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本編(完結)

前世の記憶

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ラピス国には第一王子であるレウル・ラピスと第二王子であるクウリ・ラピス二人の王子がいる。二人の仲は決していいと言えず、優秀であるレウルと比べられてきた残念ながらやればできるのはできるだけの凡才でしかないクウリは幼い頃からレウルに対して対抗心を燃やしていた。

今日はただレウルの持つ剣の方が重いと知り、自分だって剣を持つくらいと周りの静止を聞かず飛び出して持とうとしたクウリが挑戦した結果持ち上げたものの重さに耐え切れず後ろに転け、地面に頭を打ち付け意識を失ったのが昨日のこと。

今クウリは朝早くに目を覚まして気づいた侍女が慌てて部屋から出ていったのを確認しつつぼーっとしていた。ちなみにクウリと言って名前を出したが、クウリとは俺である。

「クウリ?俺、クウリじゃん!」

ようやく状況が理解できたとばかりにはっとする俺。そう俺は間違いなくクウリであり、兄はレウルであり、ここはラピス国であった。

何故再確認したのか?それは意識を失ったとたん前世の記憶が流れ込んできたからである。全部が全部というわけではないが、一番はっきりとした記憶がシスコンであった俺が妹としていた乙女ゲーム『君と共に』略してキミトモというゲームの記憶。

間違いなく今、そのゲームと酷似した世界と人物がいることに頭を抱える……こともなくただもう妹に会えないと涙が出るくらいにはここが現実だと理解している自分がいた。

「頭、痛むの」

そんな中涙を流す自分に声をかけてきたのは前世を思い出す前から兄と認識しているレウルであり、ゲームで何度も見たとなりうる存在である。

2歳年上であるレウルはできないことがないくらいに優秀だからこそゲーム説明で幼い頃から弟クウリに嫌われていたのを理解しているとあった。それでもクウリの対抗心に度々時間を作って付き合ってあげていたというのだから悪役として犯罪に手を染めてしまう人物といえど、弟に対して優しくあろうとはしていたのだろう。それに……いや、まだこの話はいいか。

実際今も兄レウルに心配されているのがわかる。

「だい、じょうぶ」

「! でも……涙が」

「とまら、なくて」

返事を返せば普通に返ってきた言葉に驚いた様子の兄。まあそうだろう。いつもならどっかに行ってしまえとばかりの拒絶か自分をバカにしているのかと自虐の言葉で返していたのだから。ちなみに前世の記憶を思い出したからといって今までの記憶がなくなったわけではない。

ともあれ実際前世の記憶思い出して冷静になれば普通にいい兄じゃないか?と思う。でもこれが犯罪に手を染めて悪役の道を進んでヒロインと攻略対象たちによって破滅するんだよなぁ。

ちなみにクウリである俺は攻略対象のひとりである。
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