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マレニアの二学期

・マレニアの二学期 - ある男の末路 1/2 -

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・お姐さん

 おーひさぁーっ!
 観測者の皆さーんっ、アタシのお店にっ、ようこそぉーっ!

 うふ、うふふふふ……っ。
 ごめんなさいねぇーっ、急にアタシが主役になっちゃってぇーっ!!

 でもね、今日はね、大切な日なの……。
 皆さんも知っている、大切なお客様をお迎えしたのーっ。

 ほら、一応アタシ、神ちゃんだからー?
 やることはやっておかないとーっ、いけない気がするのよねぇーっ!?

 さてさてー、本日のお客様は――

「あ、なんだおめぇ? ありゃ、ここ、どこだ……?」

 クマさんみたいできゃわいいお人よー♪
 性格はカスだけどー、好きな人は好きな素敵なフォルムの殿方よぉっ♪

「そんなの見りゃわかるじゃなーい。ここわぁー、うちの店よぉーん♪」
「なんだ、お化け屋敷かよ」

「オホホホホッッ、よく言われるわぁーっっ!!」

 大声で笑うと、クマさんはアタシにちょっとギョッとしたわ。
 こんな美女を相手に、んもう失礼しちゃうっ。

「なんだ、その格好? 気の狂った格好しやがって……。そいつ、どっかの国の……女の服じゃなかったか?」
「そりゃそーよぉーっ、アタシ女の子だものぉーっっ!!」

 あら?
 何か不満でもあったのかしらね?
 アタシがそう返すと、クマさんは急に黙り込んだわ。

「ハ、ハハッ、ダハハハハッッ!!! その図体で、女の子だぁっ!? おかしな野郎だな、おめぇー!!」
「あらーん……? あらあらあらーん?」

 アタシね……。
 冗談で言ったつもりはなかったの……。
 99%本気で、冗談は1%くらいのつもりだったの。

 アタシ、神よ?
 神ちゃんよ?
 アタシが女の子と言ったら、たとえ生まれが男の子でも……アタシは女の子なのよぉぉーっっ!!

 アタシは得意の営業スマイルで、手元のショットグラスを――ジャリッと粉々に握り潰してやったわ……。

 今日のお客様は性格カスだけど、胆力だけは大したものだったわー……。

「んなまぎらわしい格好してる方が悪ぃだろ、バーァカッ!」
「あーーーらぁー? オマヌケさんは、まだ自分が死んだことにー、気付いていないのかしらねぇーん……?」

「はぁ、なんのことだよ? 死んだ? 俺が? バカ言っちゃいけねぇ」
「うふふ、そう……」

 埒が明かないわねぇー。
 んー、そうね……。
 観測者の皆さんもいらっしゃっていることだし、今日は趣向を少し変えましょう。

「いつもは自分自身が気付くまで観察するのが、アタシの趣味なのだけど……。まあいいわ、お姉さんが教えて、あ・げ・る……♪」

 アタシはそのクマさんの鼻先に指先を突き付けたわ!
 そして言ってやったの!

「アアタは、死んだの……」

 うふふっ、たまにはこういうのもいいものねぇーっ!!

「何言ってんだ、この通りピンピンしてんじゃねぇか!」
「治安局の捜査官の1人が、留置所からの脱走を幇助してくれたでしょう……?」

 説明してあげると、クマさんの口元から余裕の笑みが消えたわ。

「え…………あ、ありゃ……? 確かに俺は留置所から……は? 何が、どうなってんだ、こりゃぁ……?」
「あーん、残念♪ そーれ、罠だったのよぉぉー♪」

 クマさんはやっと思い出したみたい。
 お仲間の手引きで留置所からの脱走して、夜の貨物駅の倉庫に身を潜めていた時のことを。

「差し入れに毒を盛られて痺れたところをー、後ろからグサーッッ!! はーい、死んだーっ!! オホホホホッッ!!」

 自分が殺した舎弟と同じ死に方をするなんて、因果なものねぇ……。

「お……俺が……この俺が、死んだ……? バカ言うんじゃねぇ……っ、そんな、バカな……この俺が、そんなつまんねぇ死に方するなんて……っ、う……っ?!」

 クマさんは驚いたように自分の胸に手を当てたわ。
 ウフフ……刺された瞬間のことを、思い出しちゃったのかしらーん♪

「はいはーい、そんなアアタにー、新しい人生をプレゼントしてあげるのがー、アタシなの♪ だってアタシ、神ちゃんだものぉーっっ!!」
「て、てめぇが、神……?」

「次のアアタの人生はぁ……」

 神の力を使って彼の来世をのぞき見たわ。

「あらぁぁ……変ね?」
「な、何がだよっ!?」

「クノル家とつるんで、悪さし過ぎたせいかしらねぇ……?」
「な……っ、何言ってやがるっ!?」

「隠さなくてもいいのよ、時間のムダだから。だってアタシね……全部見てたものぉーっ!! そりゃそうよねーっ、アタシ神ちゃんだものっっ!」

 普通なら5択くらいまで見えるの。
 その中から面白そうな人生を、アタシが勧めてあげてるの。
 でもこのクマさんは、1つだけ。

 まあ、そうよね……。
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