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撃退任務
3匹の竜がいる戦場へ(1)
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騎士の白い制服を纏ったリーシャは、ルシアとエリアル、シルバー、そして騎士団第1部隊と共に家の近くの開けた地へと向かった。
「ルシア、お願い」
「りょーかい」
ルシアの体が骨格を変えながら巨大化し始めた。
その変わりゆく姿を、騎士たちは息を呑んで見つめていた。
騎士たちの中には、以前ノアが王城内で竜から人間へと擬態した時の事を目にした者もいるだろう。けれど、その逆の、人間から完全な竜へと変わる姿を見せた事はない。あの時と比べ、皆驚きよりも恐怖心の方が勝っているのが騎士たちの顔を見るとよくわかる。
そんな視線を集める中、ルシアは元々の大きさまで戻った。背はかなりの広さでフェンリルの率いる隊を全て乗せることができそうだ。
「皆さん、こちらから登ってください」
リーシャが騎士たちを伏せたルシアの尾から背中に登るよう誘導すると、皆ビクつきながらもその指示に従った。
騎士たちが登り終わると、フェンリル、シルバー、エリアルと続き、最後にリーシャが登った。
「ルシア、全員乗ったよ」
「りょーかい。リーシャの方の準備は?」
「あっ、ちょっと待って」
準備というのは、ルシアの背に乗って飛行する間に受ける風を和らげ、ルシアの体に固定する魔法のことだ。このまま魔法なしで空を飛んでは、風圧で全員吹き飛ばされてしまう。
リーシャはすぐに全員を対象にした魔法を発動した。
「大丈夫。準備できた」
「んじゃあ、いくぞー」
翼が大きく上下を始めると、砂埃を上げて巨大な黒竜の体が大空へと舞い上がり、西に向かって空を滑るように翔けていった。
地上の風景がものすごい速さで流れていく。
「で、リーシャ。さっきの骨、ありゃいったい何なんだ?」
「えーっとですね……」
シルバーの問いかけに、リーシャは言いにくそうに視線を逸らした。そして周りの様子を窺った。
近くににいるのはエリアルとシルバー、そしてフェンリルだけだ。他はリーシャたちとあまり関わりたくないのか、距離を置いて座っている。
リーシャは万が一にも人に聞かれないように、シルバーに近づいた。
「あの骨の生き物はシャノウさんっていって、あっ、名前は私たちが付けたんだけど、元々は……普通の竜だったんだって。なんか、1回死んじゃって、その後あんな骨の姿になったらしいの」
「死んでるって……また変なのに居つかれたな……で? そいつ1匹置いて来て大丈夫なのか? 家ん中荒らされたりとかは?」
「置いて来てないよ。シャノウさんは魔道具に封印されてる竜だから、使用者とあんまり離れられないみたい。だから今はこの中に戻ってもらってる」
リーシャは指につけている指輪をシルバーに見せた。
「ってことは、こいつは魔道具なのか?」
「そう、カルディスの指輪っていう召喚の魔道具」
「ふーん。世の中そんな魔道具もあんだな。なあ、そいつ使って今回の竜追い払えたりしないのか?」
「あっ、それは無理。わけあって私の事は襲わないでいてくれるけど、言う事はまっっっったく、聞いてくれないから」
シルバーは信じられない物を見るかのように顔を歪めた。
「げぇっ……それって危険な奴じゃねぇか。フェンリル王子はよくそんなもの持たせるの許してますね」
「今は王子はやめてくれ。せめてフェンリル隊長って呼んでくれよ」
以前からなんとなくわかっていたけれど、どうやらフェンリルは王子と呼ばれることをあまり快く思っていないらしい。
うんざりしたような顔をした後、そのまま続けてシルバーの問いに答えた。
「とりあえずリーシャの話を聞く限りでは、こいつからカルディスの指輪をとり上げちまったら、後々面倒なことになりそうだったからな。それに、多少はリーシャの言う事聞くみたいだからまぁいいかって」
「いや、だから聞いてくれないってば……」
自分と全く反対の事を言うフェンリルに、リーシャは思わずツッコミを入れてしまった。
指輪の中に戻せば強制的に大人しくさせることはできるけれど、1度外に出してしまえばリーシャの言う事など、本当にろくにききやしない。
そんな話をしていると、竜の姿のルシアが口を開いた。
「おーい、向こうで煙が上がってんだけど、あれか?」
向かう先を見ると、地平線から何本かの黒い煙が上がっていた。時折何かが破裂したような音も聞こえてくる。
「あれだ! ルシア、急いであの場所目指してくれ!」
「りょーかい」
ルシアはフェンリルの指示を聞くと、煙の上がる場所へとスピードを上げて向かった。
「ルシア、お願い」
「りょーかい」
ルシアの体が骨格を変えながら巨大化し始めた。
その変わりゆく姿を、騎士たちは息を呑んで見つめていた。
騎士たちの中には、以前ノアが王城内で竜から人間へと擬態した時の事を目にした者もいるだろう。けれど、その逆の、人間から完全な竜へと変わる姿を見せた事はない。あの時と比べ、皆驚きよりも恐怖心の方が勝っているのが騎士たちの顔を見るとよくわかる。
そんな視線を集める中、ルシアは元々の大きさまで戻った。背はかなりの広さでフェンリルの率いる隊を全て乗せることができそうだ。
「皆さん、こちらから登ってください」
リーシャが騎士たちを伏せたルシアの尾から背中に登るよう誘導すると、皆ビクつきながらもその指示に従った。
騎士たちが登り終わると、フェンリル、シルバー、エリアルと続き、最後にリーシャが登った。
「ルシア、全員乗ったよ」
「りょーかい。リーシャの方の準備は?」
「あっ、ちょっと待って」
準備というのは、ルシアの背に乗って飛行する間に受ける風を和らげ、ルシアの体に固定する魔法のことだ。このまま魔法なしで空を飛んでは、風圧で全員吹き飛ばされてしまう。
リーシャはすぐに全員を対象にした魔法を発動した。
「大丈夫。準備できた」
「んじゃあ、いくぞー」
翼が大きく上下を始めると、砂埃を上げて巨大な黒竜の体が大空へと舞い上がり、西に向かって空を滑るように翔けていった。
地上の風景がものすごい速さで流れていく。
「で、リーシャ。さっきの骨、ありゃいったい何なんだ?」
「えーっとですね……」
シルバーの問いかけに、リーシャは言いにくそうに視線を逸らした。そして周りの様子を窺った。
近くににいるのはエリアルとシルバー、そしてフェンリルだけだ。他はリーシャたちとあまり関わりたくないのか、距離を置いて座っている。
リーシャは万が一にも人に聞かれないように、シルバーに近づいた。
「あの骨の生き物はシャノウさんっていって、あっ、名前は私たちが付けたんだけど、元々は……普通の竜だったんだって。なんか、1回死んじゃって、その後あんな骨の姿になったらしいの」
「死んでるって……また変なのに居つかれたな……で? そいつ1匹置いて来て大丈夫なのか? 家ん中荒らされたりとかは?」
「置いて来てないよ。シャノウさんは魔道具に封印されてる竜だから、使用者とあんまり離れられないみたい。だから今はこの中に戻ってもらってる」
リーシャは指につけている指輪をシルバーに見せた。
「ってことは、こいつは魔道具なのか?」
「そう、カルディスの指輪っていう召喚の魔道具」
「ふーん。世の中そんな魔道具もあんだな。なあ、そいつ使って今回の竜追い払えたりしないのか?」
「あっ、それは無理。わけあって私の事は襲わないでいてくれるけど、言う事はまっっっったく、聞いてくれないから」
シルバーは信じられない物を見るかのように顔を歪めた。
「げぇっ……それって危険な奴じゃねぇか。フェンリル王子はよくそんなもの持たせるの許してますね」
「今は王子はやめてくれ。せめてフェンリル隊長って呼んでくれよ」
以前からなんとなくわかっていたけれど、どうやらフェンリルは王子と呼ばれることをあまり快く思っていないらしい。
うんざりしたような顔をした後、そのまま続けてシルバーの問いに答えた。
「とりあえずリーシャの話を聞く限りでは、こいつからカルディスの指輪をとり上げちまったら、後々面倒なことになりそうだったからな。それに、多少はリーシャの言う事聞くみたいだからまぁいいかって」
「いや、だから聞いてくれないってば……」
自分と全く反対の事を言うフェンリルに、リーシャは思わずツッコミを入れてしまった。
指輪の中に戻せば強制的に大人しくさせることはできるけれど、1度外に出してしまえばリーシャの言う事など、本当にろくにききやしない。
そんな話をしていると、竜の姿のルシアが口を開いた。
「おーい、向こうで煙が上がってんだけど、あれか?」
向かう先を見ると、地平線から何本かの黒い煙が上がっていた。時折何かが破裂したような音も聞こえてくる。
「あれだ! ルシア、急いであの場所目指してくれ!」
「りょーかい」
ルシアはフェンリルの指示を聞くと、煙の上がる場所へとスピードを上げて向かった。
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