114 / 227
第三章
第三章第30話 学園際の準備をします
しおりを挟む
アロンさんとシモーナさんはすぐにあたしを養女にする手続きを始めてくれました。
ただ手続きにはちょっと時間がかかるらしく、発表は年末から来年の春にかけてくらいになるのだそうです。
それまでは秘密にしていなくちゃいけなくて、義理のお姉さんになるレジーナさんとも今までどおりに接する必要があるそうです。
でもレジーナさんは今までだってとても良くしてくれましたし、あの王太子様の足を踏んづけて守ってくれるとてもいい人です。だから、レジーナさんとは今のままでも大丈夫だと思います。
そんなこんなで季節は流れ、魔法学園に学園祭の季節がやってきました。
学園祭っていうのはですね。学生たちが日頃の鍛練の成果を発表する場所なんだそうです。
魔術選手権っていう魔術を使って学園で一番強い魔術の使い手を選ぶ大会も開催されるんですけど、その大会はあのときの決闘場であの決闘のときと同じ形式で勝負をするんだそうです。
あたしですか? もちろん参加しませんよ。
だってあたしのは魔術じゃなくて魔法なので、きっと反則になるんじゃないでしょうか?
それにもし反則じゃなくても、あたしの魔法で攻撃に使えるのは炎弾と魔力弾ですからね。きっと、勝っても負けても相手に大怪我をさせちゃいますから。
大体、あたしは戦うのってあまり好きじゃないんです。殺されそうになったら仕方ないですけど、わざわざ誰かを攻撃したりなんてイヤです。
だから、あたしは料理研究会のほうで参加しますよ。
料理研究会では何をやるかと言うとですね。なんと喫茶店をやるんです。
ウェイトレスさんの服を着て、紅茶や手作りのお菓子やお料理を振る舞うんです。
しかも、ウェイトレスさんの服も自分たちで用意するんですよ。
えへへ、なんだかとっても楽しそうだと思いませんか?
◆◇◆
「それじゃあ、今年の担当を決めましょう」
ある日の放課後、料理研究会の調理室に集まった私たちにフロレンティーナ先輩がそう言いました。
「ウェイトレスの制服を準備する担当、食材の仕入れ担当、それから足りない食器の購入担当、あとは設営担当に別れて担当してもらうわ。当日の調理と洗い場、接客、それから呼び込みはシフト制でお願いね」
そうなんですね。なんだか喫茶店をやるだけでも大変そうです。
「んじゃ、制服はあたいが引き受けるぜ。ディタさんとこで頼めばいいんだろ?」
早速ザビーネ先輩が手を挙げました。
「ええ。よろしくね。毎年だからスケジュールは開けてくれているはずよ」
「やったぜ。あとは一年にサポートをしてもらうから……お! そうだ! ローザ、お前来いよ」
「え? あたしですか?」
「ああ。絶対ディタさん、ローザのこと気に入るぜ」
「え? え?」
よく分かりませんけど、ディタさんという人があたしたちのウェイトレスの服を作ってくれるみたいです。
「そうね。それじゃあ制服はザビーネとローザちゃんでお願いね」
「え? あ、はい。わかりました」
「任せろ」
よく分かりませんが、あたしは制服係になったみたいです。
でも制服係ってことは、試着もさせてもらえるんですよね?
えへへ、それはちょっと楽しみです。
一体どんな制服になるんでしょうか?
◆◇◆
翌日の放課後、あたしはザビーネ先輩と一緒に町の中心部にある大きなブティックへやってきました。
「ここがディタさんのブティックだぜ」
なんだか高級そうなお洋服がたくさん飾られています。でも高級そうなのに派手だったり下品だったりということはありません。どれもとっても上品で、なんだか、こう、ものすごくオシャレな感じです。
ただ、こんな高級品ばかりが置いてあるお店にあたしなんかが入っていいんでしょうか?
「さあ、入るぜ」
「は、はい」
そうしてザビーネ先輩の後についてお店に入ると、すぐに一人の男性が近寄ってきました。
背はかなり高くて、髪も短くこざっぱりとまとめられています。顔はものすごい端正で、しかもまるで女性のようにばっちりとメイクをしていて……。
あれ? 男性? あれれ? 女性……?
「あらあらあら、ザビーネちゃんじゃない。学園祭の制服の件よね? あら? そっちの子は一年生? あらあらあら、カワイイわぁ~」
その人から発せられた声は、なんだかとっても渋くてダンディーな感じです。
え? え? え?
「あらあらあら、どうしたの?」
「ディタさん、すんません。ちゃんと説明してませんでした。この子はローザっていう一年生の子です」
「あらあらあら、そうなのねぇ」
「あ、えっと、えっと、ローザです」
「そう。よろしくねぇ。あたしはディートリッヒ、ディタって呼んでね♡」
「え……」
もう、さっぱり意味が分かりません。
ディートリッヒってことは、男性、なんですよね?
それなのにどうしてディタって女性の愛称で呼ばれていて、女性みたいな話し方をしているんでしょうか?
「あらあらあら、固まっちゃったわぁ。本当に、カワイイわねぇ」
「ローザ、ディタさんはな。性別なんて概念を超越した美の追求者なんだ」
えっと? えっと?
「性別なんて概念に囚われていたら本当の美しさは分からないってことだよ。その第一人者がディタさんなんだ」
……何を言っているのかさっぱりわかりません。
「ん~、本当にカワイイわねぇ」
そう言いながらディタさんはあたしのことをジロジロと見回していきます。
「閃いたわ! ええ! ええ! あたしに任せなさい!」
「ありがとうございますっ!」
ザビーネ先輩が元気よくディタさんにお礼を言います。
「えっと、ありがとうございます?」
「ええ! ローザちゃん、あたしがあなたに一番似合う服を作ってあげるわ!」
こうして男性なのか女性なのかよく分からないディタさんに制服の製作を依頼し、あたしたちはお店を後にしました。
「くぅ~! やっぱりディタさんは最高だったなぁ」
帰り道でザビーネ先輩が何度もそんな独り言を呟いていましたが、あたしはなんと返事をしたらいいかわからずに黙って後をついて歩いたのでした。
ただ手続きにはちょっと時間がかかるらしく、発表は年末から来年の春にかけてくらいになるのだそうです。
それまでは秘密にしていなくちゃいけなくて、義理のお姉さんになるレジーナさんとも今までどおりに接する必要があるそうです。
でもレジーナさんは今までだってとても良くしてくれましたし、あの王太子様の足を踏んづけて守ってくれるとてもいい人です。だから、レジーナさんとは今のままでも大丈夫だと思います。
そんなこんなで季節は流れ、魔法学園に学園祭の季節がやってきました。
学園祭っていうのはですね。学生たちが日頃の鍛練の成果を発表する場所なんだそうです。
魔術選手権っていう魔術を使って学園で一番強い魔術の使い手を選ぶ大会も開催されるんですけど、その大会はあのときの決闘場であの決闘のときと同じ形式で勝負をするんだそうです。
あたしですか? もちろん参加しませんよ。
だってあたしのは魔術じゃなくて魔法なので、きっと反則になるんじゃないでしょうか?
それにもし反則じゃなくても、あたしの魔法で攻撃に使えるのは炎弾と魔力弾ですからね。きっと、勝っても負けても相手に大怪我をさせちゃいますから。
大体、あたしは戦うのってあまり好きじゃないんです。殺されそうになったら仕方ないですけど、わざわざ誰かを攻撃したりなんてイヤです。
だから、あたしは料理研究会のほうで参加しますよ。
料理研究会では何をやるかと言うとですね。なんと喫茶店をやるんです。
ウェイトレスさんの服を着て、紅茶や手作りのお菓子やお料理を振る舞うんです。
しかも、ウェイトレスさんの服も自分たちで用意するんですよ。
えへへ、なんだかとっても楽しそうだと思いませんか?
◆◇◆
「それじゃあ、今年の担当を決めましょう」
ある日の放課後、料理研究会の調理室に集まった私たちにフロレンティーナ先輩がそう言いました。
「ウェイトレスの制服を準備する担当、食材の仕入れ担当、それから足りない食器の購入担当、あとは設営担当に別れて担当してもらうわ。当日の調理と洗い場、接客、それから呼び込みはシフト制でお願いね」
そうなんですね。なんだか喫茶店をやるだけでも大変そうです。
「んじゃ、制服はあたいが引き受けるぜ。ディタさんとこで頼めばいいんだろ?」
早速ザビーネ先輩が手を挙げました。
「ええ。よろしくね。毎年だからスケジュールは開けてくれているはずよ」
「やったぜ。あとは一年にサポートをしてもらうから……お! そうだ! ローザ、お前来いよ」
「え? あたしですか?」
「ああ。絶対ディタさん、ローザのこと気に入るぜ」
「え? え?」
よく分かりませんけど、ディタさんという人があたしたちのウェイトレスの服を作ってくれるみたいです。
「そうね。それじゃあ制服はザビーネとローザちゃんでお願いね」
「え? あ、はい。わかりました」
「任せろ」
よく分かりませんが、あたしは制服係になったみたいです。
でも制服係ってことは、試着もさせてもらえるんですよね?
えへへ、それはちょっと楽しみです。
一体どんな制服になるんでしょうか?
◆◇◆
翌日の放課後、あたしはザビーネ先輩と一緒に町の中心部にある大きなブティックへやってきました。
「ここがディタさんのブティックだぜ」
なんだか高級そうなお洋服がたくさん飾られています。でも高級そうなのに派手だったり下品だったりということはありません。どれもとっても上品で、なんだか、こう、ものすごくオシャレな感じです。
ただ、こんな高級品ばかりが置いてあるお店にあたしなんかが入っていいんでしょうか?
「さあ、入るぜ」
「は、はい」
そうしてザビーネ先輩の後についてお店に入ると、すぐに一人の男性が近寄ってきました。
背はかなり高くて、髪も短くこざっぱりとまとめられています。顔はものすごい端正で、しかもまるで女性のようにばっちりとメイクをしていて……。
あれ? 男性? あれれ? 女性……?
「あらあらあら、ザビーネちゃんじゃない。学園祭の制服の件よね? あら? そっちの子は一年生? あらあらあら、カワイイわぁ~」
その人から発せられた声は、なんだかとっても渋くてダンディーな感じです。
え? え? え?
「あらあらあら、どうしたの?」
「ディタさん、すんません。ちゃんと説明してませんでした。この子はローザっていう一年生の子です」
「あらあらあら、そうなのねぇ」
「あ、えっと、えっと、ローザです」
「そう。よろしくねぇ。あたしはディートリッヒ、ディタって呼んでね♡」
「え……」
もう、さっぱり意味が分かりません。
ディートリッヒってことは、男性、なんですよね?
それなのにどうしてディタって女性の愛称で呼ばれていて、女性みたいな話し方をしているんでしょうか?
「あらあらあら、固まっちゃったわぁ。本当に、カワイイわねぇ」
「ローザ、ディタさんはな。性別なんて概念を超越した美の追求者なんだ」
えっと? えっと?
「性別なんて概念に囚われていたら本当の美しさは分からないってことだよ。その第一人者がディタさんなんだ」
……何を言っているのかさっぱりわかりません。
「ん~、本当にカワイイわねぇ」
そう言いながらディタさんはあたしのことをジロジロと見回していきます。
「閃いたわ! ええ! ええ! あたしに任せなさい!」
「ありがとうございますっ!」
ザビーネ先輩が元気よくディタさんにお礼を言います。
「えっと、ありがとうございます?」
「ええ! ローザちゃん、あたしがあなたに一番似合う服を作ってあげるわ!」
こうして男性なのか女性なのかよく分からないディタさんに制服の製作を依頼し、あたしたちはお店を後にしました。
「くぅ~! やっぱりディタさんは最高だったなぁ」
帰り道でザビーネ先輩が何度もそんな独り言を呟いていましたが、あたしはなんと返事をしたらいいかわからずに黙って後をついて歩いたのでした。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
905
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる