をやめず姉さんの望む未来は掴めない。
「ふふ、私が描く未来では陛下が私だけを見て愛してくれるの……私がいないと仕事ひとつできないなんて可愛いでしょう?」
そんな未来になるとは限らないのに皇后様はそれを信じて疑わないのだからもはや止めようとすれば自ら下手に自殺して本当に死んでしまうかもしれない。だからこそ私は姉の思うままに動く以外最初から選択肢はなかった。
姉が愛に狂うほど執着するのは前世から同じこと。
「そうですね……」
こうなると陛下が不貞をはからずともいずれ理由をつけて同じようなことを皇后様はしていたような気がする。本当に同情すべきはどちらか………私は今でもわからない。
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