弟、異世界転移する。

ツキコ

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1章

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「え?ケイ、ここにもいないの?」

ケイがいた場所に戻った時、そこにケイはもういなかった。
先に帰ったのかとエディも陣営に戻って来たのだが。

「お前と一緒じゃなかったのか?」

「え、ええ…待っていてもらったんだけど、いなかったからてっきり戻ったんだと…」

「そんな!じゃあケイはどこに行ったんですか!?」

今か今かとケイの帰りを待っていたシモン。
その顔には驚愕が浮かんでいた。

「途中で影が消えたから変だとは思ってたけど…まさか、誘拐?」

「今度は一体誰に誘拐されたって言うのよ?さすがにあの状況で魔物に誘拐された、なんてことはないわよねえ…」

「さあ…少なくとも僕らがする必要はないですよね。黒か、白か…」

「黒に聞いてきますか?」

「いや、いい。こういう類いは大抵白だからな」

「白っていうと…今回はなぜか王子がいたわよね…」

そういえば、と思い出したようにエディが呟く。

脳内お花畑を装っている腹黒王子。
何を考えているかわからない人物でもある。

あれが演技だと知っているのは彼の周囲の者だけだ。
不思議なことにその情報が漏れないのだから徹底されている。

「ああ。こういう討伐にはおかしな理由をつけて来ないのにな」

「大規模な討伐はケイが来てから初めてですよね?」

「ケイが目的で参加したってことですか!?」

「ありえなくはないわね…あの王子だもの。なにかしらの方法で情報を手に入れているかもしれないわ」

情報戦ならば彼はかなり優秀だろう。
どうやって手に入れているかはまるでわからないが。

「相手が厄介だな…」

「俺、今からケイの所に行ってきます!」

「無駄だよ。王子は剣士じゃなくて魔術士だからね。シモンじゃ分が悪いよ」

「それにあの王子よ?恐らくもうここにはいないわ」

「下手なことをするとケイと会う前に首が飛ぶぞ」

「う…でも、ケイ……」

全員でシモンが向かうのを止める。
行くだけ無駄だ。
相手は遥か上の身分であり、その実力は未知数なのだから。

まともに戦っているのを見たことはないが彼はいつだって無傷でいた。
相手の手の内がまるでわからないのに戦うのは無鉄砲だろう。

「…アタシがケイを1人にしたせいだわ…1人になんてしなければ、こんなことには…」

「いや、あの時エディがあこにいなければ後方の部隊は瓦解していた。お前のせいじゃねえよ」

「そうですよ!まだケイが誘拐されたって決まったわけじゃないし、ここはユリウスさんにでも…」

「そうだね。こういうことはユリウスが適任だ。……で、ユリウスは?」

「……………そういえばいないわね」

「……………………よ、よし、探すか」

ケイに気を取られてユリウスがいないことにまるで気づかなかった面々。

なお、現在ユリウスはケイを追跡中でありました。

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