Blissful Kiss

雪原歌乃

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Chapter.5 嫌いにならないで 

Act.1

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 翌日になっても、高遠さんとの初めてのキスの余韻は消えずにいた。
 あの時、私が拒否していたら、高遠さんもキスをしようなんて思わなかったはず。けれど、私は高遠さんを受け入れる覚悟を決めた。いや、覚悟というよりも求めていたことだ。
 でも、キスの味を確かめる余裕なんてなかった。ただ、高遠さんにされるがままに唇を塞がれ、私はそれを受け止めるのが精いっぱいだった。
 高遠さんとはキスより先のことはしていない。抱き締められ、想い出したように私が持って行った筑前煮とお弁当をふたりで食べ、暗くなる前に実家の最寄り駅まで送ってもらった。
 翌日の夜、高遠さんからメールが来た。『昨日はありがとう。それと、強引なことをしてしまってすまなかったね』と。
 真面目な高遠さんのことだから、私を送り届けてから後悔の念に囚われてしまったようだ。でも、心配し過ぎにもほどがある。
 私はすぐに、『こちらこそ、ありがとうございました。でも、謝らないで下さい。私、高遠さんが初めてで嬉しかったですから……』と返した。
 高遠さんからはまた、『ありがとう。君がそう思ってくれたのなら俺も嬉しい』と。
 文字だけのやり取りだから素っ気なく感じるかもしれない。でも、メールの一文字一文字から高遠さんの誠実さが伝わってくる。高遠さんの本質が分かってきたからこそ、自信を持って言える。
 しばらく文字同士でのやり取りを繰り返しながら、次のデートの打ち合わせもした。
 気付けばそろそろバレンタインも近付いている。今までの私には無縁なイベントだったけれど、今回ばかりは何かしたいと思う。
 ただ、今度のバレンタインは平日だから、前倒しして逢えたら、と伝えてみた。
 高遠さんからの返事は『OK』だった。何だったら泊まりに来る? なんて冗談めかして言われたけれど、さすがにそれは即答しかねた。
 キスだけでも舞い上がっているのに、それ以上となるとどうなることか。高遠さんに抱かれながらそのまま心肺停止――なんてことになるのではと半ば本気で考えてしまった。
 結果、泊まりに関しては保留になった。でも、バレンタイン前の週末に逢うことになったから、その時に高遠さんのアパートでご飯を作る約束をした。
 メールが終わってから、私は何を作ろうかと考えた。バレンタイン用のチョコレートはまた別に用意するつもりだけど、高遠さんは甘いものはあまり食べないようだから、ビター系がいいのかもしれない。それとも、お酒好きだからアルコールの入ったチョコレートか。
 次に逢える日のことを考えると胸が高鳴る。今までも楽しみだと思っていたけれど、今はそれまで以上だ。
 本音を言えば毎日でも逢いたい。でも、それは無理なことだから我慢しないといけない。
 ――早く、高遠さんと逢いたい……
 携帯を握り締めながら、私は強く願うように思った。
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