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第1章
5 この暑さは地獄 ③
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まだ、体調が完全には良くなってはいないだろう。
心配げに女医とエドワード王子は、マティルダの様子を見ていた。
窓から入る風は部屋の中に居る者たちに、少しだけ安らぎを与えるようだ。
エドワードは優しく気を使っては、彼女のこの後を気にしてくれていた。
「サンダース伯爵令嬢。
熱中症手前で、自分の行いを忘れてしまったのだな。
授業は終わるけど、今日はコレから……。
君はどうするつもりだ?!」
「…!え~?その~うぅ…」
それよりいったい、私はなにをしたんだろうか?!
所々は記憶は定かではない。
婚約破棄と慰謝料は、申し伝え請求したのは覚えている。
「君は…、夏の休暇中は。
実家に帰れるのかい?!」
エドワード殿下にそう言われて、頭で考えを巡らして返事が遅れてしまった。
考えるのさえ、億劫でボーッとしていたかったから。
「いまは考えていません。でも…気持ち的には。
実家の領地には、戻りたくありません。
妹アリエールと婚約者ハロルドが、イチャついてベンチに座っていたまでは…。
かろうじて、記憶があり覚えていますが…」
いやっ、もっと後を覚えているが知らんぷりした方がいい。
絶対に、それがいい気がする。
マティルダの話を聞いていた二人は、黙って考えている彼女が傷ついていると受け取る。
「そうか、君が暑さで倒れた後に…。
あの二人は、心配もせず。
駆け寄りさえしなかったのだ。
一方的に君が悪い、恥をかいたと怒鳴ってばかりいたよ」
同時ではないが、三者は各自ため息をつく。
「それなら、自分のいいように妹アリエールはー。
きっと、父や母に泣きつきます。
家に戻ったら、お小言だけで済めばいいのですが…」
父や母に、殴り飛ばされるかも知れない。
だって、私はあの家では邪魔者だから。
「しばらくは、実家に居ないほうがいいと思うよ。
明日から、上手い具合に夏休みに入る」
「ええーっ、でもそれは~!?
ああ夏季休暇、そう言えばそうでしたね。
狙ってしたわけではなかったですが、明日からはちょうど休みです」
ここに運ばれての初めての笑い声は、とても暗いものだった。
「じゃあ、決まりだな!
君たちの仲を妨げた原因の一部は、私と母上にも責任がある。
今日から体調が戻るまで、王宮で静養して貰おう!」
「えっ!?ですが…、エドワード殿下。
父サンダースは許すでしょうか?
その間は伯爵の仕事は手伝えませんから、すぐにでも帰ってこいと連絡を寄越しそうです」
伯爵の仕事にすぐさま反応してきたのは、女性である先生だった。
「まぁ…、女性の身でお仕事の手伝いをしたのですか?
それって、強制で貴女だけが手伝っているの?!
つい口を挟んで、ごめんなさいね」
先生は机で日報を記入していたペンを止めて、2人の会話に参加してきた。
「一応は長女で私が伯爵を継ぐので、幼い頃から仕事を教えられたのです。
その婚約者は協力的ではないので、全て私がしてます」
日頃から多忙を極めている。
学園では前に座る、エドワード殿下が生徒会長をしていた。
エドワードに請われて一員に入り、マティルダがそれだけ優秀であるから誘われたのだが…。
先ほど話されていたが、実家では父親の家業の手伝い。
それだけではない。
なんと国一番の女性から、面倒なお願いをされていた。
彼女には、それが精神的に一番キツかったのだ。
「母の王妃が、君の現状を知ったら驚くに違いない。
王宮で静養して、君のことを詳しく聞かせてくれないか?
婚約者と妹君が、何故ああなってしまったのかをー」
先生がマティルダの担任に、意識が戻ったのを知らせに部屋から出て行く。
本来は若い男女を二人きりにするのは良くない行為だ。
しかし具合が悪い彼女に、エドワードが何かするとは考えられないと判断した。
それに今までの会話を一緒に聞き、素行は大丈夫だと確信する。
二人きりになれたので、彼は核心について質問をしてきた。
ベッドで寝ている彼女は、まだグッタリした表情。
エドワード殿下からの申し出を、静かに両目を閉じて了承する意思を示した。
心配げに女医とエドワード王子は、マティルダの様子を見ていた。
窓から入る風は部屋の中に居る者たちに、少しだけ安らぎを与えるようだ。
エドワードは優しく気を使っては、彼女のこの後を気にしてくれていた。
「サンダース伯爵令嬢。
熱中症手前で、自分の行いを忘れてしまったのだな。
授業は終わるけど、今日はコレから……。
君はどうするつもりだ?!」
「…!え~?その~うぅ…」
それよりいったい、私はなにをしたんだろうか?!
所々は記憶は定かではない。
婚約破棄と慰謝料は、申し伝え請求したのは覚えている。
「君は…、夏の休暇中は。
実家に帰れるのかい?!」
エドワード殿下にそう言われて、頭で考えを巡らして返事が遅れてしまった。
考えるのさえ、億劫でボーッとしていたかったから。
「いまは考えていません。でも…気持ち的には。
実家の領地には、戻りたくありません。
妹アリエールと婚約者ハロルドが、イチャついてベンチに座っていたまでは…。
かろうじて、記憶があり覚えていますが…」
いやっ、もっと後を覚えているが知らんぷりした方がいい。
絶対に、それがいい気がする。
マティルダの話を聞いていた二人は、黙って考えている彼女が傷ついていると受け取る。
「そうか、君が暑さで倒れた後に…。
あの二人は、心配もせず。
駆け寄りさえしなかったのだ。
一方的に君が悪い、恥をかいたと怒鳴ってばかりいたよ」
同時ではないが、三者は各自ため息をつく。
「それなら、自分のいいように妹アリエールはー。
きっと、父や母に泣きつきます。
家に戻ったら、お小言だけで済めばいいのですが…」
父や母に、殴り飛ばされるかも知れない。
だって、私はあの家では邪魔者だから。
「しばらくは、実家に居ないほうがいいと思うよ。
明日から、上手い具合に夏休みに入る」
「ええーっ、でもそれは~!?
ああ夏季休暇、そう言えばそうでしたね。
狙ってしたわけではなかったですが、明日からはちょうど休みです」
ここに運ばれての初めての笑い声は、とても暗いものだった。
「じゃあ、決まりだな!
君たちの仲を妨げた原因の一部は、私と母上にも責任がある。
今日から体調が戻るまで、王宮で静養して貰おう!」
「えっ!?ですが…、エドワード殿下。
父サンダースは許すでしょうか?
その間は伯爵の仕事は手伝えませんから、すぐにでも帰ってこいと連絡を寄越しそうです」
伯爵の仕事にすぐさま反応してきたのは、女性である先生だった。
「まぁ…、女性の身でお仕事の手伝いをしたのですか?
それって、強制で貴女だけが手伝っているの?!
つい口を挟んで、ごめんなさいね」
先生は机で日報を記入していたペンを止めて、2人の会話に参加してきた。
「一応は長女で私が伯爵を継ぐので、幼い頃から仕事を教えられたのです。
その婚約者は協力的ではないので、全て私がしてます」
日頃から多忙を極めている。
学園では前に座る、エドワード殿下が生徒会長をしていた。
エドワードに請われて一員に入り、マティルダがそれだけ優秀であるから誘われたのだが…。
先ほど話されていたが、実家では父親の家業の手伝い。
それだけではない。
なんと国一番の女性から、面倒なお願いをされていた。
彼女には、それが精神的に一番キツかったのだ。
「母の王妃が、君の現状を知ったら驚くに違いない。
王宮で静養して、君のことを詳しく聞かせてくれないか?
婚約者と妹君が、何故ああなってしまったのかをー」
先生がマティルダの担任に、意識が戻ったのを知らせに部屋から出て行く。
本来は若い男女を二人きりにするのは良くない行為だ。
しかし具合が悪い彼女に、エドワードが何かするとは考えられないと判断した。
それに今までの会話を一緒に聞き、素行は大丈夫だと確信する。
二人きりになれたので、彼は核心について質問をしてきた。
ベッドで寝ている彼女は、まだグッタリした表情。
エドワード殿下からの申し出を、静かに両目を閉じて了承する意思を示した。
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