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導入

4.とうとう女王に初めて会うが_?(1)

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 ここ、王都ロウサは大きく二つの区画に分かれている。

 一つ目は平民達が住む下級街、二つ目は貴族達が住む上級街だ。上級街にはこの国の大半の貴族達が暮らしている。
 そして、その上級街のさらに奥へと進むとこの国の中心_ロウサ城がある。ロウサ城には貴族の中でも入城できる者は限られている。城の中にはありとあらゆる財宝が眠っており、王族と貴族達が年中絢爛豪華な生活を送っているらしい。
 そんな、この国の者なら誰もが一度は入城する事を夢見る城の前にエラは立っていた。
 彼女は、ダイヤモンドやピンクトルマンの宝石が散りばめられた薄桃色のドレスに身を包み、艶のある黒い髪に添えるように花の髪飾りを身につけている。特段目立った格好をしている訳ではないが、それでも咲いたばかりの薔薇のような艶やかさがあった。
 ロウサ城は本来ならば、下級貴族では到底入る事を許されない場所である。しかし、お世話係になってからというものエラは事ある毎に城に出入りをしていた。そして、今もまた、彼女は今夜行われるダンスパーティーに参加するために城の前に立っていた。城は外から見てもエラの家の何倍あるか目算することができないくらいに大きい。特に中央の時計塔は十分に距離をとって眺めても首が痛くなる。
 これほど大規模な城であるにも関わらず門兵は一人も見当たらない。
 代わりに一匹の猫が門の前に横たわっていた。猫は年老いており、目が白っぽい。どう見ても野良猫が勝手に侵入して眠っているように見える。
 エラは猫に近づく。すると、猫はこちらの存在に気づいたのかキョロキョロとあたりを見渡すが、なかなかエラの方を見ない。目が悪いのだ。

「『マカロンと、紅茶を一杯』。」

「んぁぁ、入って良し。」

 エラが話しかけると猫は今度こそ方向を理解し、そして、喋った。
 この猫はただの野良猫ではなく、門番であった。エラは詳しくないが魔法で召喚された魔獣らしい。『マカロンと、紅茶を一杯』というのは門を開けてもらうときの合言葉だ。姫によると、一見ただの老衰している猫だが、侵入者が近づくと恐ろしい化け猫に変わるらしい。エラは信じられなかったが、門に兵が一切いないのは猫の防犯能力への信頼の表れであるのではないかとも思った。
 猫は重々しいしわがれた声で一声鳴くと、ぎいぃっと音が鳴り響いた。童話の世界の巨人が出てくるのではないかと思えるほど巨大な門がゆっくりと開いた。
 門が完全に開き、エラはついに城の中に入る。
 足を踏み入れると、そこは城内_エラの家の何倍もの広い建物の中で、視界いっぱいに華々しい内装が広がる__







_____わけではない。
 
 そこは、城ではない。
 城の一部____城の門に過ぎなかった。
 門を抜けるともうそこには


 そして、眼前に広がるのは____巨大な、街!

 城の門を抜けると、外からでは見えない幻の街があるのだ!
 これこそがロウサ城の本当の姿だった。
 城の外からは街が見えないように魔法がかけられている。だが、実際はロウサ城というのは、王様達が暮らすお城ではない。街なのだ。この街の奥に一際高い塔が建っている。それが本物の王家の居城なのである。

 街には上級貴族の住居や黄金の像が無数に立ち並んでいる。今は空が青と紅と紫のグラデーションをなしており、水路を流れる水は静かな夕日の光をチラチラと反射して輝いている。そこかしこには白薔薇が咲き乱れているが、今は西日がその白い花びらを赤く染め上げていた。上級貴族たちが住むための背の高い豪邸が建っている他、お菓子や、ドレスなどの高級そうな店がずらりと並んでいる。道ゆく人々は皆上級貴族やその召使達で皆煌びやかな格好をしていた。多くが姫と同じ、耳の長いノドムだ。街の建物、飾り、乗り物、人々の服まで、どれだけ金がかかっているのかとてもエラには想像できなかった。

 ほうっ、とエラは感嘆のため息をついた。いつ何度見てもロウサ城内の景色は圧巻である。この景色を自分と同年代の子達はほとんど知らない。それどころか存在そのものも知らないのだ。エラも初めて城内を見た時は腰がぬけてその場で座り込んでしまった。エラは姫に、何故ロウサ城の事をほとんどの人が知らないのか聞いてみた。姫曰く、「秘密にしていた方が楽しいじゃない。」だそうだ。多分防衛上の理由か何かだろう、とエラは思った。

 城内の花の庭園には蝶や小鳥たちも集まっているのだが、その下で花たちに隠れて何かが追いかけっこをしたり歌を歌ったりしている。それらは二頭身くらいの女の子の見た目をしていて、ウェーブがかかった金髪の髪と愛らしいクリクリした目が印象的だ。花の冠をかぶって白いドレスを着ていて、そして。小人妖精だ。その周りに光の粒のような物が点滅して飛び回っているのだが、これは精霊である。

(よく見かけるけどあの妖精達どこから入ってきてるのかしら?それとも城内で飼われているのかしら?)

 そんな事をぼんやりと考えていると、エラの元に馬車が近づいてきた。馬車と言っても引き手である馬はいない。一人手に動いている。魔法の馬車だ。
馬車はエラの前で止まった。
 エラはパーティーの会場に行く前に姫に会うために王家の居城まで行きたかった。城まで歩くには距離があった。馬車はそれを察してエラの前まで来た。
 エラは何も言わず馬車に乗り込むと数分の間馬車の中で揺られ続けた。数分後、姫の住む城に到着すると、姫が出迎えてくれた。
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