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1章妖精の愛し子

16.

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「おはようごじゃいましゅなの」
「おはようございます、リリーフィア様」
まだ家族は食堂に来ておらず、いたのは朝食の用意をしてたいた執事やメイドだけだ。
その中にはリリーフィアが産まれたときからこの家に仕えていた者もいる。

リリーフィアが席に着き、十分程待っていると、父親であるグラウィルとティファニーが部屋に入ってきた。
「おはようごじゃいましゅなのおとうしゃま、おかあしゃま」
席から立ち上がりカーテシーをとるリリーフィア。

だが、グラウィルもティファニーも無視をするだけでリリーフィアに挨拶をしようとすらしない。
グラウィルは一瞬リリーフィアに目を向けたが、すぐに逸らすとそのままティファニーと共に席に着いた。
「おはようごじゃいましゅおとうしゃま、おかあしゃま」
今度はシャルロッテが食堂に入ってくる。
シャルロッテはカーテシーをとることもなく、すたすたと自分の席へと向かっていく。

「おはよう、シャルロッテちゃん」
「おはようシャルロッテ」
グラウィルとティファニーもシャルロッテにはきちんと挨拶を返す。

みんなが揃ったところで朝食が運ばれてくる。
リリーフィアがひとり、席のはなれた場所でご飯を食べていると珍しくグラウィルが話しかけてきた。
「リリーフィア、今日鑑定式に行くから食べたらすぐに玄関に来い」
「わかりまちたなの、おとうしゃま」
リリーフィアは内心ドキドキとしながらもそう答えた。

鑑定式、それは神々から授かった加護や愛し子かどうかを見分け、自分の使える魔法の属性や向いている職業を教会で教えて貰えること。
これはどんな身分の者でも必ず三歳の時に受けなければいけない儀式である。

これを受けさせなかった親には罰が与えられ、王族ならば臣籍降下しんせきこうか、貴族ならば爵位の剥奪がされ、庶民ならば国に金貨を五枚寄付しなければいけない。

金貨は一枚でかなりの価値があり、何処かの国では約十万円の価値があると言われているんだとか…
まあそんな訳でグラウィルがどんなにリリーフィア連れていきたくなくても連れていかざるを得ないのだ。


   ***


「リリーフィア、準備出来た? それじゃあ行こうか」
サクラとハヤテの小さな手に両手の指を握られ、リリーフィアは歩きだす。

「とこりょで、ありょいはどこに行ったなの?」
リリーフィアは不思議そうに辺りを見回すが、どこにもアロイの影はなく、それどころか気配すらもしない。
リリーフィアは、アロイがいつからいなかったのか、ふと思い、考えてみる。

そこで思い出したのは、リリーフィアが二度寝から起きたときにはもうアロイの影は無かったということだ。
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