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第三章
第三章第13話 これってフラグ回収ですか?
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それからもドレスク先輩は延々と魔法の話をしてきましたが、レジーナさんが途中で止めてくれたおかげでなんとかみんなとのバーベキューに戻れました。
もちろん間違って撃ち落としてしまったらしいバードドラゴンも持って帰ります。今は湖面に吊るして血抜きをしています。
「ローザちゃん。大丈夫だった?」
「はい。レジーナ様のおかげで、怖いことはされませんでした」
「良かった……」
リリアちゃんはホッとしたような表情を浮かべています。
「まさかローザさんがバードドラゴン仕留めるとは思ってもみませんでしたの。どうやったんですの?」
「え? えっと……」
「ネダ、たまたまですわ。よろしいですわね?」
「は、はい。わかりましたの」
興味津々な様子で聞いてきたネダさんをレジーナさんがぴしゃりと遮りました。
「それよりもレジーナ様。さすがに肉が多すぎるのではありませんか?」
「そうですわね。わたくしたちだけでは食べきれませんわね」
「あ、大丈夫です。一度焼いてからよく冷ませば、収納に入れていてもかなりの時間保存できます」
「あら、そうですの? 便利ですわね」
「あ、でもちょっとくらいはドレスク先輩におすそ分けしても……」
「いいんですの?」
「はい。この子たちがたくさん食べてもまだ余りますし」
「そう。まあ、あんなでも一応王太子と侯爵家の男ですわ。ローザもきちんとしていますわね」
よく分かりませんが、レジーナさんに褒められました。
こうしてあたしたちはヘラジカとキノコ、お魚に用意してくれたお野菜のバーベキューを楽しんだのでした。お塩や調味料があったので、サバイバルしていたときよりも美味しかったです。やっぱり、調味料は偉大ですね。
◆◇◆
湖畔に張った大きなテントで眠っていたあたしは、ホーちゃんの突然の大きな鳴き声で目を覚ましました。
「ホー! ホー!」
「どうしたんですか?」
「ホー!」
あたしの耳元で大声で鳴きながらテントの外を翼で指示しています。
「え? 外、ですか?」
「ううん……ローザ? どうかしたの?」
「ホー!」
「外で何かがあったみたいなんです」
「外で?」
ヴィーシャさんが起き出してテントから顔を出そうとしたそのときでした。
「嬢ちゃんたち! 大変だ! 早く起きてくれ!」
「どうしたんですか?」
ロバートさんの慌てた声が聞こえてきたので、テントから顔を出そうとしていたヴィーシャさんがそのまま対応します。
「ゴブリンだ! ゴブリンの大群がここを目指して押し寄せてきている! 急いで戦いの準備をしてくれ!」
「ひぅっ」
思わず変な声が出てしまいました。ゴブリンといえば、女の人を攫って酷いことをするあたしの中の滅べばいいランキング第一位の最低最悪な魔物です。
それにしても、ロバートさんはゴブリンくらいしかいないから大丈夫って言っていたのに!
あれ? たしかにゴブリンですね。大群なだけで……。
あ! もしかしてこれ、フラグ回収ってやつですか?
たしか、夢の中でそんなような言葉があったような気がします。
「ローザ? 大丈夫?」
「あ……は、はい。大丈夫です。あたしたちも、戦います」
あっと、いけません。いまはそんなこと考えている暇はないんでした。
「うん。そうだね。でも、まずはリリアを起こさないと」
「はい。あ、あたしが起こすのでヴィーシャさんは支度を」
「ああ。ありがとう」
ヴィーシャさんは制服を着るだけのあたしと比べて鎧を装備しなきゃいけませんからね。
そんなわけで、あたしはホーちゃんがあれだけ大きな声で鳴いていたのに熟睡しているリリアちゃんを起こしにかかります。
「リリアちゃん! ねえ、リリアちゃん! 起きて!」
「ううん……」
まるで起きる気配がありません。口をもごもごと動かしているので、もしかすると何かを食べる夢を見ているのかもしれませんね。
えっと、どうしましょう?
するとユキがトコトコとリリアちゃんの枕元にやってきました。
「え? ユキ」
それからユキは前脚を上げてリリアちゃんの首筋をちょんちょんとつつきました。
「ひぎっ!?」
次の瞬間、リリアちゃんは小さく悲鳴を上げて飛び起きました。
「え? な、何? 冷たい!?」
リリアちゃんはユキが触った首筋に手を当てて不思議そうにしています。
そんなリリアちゃんを見てユキはドヤ顔をしている、ような気がします。
「ユキ! ありがとうございます」
あたしはそんなユキにお礼を言って背中を撫でると、ユキは気持ちよさそうに目を細めました。
「ローザちゃん?」
「あ、えっと、はい。そうでした。ゴブリンの大群が攻めてきているそうなんです」
「えっ?」
「だから、あたしたちも戦わなきゃいけないみたいです」
「そ、そんな……」
「大丈夫だよ。マレスティカ公爵家の騎士たちに王太子殿下の護衛の騎士たちだっているはずだからね。それに私だっているよ。だからリリアは安全な場所で怪我人の手当をお願いすることになるんじゃないかな」
「う、うん」
「とにかく早くテントから出よう。ここじゃあ身動きが取れないからね」
「は、はい」
こうしてあたしたちは急いで着替えるとテントを飛び出すのでした。
===============
次回更新は通常どおり、2021/11/05 (土) 20:00 を予定しております。
もちろん間違って撃ち落としてしまったらしいバードドラゴンも持って帰ります。今は湖面に吊るして血抜きをしています。
「ローザちゃん。大丈夫だった?」
「はい。レジーナ様のおかげで、怖いことはされませんでした」
「良かった……」
リリアちゃんはホッとしたような表情を浮かべています。
「まさかローザさんがバードドラゴン仕留めるとは思ってもみませんでしたの。どうやったんですの?」
「え? えっと……」
「ネダ、たまたまですわ。よろしいですわね?」
「は、はい。わかりましたの」
興味津々な様子で聞いてきたネダさんをレジーナさんがぴしゃりと遮りました。
「それよりもレジーナ様。さすがに肉が多すぎるのではありませんか?」
「そうですわね。わたくしたちだけでは食べきれませんわね」
「あ、大丈夫です。一度焼いてからよく冷ませば、収納に入れていてもかなりの時間保存できます」
「あら、そうですの? 便利ですわね」
「あ、でもちょっとくらいはドレスク先輩におすそ分けしても……」
「いいんですの?」
「はい。この子たちがたくさん食べてもまだ余りますし」
「そう。まあ、あんなでも一応王太子と侯爵家の男ですわ。ローザもきちんとしていますわね」
よく分かりませんが、レジーナさんに褒められました。
こうしてあたしたちはヘラジカとキノコ、お魚に用意してくれたお野菜のバーベキューを楽しんだのでした。お塩や調味料があったので、サバイバルしていたときよりも美味しかったです。やっぱり、調味料は偉大ですね。
◆◇◆
湖畔に張った大きなテントで眠っていたあたしは、ホーちゃんの突然の大きな鳴き声で目を覚ましました。
「ホー! ホー!」
「どうしたんですか?」
「ホー!」
あたしの耳元で大声で鳴きながらテントの外を翼で指示しています。
「え? 外、ですか?」
「ううん……ローザ? どうかしたの?」
「ホー!」
「外で何かがあったみたいなんです」
「外で?」
ヴィーシャさんが起き出してテントから顔を出そうとしたそのときでした。
「嬢ちゃんたち! 大変だ! 早く起きてくれ!」
「どうしたんですか?」
ロバートさんの慌てた声が聞こえてきたので、テントから顔を出そうとしていたヴィーシャさんがそのまま対応します。
「ゴブリンだ! ゴブリンの大群がここを目指して押し寄せてきている! 急いで戦いの準備をしてくれ!」
「ひぅっ」
思わず変な声が出てしまいました。ゴブリンといえば、女の人を攫って酷いことをするあたしの中の滅べばいいランキング第一位の最低最悪な魔物です。
それにしても、ロバートさんはゴブリンくらいしかいないから大丈夫って言っていたのに!
あれ? たしかにゴブリンですね。大群なだけで……。
あ! もしかしてこれ、フラグ回収ってやつですか?
たしか、夢の中でそんなような言葉があったような気がします。
「ローザ? 大丈夫?」
「あ……は、はい。大丈夫です。あたしたちも、戦います」
あっと、いけません。いまはそんなこと考えている暇はないんでした。
「うん。そうだね。でも、まずはリリアを起こさないと」
「はい。あ、あたしが起こすのでヴィーシャさんは支度を」
「ああ。ありがとう」
ヴィーシャさんは制服を着るだけのあたしと比べて鎧を装備しなきゃいけませんからね。
そんなわけで、あたしはホーちゃんがあれだけ大きな声で鳴いていたのに熟睡しているリリアちゃんを起こしにかかります。
「リリアちゃん! ねえ、リリアちゃん! 起きて!」
「ううん……」
まるで起きる気配がありません。口をもごもごと動かしているので、もしかすると何かを食べる夢を見ているのかもしれませんね。
えっと、どうしましょう?
するとユキがトコトコとリリアちゃんの枕元にやってきました。
「え? ユキ」
それからユキは前脚を上げてリリアちゃんの首筋をちょんちょんとつつきました。
「ひぎっ!?」
次の瞬間、リリアちゃんは小さく悲鳴を上げて飛び起きました。
「え? な、何? 冷たい!?」
リリアちゃんはユキが触った首筋に手を当てて不思議そうにしています。
そんなリリアちゃんを見てユキはドヤ顔をしている、ような気がします。
「ユキ! ありがとうございます」
あたしはそんなユキにお礼を言って背中を撫でると、ユキは気持ちよさそうに目を細めました。
「ローザちゃん?」
「あ、えっと、はい。そうでした。ゴブリンの大群が攻めてきているそうなんです」
「えっ?」
「だから、あたしたちも戦わなきゃいけないみたいです」
「そ、そんな……」
「大丈夫だよ。マレスティカ公爵家の騎士たちに王太子殿下の護衛の騎士たちだっているはずだからね。それに私だっているよ。だからリリアは安全な場所で怪我人の手当をお願いすることになるんじゃないかな」
「う、うん」
「とにかく早くテントから出よう。ここじゃあ身動きが取れないからね」
「は、はい」
こうしてあたしたちは急いで着替えるとテントを飛び出すのでした。
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次回更新は通常どおり、2021/11/05 (土) 20:00 を予定しております。
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