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第3章 王立魔法学校入学編

閑話 ランディーの休日③

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「ところでローズに聞いたのだが、一般科の生徒の中に生意気な生徒がいるようじゃないか」
「は?」

最初ランディ―にはジェームズが何を言っているのかよく理解できなかった。
すぐにランディーから同意が得られなかったことで、ジェームズはむっとした表情になるが、ランディ―の知ったことではない。

「…もしかして、ローズが学校から罰せられた件のことですか?」
「そうだ!学校側はいったい何を考えているのか!一般科の生徒には罰を与えず、被害者であるローズに罰を与えるなど!」

まさかとは思いつつ確認のため質問すると、ジェームズは当然のように頷く。

「お父様っ!わたくし、本当にひどい目に遭いましたの!髪を強く引っ張られましたのよ!」
「何だとっ!お前のそのシルクのようにきれいな髪をか?」
「まぁっ、かわいそうに!旦那様、どうかローズのためにその生徒を退学させるように学校側に訴えてくださいな」
「もちろんそのつもりだ」

ローズの言い分をすべて鵜呑みにして、学校側を訴えるのだと息巻くジェームズ達に、ランディ―はあきれ果てる。

「おまえは同じ学校にいながら、妹を擁護することもなかったそうだな」
「お言葉ですが、最初に手を出したのは一般科の生徒ではなく、ローズの方です。彼女はなにも悪くは……」
「ひどいっ!」

ランディ―がことの発端を説明しようとすると、ローズが突然両手で顔を覆い泣き出す。
明らかなうそ泣きだ。
しかし、ジェームズには効果があったようで、ローズを泣かせたランディ―にそれでもローズの兄かと食って掛かる。

「ローズが悪いとでも言うのかっ!」

全く聞く耳を持たないジェームズの様子に、説明する気が失せるが、グッとこらえる。
今回の件に関しては、王太子殿下自らが調停役として事件解決に紛争したと聞いていた。
罰則内容こそ学校側が決めたようだが、王太子が解決した結果にもの申すなど、王家に喧嘩を売っているようなものだ。
しかも、あの加護持ちの少女も関わっているらしい。
ダフィル家の今後のことを考えれば、思い止まるように進言しなくてはならなかった。

「今回に関しては王太子殿下が調停役となり、一般科の生徒に非がないことをお認めになっています。である以上、その生徒を退学に追い込むことは難しいでしょう」
「な、なんだと?」

ここで王太子の名が出るとは思わなかったようで、ジェームズは少し怯んだように息を飲む。

「なぜ王太子がしゃしゃり出くるのだ」
「その生徒の友人の中に加護持ちの生徒がいたからです。王太子殿下は加護持ちの生徒に用があったようで、たまたまローズ達が生徒に言いがかりをつけている現場を目撃したのだとか」
「違うわっ!わたくしはあの生意気な平民に教育的指導をしただけよ!それなのに王太子殿下は平民の言い分を真に受けて、私を悪者扱いしたのよ!素敵な方だと思っていたのに、平民の味方をするなんて、がっかりだわ」
「髪の色を染め直してこいと言うのが教育的指導だと?僕にはよくわからないな」
「なんですって!?」

あくまでも自分は悪くないと言いはるローズの言い分をランディ―は一蹴する。
そもそも、ローズだとてこの屋敷に来る前は平民として暮らしていたはずなのに、人と言うのはここまで変わってしまえるものなのだろうか。

「ランディー、言葉が過ぎるぞっ!」
「…申し訳ありません。しかし、今回の件はこのまま学校の決定に従うのが良いかと思いますが」
「お前と言うやつはっ。ローズがかわいそうだとは思わないのか!もういいっ。さっさっとこの部屋からでて行け!」

淡々と反論するランディ―を、ジェームズは苦々しげな表情で見てくるが、とりあえずは学校に訴えることだけは思い止まってくれたようだ。
ジェームズはランディーを犬や猫のように手で追い払うと、ローズのご機嫌をとるべく、猫なで声でローズに話しかけるのだった。

「ローズや。ドレスを新しく新調しようじゃないか。それとも宝石の方が良いかな?」
「…両方はダメかしら?」
「もちろんいいぞっ!アイーダも新調すると言い」
「まあ、嬉しいっ」
「お父様、ありがとうっ!」

ローズ親子の頭の中は今やドレスや宝石のことしかないようだ。

「…失礼いたします」

これ以上部屋にいるのは限界だった。
ランディ―は部屋から逃げるように退出すると、彼の帰りを今か今かと待っている相手のもとへ向かうだった。

---

まだ続きます。
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