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第237話 時間稼ぎ
しおりを挟む──バタバタバタと、エルルカは片手で三人を鏡餅のように担ぎ上げて運んできた。よく担いできたな?
「フォルタニア、こいつらに〝ハイポーション〟を飲ませなさい。回復すれば戦力になるわ」
と、エルルカは〝アイテムストレージ〟から取り出した〝ハイポーション〟を3つフォルタニアに渡す。
その三名とは〝星艦〟〝雷光〟〝剣鬼〟だ。
「は、はい! 直ぐに!」
フォルタニアはアルタイルにポーションを飲まそうとするが、瞬間、ポーションの容器が割れる。
「不粋な真似はしないでいただきたい、死死死……」
シリュウが撃ってきたのだ『小さなポーションの容器を的確に撃ち抜けるとは……』と、フォルタニアは小さく息を呑んだ。
「オイオイ、お前の相手はこっちだぜ? 随分、余裕ぶっこいてくれんじゃねぇか?」
銃弾一発分、時間にして1秒にも満たない時間だが、それでも俺から目を放したシリュウを、俺はここぞとばかりに猛追する──
まずは魔力を込めた剣を喉元目掛けて振るう。だが、シリュウの双剣で防がれるが、そのまま剣を上に斬り上げ、双剣を弾く──そうしてできた、ガラ空きの懐に潜り込み、くるりと回りながら俺は回し蹴りをドン! っと、シリュウの胴体にお見舞いする。
「ガハッ!」
ビュン、ドンッ! と、勢いよく吹き飛んでいく。
数秒後、砂埃の中から、声が上がる。
「余所見の代償は随分と高く付きましたね、いやはや、これ程のダメージはどれぐらいぶりだろうか」
血を吐きながらも、直ぐ様に起き上がって来るシリュウはまだ余裕そうだ。つーか、気絶した〝剣鬼〟の時より強めに蹴ったんだぞ?
「──エルルカ!! 1分、任せられるか?」
「シリュウ相手に1分ね、いいわ、任せなさい」
「死死、私に背中を向けますか?」
「ああ、だが、油断はしねぇぜ?」
次の瞬間、俺は強く魔力を込めた拳を地面に叩きつける!!
──そうして俺は王宮の地面に大きなクレーターを作り、近くにいた者たちの足場を奪う。
「──なっ!?」
これには不意をつかれ、驚いた様子だ。
「じゃあ、時間稼ぎ頼むぜ! エルルカ!」
「あら、素敵。任せなさいな」
俺は急ぎフォルタニアの元へ向かう。
「おい、ドM王子! 出番だ! 1分間だ──〝魔王信仰〟からの攻撃の盾になれ! 死ぬのは許さん、生きていりゃ、1分後に怪我は直ぐに治してやる!!」
着くや否や、俺はドM王子に話しかける。
「な、なんだと!! いいのか! あいや分かった! 喜んで貴様の泥水にまみれた盾となろう!」
燃えるドM王子に、王女とフォルタニアは引き気味の視線を向ける。多分だが……それご褒美だぞ?
「俺のじゃねぇよ。王女とフォルタニアの盾だ」
……後、泥水にまみれろとは言ってない。
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