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第三章
第三章第29話 決まりました
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誠実で優しくて頼りがいのある男性と結婚するっていうのは、あたしが孤児院にいたころからの夢です。
でも将来そんな素敵な男性と出会えるかどうかは分かりません。
それに、今誰か好きな人がいるわけじゃないんですよね。
あ、でも無理やり変な人と結婚させられるのはイヤですけど……。
「あの、結婚って……」
「ん? ああ、そうだね。前にも言ったかもしれないけれど、うちの子になったら誰でも好きな人と、というわけにはいかなくなるよ。ただ、ローザちゃんの場合は養女だからそこまで厳しくするつもりはないけれど、変な相手だとうちの名前を利用して色々と企む輩もいるからね。そういう連中は駄目かな」
「そうですよね……」
でも、どうやってそういう人を見分ければいいんでしょうか?
「あれ? もしかして、誰か好きな男性でもいるのかな?」
「あ、いえ、そんなわけじゃないんですけど……」
「じゃあ、何か希望があるのかい?」
「えっと、はい。その、誠実で優しくて、あと頼りがいのある男性が……」
あっ! 言っちゃった。恥ずかしいです。
ちらりとアロンさんたちを見てみると、二人ともポカンとした表情であたしのことを見ています。
ああ、そうですよね。きっと、なんて子供っぽいんだって呆れられちゃいましたよね。
「あらあら、ローザちゃんったらそんな程度でいいの?」
「え?」
どういうことでしょう? シモーナさんがなぜかとても嬉しそうにしています。
「身分が高いとか、お金持ちとか、かっこいいとか、そういう希望はないの?」
「えっ? あたし、そんなの別に……」
そもそも、どう考えても無理だと思うんです。
だってあたしは孤児院育ちですから、身分の高い人と結婚しても大変だと思います。
お金持ちだって誠実で優しいかどうかなんて分からないですよね? それにかっこいい人ってすごくモテそうですから、浮気とかしそうなイメージです。
もちろん誠実で優しくて頼りがいのある人が、お金持ちだったりかっこ良かったりしたら嬉しいですけど……。
でも、そんなの無くても困ったら田舎で静かに暮らせればそれでいいと思うんです。
「まあ! なんていい子なんでしょう!」
え? え?
「ローザちゃん、安心なさい? このわたくしが強くて頼りがいがあって、ローザちゃんに一途な優しい男を見つけてあげますわ!」
どういうことでしょう?
どうしてシモーナさんがあたしの結婚相手を見つけるなんて話になっているんでしょうか?
もしかして、貴族って自分で結婚相手を探さないんですか?
あれれ? あ、でもそう言えば前にお話したときもアロンさんがそんなことを言っていたような?
するとアロンさんがコホンと咳ばらいをしました。
「あら、ごめんなさい。わたくしったらつい……」
シモーナさんがそう言って、紅茶を一口啜りました。
「ともかく、そんな程度でいいのなら結婚に関するローザちゃんの希望は叶えられるよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
えっと、他に心配しなきゃいけないことってありましたっけ?
戦争に行かなくても良くって、ユキたちとずっと一緒に暮らせて、お腹いっぱいご飯が食べられる。しかも、誠実で優しくて頼りがいのある男性とさせてくれる。
あれ? もしかしてあたしの夢、全部叶うんじゃないでしょうか?
そう思った瞬間、あたしはアロンさんたちにお願いしていました。
「あの、あたしをアロンさんとシモーナさんの娘にしてください」
「え? そんなにすぐに決めていいのかい?」
「はい。えっと、心配していたことは大丈夫ってわかりましたし、オフェリアさんも勧めてくれていたんです」
「そうなのかい?」
「はい。あ、えっと、これを渡しなさいって……」
あたしはオフェリアさんがくれた推薦状の入った封筒を手渡しました。
「うん? なになに? これは……!」
開封して中身を見たアロンさんはすぐに真剣な表情となりました。
「どうなさいましたの?」
シモーナさんも推薦状を渡されて読むと、真剣な表情になります。
「ローザちゃん。この推薦状に何が書かれているか、教えてもらっていますの?」
「え? あたしは何も……」
どういうことでしょうか? 何か良くないことでも書いてあったのでしょうか?
あ、でもオフェリアさんがそんなことをするとは思えませんけど……。
「……そう。大丈夫ですわよ」
シモーナさんは優しげな微笑みを浮かべてあたしのところにやってくると、ぎゅっと抱きしめてくれました。
「これからはわたくしがあなたの母ですからね。もう安心なさい」
「あ……」
どうなっているんでしょうか?
よく分かりませんが、なんだか暖かい気持ちになります。
「えっと、よろしくお願いします……」
「ええ! ええ!」
シモーナさんはそう言って、またぎゅっと強く抱きしめてくれたのでした。
================
次回更新は通常どおり 2022/03/05 (土) 20:00 を予定しております。
でも将来そんな素敵な男性と出会えるかどうかは分かりません。
それに、今誰か好きな人がいるわけじゃないんですよね。
あ、でも無理やり変な人と結婚させられるのはイヤですけど……。
「あの、結婚って……」
「ん? ああ、そうだね。前にも言ったかもしれないけれど、うちの子になったら誰でも好きな人と、というわけにはいかなくなるよ。ただ、ローザちゃんの場合は養女だからそこまで厳しくするつもりはないけれど、変な相手だとうちの名前を利用して色々と企む輩もいるからね。そういう連中は駄目かな」
「そうですよね……」
でも、どうやってそういう人を見分ければいいんでしょうか?
「あれ? もしかして、誰か好きな男性でもいるのかな?」
「あ、いえ、そんなわけじゃないんですけど……」
「じゃあ、何か希望があるのかい?」
「えっと、はい。その、誠実で優しくて、あと頼りがいのある男性が……」
あっ! 言っちゃった。恥ずかしいです。
ちらりとアロンさんたちを見てみると、二人ともポカンとした表情であたしのことを見ています。
ああ、そうですよね。きっと、なんて子供っぽいんだって呆れられちゃいましたよね。
「あらあら、ローザちゃんったらそんな程度でいいの?」
「え?」
どういうことでしょう? シモーナさんがなぜかとても嬉しそうにしています。
「身分が高いとか、お金持ちとか、かっこいいとか、そういう希望はないの?」
「えっ? あたし、そんなの別に……」
そもそも、どう考えても無理だと思うんです。
だってあたしは孤児院育ちですから、身分の高い人と結婚しても大変だと思います。
お金持ちだって誠実で優しいかどうかなんて分からないですよね? それにかっこいい人ってすごくモテそうですから、浮気とかしそうなイメージです。
もちろん誠実で優しくて頼りがいのある人が、お金持ちだったりかっこ良かったりしたら嬉しいですけど……。
でも、そんなの無くても困ったら田舎で静かに暮らせればそれでいいと思うんです。
「まあ! なんていい子なんでしょう!」
え? え?
「ローザちゃん、安心なさい? このわたくしが強くて頼りがいがあって、ローザちゃんに一途な優しい男を見つけてあげますわ!」
どういうことでしょう?
どうしてシモーナさんがあたしの結婚相手を見つけるなんて話になっているんでしょうか?
もしかして、貴族って自分で結婚相手を探さないんですか?
あれれ? あ、でもそう言えば前にお話したときもアロンさんがそんなことを言っていたような?
するとアロンさんがコホンと咳ばらいをしました。
「あら、ごめんなさい。わたくしったらつい……」
シモーナさんがそう言って、紅茶を一口啜りました。
「ともかく、そんな程度でいいのなら結婚に関するローザちゃんの希望は叶えられるよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
えっと、他に心配しなきゃいけないことってありましたっけ?
戦争に行かなくても良くって、ユキたちとずっと一緒に暮らせて、お腹いっぱいご飯が食べられる。しかも、誠実で優しくて頼りがいのある男性とさせてくれる。
あれ? もしかしてあたしの夢、全部叶うんじゃないでしょうか?
そう思った瞬間、あたしはアロンさんたちにお願いしていました。
「あの、あたしをアロンさんとシモーナさんの娘にしてください」
「え? そんなにすぐに決めていいのかい?」
「はい。えっと、心配していたことは大丈夫ってわかりましたし、オフェリアさんも勧めてくれていたんです」
「そうなのかい?」
「はい。あ、えっと、これを渡しなさいって……」
あたしはオフェリアさんがくれた推薦状の入った封筒を手渡しました。
「うん? なになに? これは……!」
開封して中身を見たアロンさんはすぐに真剣な表情となりました。
「どうなさいましたの?」
シモーナさんも推薦状を渡されて読むと、真剣な表情になります。
「ローザちゃん。この推薦状に何が書かれているか、教えてもらっていますの?」
「え? あたしは何も……」
どういうことでしょうか? 何か良くないことでも書いてあったのでしょうか?
あ、でもオフェリアさんがそんなことをするとは思えませんけど……。
「……そう。大丈夫ですわよ」
シモーナさんは優しげな微笑みを浮かべてあたしのところにやってくると、ぎゅっと抱きしめてくれました。
「これからはわたくしがあなたの母ですからね。もう安心なさい」
「あ……」
どうなっているんでしょうか?
よく分かりませんが、なんだか暖かい気持ちになります。
「えっと、よろしくお願いします……」
「ええ! ええ!」
シモーナさんはそう言って、またぎゅっと強く抱きしめてくれたのでした。
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