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Ep.6.5-2《下着を買いに行こう!》

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ヴィオラと話しながら、下着の試着を繰り返していくアーニャ。

「お客様は普段どんな服を着るんですか?」
「え、えーっと……黒い感じの……」
「へぇ、じゃあ黒いのも履いてみますか」

だんだんと下着を脱がされたり、穿かされたりする感覚にも慣れてきた。
そんな中、ヴィオラがこんなことを言い出した。

「そう言えばフロンティアマッチの選手で、エイミーさんって知ってますか?」
「えッ、あっ、ひゃ、はいッ!」

急に知り合いの名前が出てきて、変な声が出てしまう。

「有名ですからね彼女…………ここだけの話なんですけどね。彼女、うちのお店をご贔屓にしていただいてるお客さんの一人なんですよ。それでこの下着、あのエイミーさんも同じものを着てるんです」
「え、ええ……っ!?」

そう言ってヴィオラが取り出した下着は、細かい刺繍模様の入った黒い下着だった。

「ふふっ、そんなに驚くなんて、もしかしてお客さん、エイミーさんのファンだったり?」
「そ、そんなこと…………いや、そんなところです」

一度否定しかけて、冷静になるとそこまで否定する必要もないことだと気づき肯定する。
アーニャは彼女に憧れて彼女のギルドに入団してしまうくらいなので、ファンの中でも相当な部類に入るだろう。

「やっぱりそうなんですねー。じゃあ折角だし、履いちゃいましょうか」
「え……そんな、恐れ多いような……いや、でも……下着なんて人に見せるものじゃないし……」
「いいんですよ、ただ身につけるだけですから、ね?」
「そ、そうです……よね……?」

うんと笑顔でヴィオラが頷き、アーニャの下着を履き替えさせていく。

「エイミーさんと、同じ下着……」

アーニャはかつてないほど心拍数が上がるのを感じていた。
そんなことを考えているうちに、ヴィオラは手際よくアーニャに下着を着せていく。

「ほら、すっごく似合ってますよ?」
「そう、ですかね……?」

どことなく大人っぽいから自分には似合わないだろうと思って避けてきた黒い下着。
ただ下着を変えただけなのに、鏡に映る自分の姿は少しだけ大人びたように見えた。
いや、そんなことよりも尊敬するエイミーと同じ下着を身につけているという高揚感で、似合っているかどうかなんて考える暇はなかった。

(う、うわー……私、エイミーさんと同じ下着、着ちゃってるんだ……)

「どうします? ご購入されますか?」

後ろからヴィオラにそう囁かれて、ハッと正気を取り戻す。

「え、えーっと……いやでも、勝手に同じ下着を身につけるなんておこがましいような……や、でも下着なんて人に見せるものじゃないし……」

分かりやすく狼狽えるアーニャの姿を、ヴィオラはやはりニコニコと見つめていた。

「ところで……アーニャちゃん、お時間は大丈夫ですか」
「え、あっ、はい、時間なら…………えっ?」

その言葉から感じる違和感に、アーニャは少し遅れて気づく。

(わ、私……アーニャって名乗ってないのに……それに時間って、まさか……ッ!)

――ガチャン!

嫌な予感がして後ろを振り向こうとしたその瞬間、右の手首に金属質の冷たい感覚が伝う。

「……え?」

天井から伸びた長い鎖の先には手錠がついており、その手錠がアーニャの右手首に嵌められていた。
これは一体――――そう思った直後、左手からもガチャンと音が鳴り、両手を拘束され自由を奪われる。

「なぁ……っ!?」

天井から伸びた二本の鎖に両手が引っ張られ、アーニャの体はギリギリ床につま先がつく高さで固定される。

「ふふっ、感覚遮断グミの制限時間のことも忘れて下着選びに熱中してくれたんですね。私嬉しいです」
「な、なんでそのことを……」
「だって、私とリリアさんは仲良しですから。私、リリアさんの試合は全部見てるんですよ。もちろん、アーニャさんとの戦いも、ね」

アーニャは自分の迂闊さに嫌気が差す。
まんまとリリアの提案に乗ってしまったが、彼女が考えることなどろくなものである筈がないのだから。

(ま、まずい……グミの効果が切れるまであと――)

「あと30秒ってとこですかね」

ヴィオラが自身の腕輪端末を覗きながらそう答える。
なんでそんなことが分かるのか、一瞬疑問に思うアーニャだったがリリアから情報を貰っていると思えば合点が行く。

(くそ、早くこの拘束を解かなくちゃ……っ!)
「うっ、ぐぅ……っ!」

必死に体を動かして拘束を解こうとするが、ジャラジャラと鎖が擦れる音が鳴り響くだけ。
何か他に方法はないかと探すアーニャだったが、周囲に映る景色は拘束された自分を写す鏡のみ。
そもそもここは戦いの場ですらないため、武器の一つもありはしない。
そんな下着姿で暴れるアーニャを、ヴィオラは後ろから優しく抱き寄せた。

「だーめ、逃がしませんよ。あぁもう、この部屋に入ったときからずっと、顔を赤くして、体をもぞもぞさせて……本当に可愛い……」

耳元でそう語るヴィオラの髪がアーニャの頬に触れ、高級感のある香水の香りが鼻をかすめる。
露出したアーニャの背中に、ヴィオラの身につけているサラサラとしたブラウスの布が接触して、そこからほのかに彼女の体温を感じる。

「なんで、こんなこと……」
「ふふっ、私、恥じらいながら必死になる女の子が大好きなんです。そういえばアーニャさんにかけられた『羞恥による快楽値の上昇量増加の呪い』。あれって私がリリアさんにあげたものなんですよ」
「……ッ!?」

急に予想もしていなかったことを言われ、驚きの表情を見せるアーニャ。
そんなアーニャの表情を、ヴィオラは鏡越しにうっとりとした表情で見つめていた。

「その表情も素敵……もっとたくさん焦らしてあげたいけど、もうすぐ魔法が解ける時間ですね」
「や、いや……っ!」

思い出したように必死に暴れるアーニャ。
だが両手の自由を奪われては、何もできることはない。

「あと10秒……9……8……ふふっ、恥ずかしがり屋のアーニャさんは、きっと体の気持いところを触るまでもなく……果ててしまうかもしれませんね……」

――羞恥による快楽値の上昇量増加の呪い。
その力はリリアと戦ったときに嫌という程思い知らされた。
自分では制御できない感情が直接快楽に変換されるという恐怖。

(だ、だめ、恥ずかしがったら……これ以上意識したら、私は――)

そう心の中で唱えるも、その力は意識の力で塗り替えることはできない。

「2……1……0……さぁ、アーニャさんの最高に可愛いところ、見せてください!」
「あっ……ああッ!?」

――ビクンッ!

体が大きく跳ね、その瞬間、魔法が解ける。
感覚遮断グミの効果が消え、遮断されていた呪いの感覚が一気に解き放たれる。

「あっ、いぁあッ!? あ”あ”あ”あ”――――――ッ!!」

今まで溜まっていた羞恥の感覚が一気に快楽に変換される。
性感帯を責められるでもなく、ただ後ろから抱きしめられているだけのアーニャは体をビクビクと震わせた。
そして先程着せられたばかりの黒いショーツを、自身の愛液で濡らしていくのだった。
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