星に牙、魔に祈り

種田遠雷

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11、帷の内

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 寝室で、就寝のためだろう衣服を脱いでいるアギレオの背と出会い、今戻ったと声を掛けて、自分もその傍らで着ているものを解く。
「おう。魔術師様はなんだって?」
「うん、問題無い。腫れが引いてからもう一度見ようと言って、湿布をしてくれた」
 これか、と晒す包帯の上から手を触れられ、少し目で追う。つめてッと声を上げるのに、思わず口元を綻ばせ。
「氷の魔術だろう。少しずつぬるくなっているから、明日の朝には冷たくないだろうが」
「なるほど。取り替えなくても冷やせんのか、便利なこった」
 ブーツを脱いでしまおうと寝台に腰を下ろす隣にアギレオが座って、脇腹の辺りに巻きつけられる腕に、目だけで振り返る。
「冷やしてんのにあっためねえ方がいいか?」
 気の早い男のせいで脱ぎそびれた下衣のまま、膝を絡めるようにして身を寄せ、遠い方の手を伸ばして、角に指を絡めるようにアギレオの頭を抱き。
 目を合わせて、口を開いて、合理的に考えればやめておくべきなのかと考え及び、また口を閉じて目を逸らす。逡巡しながら、持て余すように髪に指を絡め、後ろ頭からこめかみを撫で。頬骨から頬をなぞりおりて、唇を弄れば、指に息を吹きかけられる。
 目を戻せばアギレオが浮かべている片笑みに、どちらとも言い出せない唇を少し尖らせてしまう。
 鏡合わせのように、顎を掌で掬うようにして唇のあわいに親指を這い込まされ。目を伏せてその指を小さく吸って。
 手を離しながら、なんだよ?と面白がるよう笑う顔に、自分で困って少し額を擦り。
「…まぐわいたい」
 ンッ!?と跳ね上がる声に、顔を寄せて唇を指で撫で、ためらって吐息し。唇を湿らせた自分の呼気が熱く、身体に熱が宿る。
「……性交したい。…抱いて欲しい、アギレオ、」
 寝台に沈む肉の奥であらぬ場所が、むずつく。
 優柔不断の唇に唇を重ねられ、唇の形を確かめ合うよう交わすのももどかしく、浅ましいよう舌を求めて彼の歯列を舐めて。
「ん、ぅ、……ギレオ、、ン、だが、」
 舌同士を擦り付け、唾液を削ぎ合うはざまに息をつぐよう、ためらいの理由を打ち明けようとして、欲望に負け離せぬ唇。
 うン?と、鼻でつく息に混じらせ問い返す声とともに、離される顔を眉下げて目で追う。
 濡れた唇を指で拭い。
「こじらせてしまうと、明日ケレブシアに見てもらうのに、弁明が苦しい…」
 ブフッと噴き出されるのに、顔を背ける。つまらないことなのは、承知だが。
「まあ、お前暴れるからなあ。肩か…、確かに、どう押さえつけても悪くしそうじゃあるな」
 暴れると言われるほどではないはずだ、と抗議する声も取り合わず、顎をさするアギレオの顔を見つめ。
 よし、来い来いと腕を引かれて招かれ、身を転じて膝で這って寝台へ上がる。
 向き合いに重ねる唇が、互いに残りの衣服を脱ぎ捨てるために離れては、また擦り寄せ。舌を差し出して絡め、離れる距離を惜しむように舌先同士でくすぐり合う。
 腰を抱き寄せられ、膝で跨ぐようにアギレオの胡座の上に腰を下ろして。
 血液の流れを遡るよう、耳の下から首筋へと、産毛を揺らすような微かさで下りていく指に息がこぼれる。
 肩の先まで遊んだ指が気を変えたように鎖骨の内側へと戻り、胸の筋肉を包むよう、指を広げて掌で淡く包まれれば、快さともどかしさで身が捩れ。
 途切れさせるように息を継ぎながら、彼のしたのを真似て追うよう、肩を摩り、胸を揉んで返す手は、だが焦れるのを隠せず強く擦りつけてしまう。
「は――…」
 噛みつくように唇を奪い、舌で押し退けるように歯列を割らせ、アギレオの口の中へと舌を押し込む。他人臭い、けれどもう馴染んだ味と匂いの唾液を舐め啜り、応じる舌に舌を絡ませては吐息し。
 勃起し始めの互いのペニスを合わせるように握られ、腰を揺らして擦りつけ。
「ン、ふゥ、」
 濡れた感触が尻に触れて、背が伸び、途端にどう動くべきか判らなくなる。混じる先で吐息が笑っているのに気づいて、下唇に歯を引っ掛けてやって。
「アギレオ…」
「そのまま…暴れず大人しくしてろ…」
「んっ」
 グッと強く押しつけられた指が、皮膚を濡らすぐすりのぬめりを借りて尻の穴に入り込む。
「…ぁ、…」
 擦り寄せるように腕を伸ばしてアギレオの頭を抱き、頬を擦り寄せる。ヂリッと痛みの走る肩に薄く強張ったのを、見逃さぬ手に掴んで下ろされ、痛めた左は下げて脇から背を抱く。
 未だにどこか倒錯的な、だがもう身に染みついた、尻の穴を内側から解される快に痺れる。
 短く上擦うわずる吐息に勝手に声が混じって。
 固い筋肉をじっくりと柔らげながら奥へと進む指に身はとろけて、反り返るほど勃起したペニスが、濡れる。
「ぁぅッ」
 皮膚を薄くしたように敏感になった亀頭に、垂れるぬめりを塗り広げられ、顎が浮く。
 尻の中を指で捏ね回し、出入りする動きで擦られ、尿道口を弄るように勃起をいじめられて背が撓む。
「ぁ、あ、ぁァ、あっあ、」
 悦楽の中に渦を巻き始めるような熱に、息が上がる。
「は…、ぁ、…アギレオ、」
 肘で少し肩を突っ張るようにして身を離し、混色の瞳を覗き込んで額を寄せ。ン?と言う代わりのよう上がる眉に、目を伏せて鼻先もすりつける。
「…も…入れてくれ…」
 ごく柔く、啄まれる唇に微かにチュと音が伝わり、腰の裏が震う。
「…もう?」
 ひそめた低い囁きに頷きを繰り返し、膝を起こして尻を上げ。
「……中に、欲しい、」
 じくじくと熱に疼くような内で指をクルリと回され、声が跳ねる。確かめるように指を開いて穴を拡げられるのに、応えるよう、力を抜いて開かれるに任せ。
「そんな無理矢理したら、…明日レビにバレるぜ?」
 ビクッと、背が強張ったのが、その言葉になのか、深く突き刺された指になのか自分で判じかねて淡く混乱する。
 指が抜かれ、濡れた穴に押しつけられる亀頭の丸い熱に、力が抜ける。
 はやく。
「っ、い、いい、いいから…っ」
「――なァにが」
 息づく穴を押し開くように食い込むペニスが、けれどまた離れて、縋りつく背に指を立て。
「んッ、……ぁ」
「お前の可愛いレビに知られてもいいのか? 見てもらった怪我も庇わねえで、尻の穴に俺のチンポ欲しがってたって?」
 可愛いレビ、という声に辛うじて、睫毛まで銀色の美しい半エルフの顔を思い出しても、その続きまでは理解できない。
 浅く穴を開いては、また逃れ離れていく肉棒の丸みを求めて尻を押しつけ。
「いっ、いい、知られてもいい、…入れて、いれて、」
「――しょうがねえな、…悪いエルフめ」
「あッ」
 ぐぷりと、音は耳からではなく腹の内から肉を伝わり、一番狭いところを裂くよう拡げる太さに、唇がわななく。
「ああぁ…」
 最初の息苦しさを通り抜け、複雑なおうとつが腹の内を弄って満たしていくのに、息が抜けて唇が勝手に開いてしまう。
「ほら、腰浮かすな。…力抜け…」
 背を掻き下りるよう指を立てて身を引き下ろされることにすら、ゾクゾクと肌が痺れ、胸から乳首に伝わるように感じる。
 脚の間から腹の内をじっくりと埋めていく熱杭に、皮膚の裏が熱い。
「アギレオ…」
 首すら立てておられぬ心地で、褐色の肩に耳を預けて首筋に歯先を擦りつけ。
「ン…? 気持ちいいか。すげえ動いてんな、中」
 鼻から抜くように吐息に混じる声で頷き、気持ちいい、と与えられた言葉をなぞるよう彼の肌に潰し。
 尻を上げて動こうとするのを、腰を掴んで下ろされ、瞬けば雫が落ちた。
「ぅん……?」
 肉の向こうに見透かしたように、男のペニスを抱えた腰の裏を撫でられれば、ゾクッと背が伸びる。
「イキたきゃイッてもいいから、大人しくしてろ」
「ん、グッ、ァッ」
 頷きかけたところに、弾みをつけるように奥を突かれ、声が潰れる。
「っぁ、ッ、ぅ、――ィっ、、あ、待て、ま、」
 陰茎の砲身と反りに肉筒のひだをこじられ、弾みをつけるよう深いところを叩かれるたびに奥へと沈み、目の前が赤く染まっては溶ける。
「ま、だめ、ぁ、アっ、ッ、ぎ、アギレオ、っギレオ、待、深…ッ」
 打ちつけられるような衝撃の薄い殻が剥がれ、どろりと溢れてくる甘美な官能が濃い。
「ンぐッ…!」
 イク、と、思う間もないほど。
 頂を極めてもなお揺すりをかけられ、尻から腰の裏を満たす濡れた甘快が広がり、満たされるたび我が身の境が解けて見失う。
「はっ、ぁっ、あ、ァッ、あ、ぃや、いや…」
 こわい。
 足りない。そのまま殺して欲しい。愛しい。甘い、熱い、気持ちいい、痺れる、気持ちいい。
 己をヒトに留めている何かが破れたよう、形も脈略もない不確かな感情ばかりが湧いては落ちていく。縋るよう呼ぶ名を、口に出来ているかも分からない。
「アッ、ぃ、――んィッ!」
 腹の深いところが意の及ばぬようオルガズムを極め、引き絞ってしまう身に肩と胸が痛んで、絶頂を深くする。
 ああ、と、低く色気に満ちた溜息が遠く聞こえて、愛する男が自分の腹の中で射精していると知れる熱さに、小さくまた絶頂してしまう。
嗚呼ああ…」
 感極まるような声が勝手に零れて、乱れた身体を持て余し、汗にまみれた胸と背に縋る。
 跳ねる息が収まるのを互いに待って、身を絡めたままで耳をそばだて。吐息や、鼓動、不意に思わぬところから聞こえる粘った水音に、身を委ね。
 よ、と、声を一つでシーツに下ろされ、足を手繰り腰を抱き上げ身を伸ばされる。
 まだ縮みきっていないペニスを抜かれて擦れるのに、小さく身震いした。
 横臥に向き合うよう、やれやれといった風に身を横たえるアギレオに手を伸ばし、耳を覆って耳殻の内の迷路に指を遊ばせる。
「くすぐってえ」
 笑って撓む双眸を見つめ。
「もっとしてくれ、アギレオ…」
「なんだ。今日はしつけえな、お前」
 眉を上げて笑う顔に、頷く。
「それから…」
 声が喉に絡んでしまって、浅く咳払いする間に、跳ねる片眉に目を細める。
「…奥でイカせないでくれ。…朝、足が立たなくなる…」
 ぴたりと。凍りつきでもしたように動きを止める顔を、見つめ。弄っていた耳から辿って顎から頬を撫で。
「めちゃくちゃイッてたくせに、おま、……。…ああ。だからか」
 そう、と、少し頬を緩めて頷いた。まだ、腿の内や尻が痺れている気がする。
 よいしょ、と身を起こして乗り越えられ、背に回られるのに振り返ろうとするのが、後ろから抱き締められて叶わない。
「…他には? 喋れる内に言っとけよ」
 横臥の上になった方の脚を持ち上げられ、笑いながら頷くのが、尻の谷間に擦りつけられる半勃起の感触に吐息で溶ける。
 さり気なく肩の位置を気に掛け腕を逃がしてくれる手を取り、その指にくちづけた。
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