『麻布台長屋あやかし春暦』 ――大奥帰りの紫乃と黒門町の絵師――

大奥帰りの女・紫乃は、いまは麻布台長屋でひっそりと暮らしている。
かつて権謀術数渦巻く大奥で生き抜いた過去を隠しながら、静かな日々を送る紫乃のもとへ、時折お忍びで訪れるのは、大奥に絶大な権勢を誇る御中臈・弥生の方。

そんなある日、長屋へ現れたのは、江戸で評判を呼び始めた美貌の浮世絵師・雪麿だった。

「刷り上がったものを、まずお紫乃さんにお見せしたくて参りました」

雪麿が描いたのは、誰も知らない“本当の紫乃”。

だがその絵は、弥生の方の心にも静かな火を灯してしまう。

大奥の寵姫。
長屋に生きる元女中。
そして、すべてを見透かすように微笑む絵師。

春浅い江戸を舞台に、
秘めた想いと嫉妬が静かに絡み合う、
艶やかな大人の恋絵巻。
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