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#29 ママ活の相手

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「と、いう訳なのよー長谷部ちゃん?」

「ぁ、そうなの? へぇ?」

 学校終わりに勢いよく校門を出たところで、長谷部は父親の海潮に捕まった。男と言わなければ分からず、キレイな海潮に生徒たちの視線も釘つけて、いたたまれずに長谷部は海潮の車に乗車せざるを得なくなった。
絶対ぜっっっっいに、これは竜司さんを俺から聞き出そうって魂胆だな)
 ただ、長谷部は海潮に事実しんそうを言い、扇を店に連れて行くことが出来ることを分かっていた。それを躊躇うのは竜司の意に反するんじゃないかという葛藤あってのことだ。
「本当に、あの後は縁司さんと会っていないの?」
「ああ。会ってなんかいねぇよ、父さん」
「そぉ、なの」
 海潮は鼻が利き、勘もよかった。
アタシの鼻が外れるなんて」
 それは確信に値するだったこともあり海潮は首を傾げてしまう。
「外れることだってあるんじゃねぇの? 百発百中ってことはあり得ねぇじゃんか」
「外れることはないんですけどねぇ~~」と頬を膨らませる様子に長谷部も冷や汗をかいた。もしも、事実がバレたらと気が気ではない。怒った海潮が怖いことはよく分かっているからだ。

「そぅだ。今日もバイトでしょう? どこなの、連れて行ってあげるわよ」

「! っや、いい! 一旦、家に帰って着替えるから!」
「なら、家に行ってから店に連れて行くわよ。自転車も乗せましょう」
「いいから! 大丈夫だっつぅのっ」
 狼狽える長谷部に、
(これは何か隠しているみたいですね)
 海潮も満面の笑顔を浮かべて、ドスのある声で言う。

「黙っていうことを聞けよ? ガキが」

 それには長谷部の表情も真っ青になり、
「っわ、…分かったよ」
 口をへの字に諦めに顔を項垂れてしまった。

(ごめんンん~~店長ぉううっ)

 ◆

「極道、なんて名前から凄いですねぇ」

 駐車場に車を停め、車から降りた海潮は店を見上げた。
 バクバクと心臓も高鳴らせて、「あんがと! じゃあな!」と店に向かおうとするのだが、海潮がそれを許さずに腕を掴み引き留めた。
「っな、何!?」
「私も甘い物を食べたくなったので入ります。そのついでに、店長さんにも挨拶をします」
「!? ぉ、俺、高校生なんだけど!?」
「親にとって子どもは子どもですよ? 挨拶は常識よ」
「っじょ、常識たってよぉう」
 駐車場には沢山の車があり、人気のある店だと海潮に知らせる。
 だから、興味が湧いた訳だ。

「ほら。バイトに遅れますよ、長谷部君」

「…分かった」

 もうどうすることも出来ないと長谷部は肩を落として、海潮と一緒に店内へと脚を踏み入れた。
 カランカランとなり長谷部を見た恵は、
「おい! っおっせぇえぞ! 長谷、べ――…」
 声を荒げて言うのだが、背後にいた海潮に声を失ってしまう。

(あ! ママ活の相手ヤツじゃねぇかっ!)

 聞かなくても分かる人物に、口もパクパクとさせてしまった。長谷部を見ればバツが悪そうな顔を恵に向けており、助けを求めているかのようだった。
 それを恵はスルーをし、頭の中を急回転させている。

 竜司に会わせるか、無難に避けて情報を聞き出すか、と。

(どうすっかなぁ~~w)
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