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第四章
第四章第1話 新しい年を迎えました
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一週間にわたって開催されたお祭りが終わり、新しい年を迎えました。
去年は本当に色々なことがありました。レオシュのせいでオーデルラーヴァから逃げなきゃいけなくなって、でもそのおかげで魔法学園の生徒になってなんだか普通の子みたいに生活できるようになりました。そのうえマレスティカ公爵家の養女にしてもらえることになってますし、なんだか夢みたいです。
ただ、やっぱり第七隊のお姉さんたちが心配なんです。オーデルラーヴァでは本当に優しくしてくれましたし……。
ああ、オフェリアさんたちは大丈夫でしょうか。無事でいてくれるといいんですけど……。
「おや、まだ起きていたのかい?」
「あ……」
なんだか寝付けなくて、広間にある暖炉の前でゆらゆらと燃える火を眺めていると、アロンさんが声を掛けてきました。
あ、あたしは今、レジーナさんのお家でお世話になっているんです。どうせ家族になるのだからお休みの間はうちで過ごせばいいって言ってくれて、それでお邪魔しているんです。
「オーデルラーヴァのことが心配なのかい?」
「はい。その、オフェリアさんたちは……」
するとアロンさんは申し訳なさそうに首を横に振りました。
「残念ながら何も分かっていないんだ」
「そう、ですか……」
「でも今調べているからね。きっと情報が入ってくる。オフェリア殿が見つかればすぐに知らせてあげるよ」
「はい。ありがとうございます」
あたしは明るくそう答えたつもりでしたが、アロンさんを益々心配させてしまったみたいです。
「ほら、オフェリア・ピャスク殿は天才魔法剣士とまで評されてた人物だ。きっとどこかで無事でいるはずだよ」
「はい……」
そうだといいんですけど……。
「あら? ローザちゃんったら、まだ起きていたの? そろそろ寝ないと成長に良くありませんよ。今が成長期ですからね」
「あ……」
シモーナさんにも心配されてしまいました。
「それとも、わたくしが子守歌でも歌ってあげようかしら?」
「えっ!? あ、えっと、だ、大丈夫です」
シモーナさんがまるでいたずらっ子のような笑みを浮かべながらそんなことを言ってきました。
「そう。ならそろそろお部屋に戻りなさい。いいですわね?」
「はい」
びっくりしましたが、なんだか少しだけ気持ちが軽くなりました。
「えっと、それじゃあ、おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
「おやすみ」
「えっと、ユキ、行きましょう」
「ミャー」
あたしは膝に乗って丸まっていたユキを降ろすと、自分の部屋へと向かうのでした。
◆◇◆
そうこうしているうちに、ちょっとずつオーデルラーヴァの情報が入ってきました。
といってもオフェリアさんたちのことは相変わらず分からないんですが、良くない状況になっているということだけは分かりました。
まず、マルダキア魔法王国でもオーデルラーヴァでクーデターが起こったことは普通の人たちでも知っている話になりました。
というのもマルダキア魔法王国、レフ公子のカルリア公国、それとあの孤児院があるベルーシ王国がクーデターによって建国されたオーデルラーヴァ王国を認めなかったんです。それで、マルダキア魔法王国は国境に軍隊を派遣して、砦を作って通行を制限しました。
そんなわけで、フドネラの町は今かなり大変な状況になっているみたいです。
……そういえばあたしたちを乗せてくれた御者さんは大丈夫なんでしょうか? たしかオーデルラーヴァとフドネラの間の許可証しか持っていないって言っていましたから、ちょっと心配です。
それにフドネラといえば親切な門番さんもいましたね。あの門番さんは元気でしょうか?
あ、そうそう。それとですね。砦を作って通行を制限したせいで、商人さんたちが商品を運ぶルートが変わったそうです。
オーデルラーヴァって、北のマルダキア魔法王国と西のベルーシ王国、南のハプルッセン帝国、それに東の国へと続く道のちょうど交差点の町じゃないですか。
オフェリアさんも言っていたと思うんですけど、その立地を活かして商人から税金を取って国を運営していたんですよね。
でもこんな状況になってしまったので、東の国々とマルダキア魔法王国との間にオーデルラーヴァを通らない道を整備しているそうです。そうすればカルリア公国やベルーシ王国へ行く東の国の商人さんたちがオーデルラーヴァを通らないで済むようになるので、オーデルラーヴァは困ったことになるんだって、アロンさんが言っていました。
あたしは難しいことは分からないですけど、税金が取れなくなるみたいなので、クーデターなんかを起こして王様になった人はきっと困るんだと思います。
ただ、ちょっと心配なのはオーデルラーヴァで聖ルクシア教会に反対する人たちが次々と失踪しているらしいんです。
ほとんどの人は一週間くらいすると戻ってくるらしいんですけど、なんだか人が変わったみたいになっているらしいんですよね。
何をされたのかは皆教えてくれないそうなんですけど、急に聖ルクシア教会の信者になったり、信者にはならなくても聖ルクシア教会の批判をしなくなったりしているそうです。
ちょっと、怖いですよね。やっぱり聖ルクシア教会って、怖い人たちみたいです。この国にもいるらしいですけど、どうしてそんな怖い教会の信者になるんでしょうね?
ああ、それにしても心配です。オフェリアさんたちがどうか無事でいてくれますように。
================
次回更新は通常どおり、2022/12/03 (土) 20:00 を予定しております。
去年は本当に色々なことがありました。レオシュのせいでオーデルラーヴァから逃げなきゃいけなくなって、でもそのおかげで魔法学園の生徒になってなんだか普通の子みたいに生活できるようになりました。そのうえマレスティカ公爵家の養女にしてもらえることになってますし、なんだか夢みたいです。
ただ、やっぱり第七隊のお姉さんたちが心配なんです。オーデルラーヴァでは本当に優しくしてくれましたし……。
ああ、オフェリアさんたちは大丈夫でしょうか。無事でいてくれるといいんですけど……。
「おや、まだ起きていたのかい?」
「あ……」
なんだか寝付けなくて、広間にある暖炉の前でゆらゆらと燃える火を眺めていると、アロンさんが声を掛けてきました。
あ、あたしは今、レジーナさんのお家でお世話になっているんです。どうせ家族になるのだからお休みの間はうちで過ごせばいいって言ってくれて、それでお邪魔しているんです。
「オーデルラーヴァのことが心配なのかい?」
「はい。その、オフェリアさんたちは……」
するとアロンさんは申し訳なさそうに首を横に振りました。
「残念ながら何も分かっていないんだ」
「そう、ですか……」
「でも今調べているからね。きっと情報が入ってくる。オフェリア殿が見つかればすぐに知らせてあげるよ」
「はい。ありがとうございます」
あたしは明るくそう答えたつもりでしたが、アロンさんを益々心配させてしまったみたいです。
「ほら、オフェリア・ピャスク殿は天才魔法剣士とまで評されてた人物だ。きっとどこかで無事でいるはずだよ」
「はい……」
そうだといいんですけど……。
「あら? ローザちゃんったら、まだ起きていたの? そろそろ寝ないと成長に良くありませんよ。今が成長期ですからね」
「あ……」
シモーナさんにも心配されてしまいました。
「それとも、わたくしが子守歌でも歌ってあげようかしら?」
「えっ!? あ、えっと、だ、大丈夫です」
シモーナさんがまるでいたずらっ子のような笑みを浮かべながらそんなことを言ってきました。
「そう。ならそろそろお部屋に戻りなさい。いいですわね?」
「はい」
びっくりしましたが、なんだか少しだけ気持ちが軽くなりました。
「えっと、それじゃあ、おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
「おやすみ」
「えっと、ユキ、行きましょう」
「ミャー」
あたしは膝に乗って丸まっていたユキを降ろすと、自分の部屋へと向かうのでした。
◆◇◆
そうこうしているうちに、ちょっとずつオーデルラーヴァの情報が入ってきました。
といってもオフェリアさんたちのことは相変わらず分からないんですが、良くない状況になっているということだけは分かりました。
まず、マルダキア魔法王国でもオーデルラーヴァでクーデターが起こったことは普通の人たちでも知っている話になりました。
というのもマルダキア魔法王国、レフ公子のカルリア公国、それとあの孤児院があるベルーシ王国がクーデターによって建国されたオーデルラーヴァ王国を認めなかったんです。それで、マルダキア魔法王国は国境に軍隊を派遣して、砦を作って通行を制限しました。
そんなわけで、フドネラの町は今かなり大変な状況になっているみたいです。
……そういえばあたしたちを乗せてくれた御者さんは大丈夫なんでしょうか? たしかオーデルラーヴァとフドネラの間の許可証しか持っていないって言っていましたから、ちょっと心配です。
それにフドネラといえば親切な門番さんもいましたね。あの門番さんは元気でしょうか?
あ、そうそう。それとですね。砦を作って通行を制限したせいで、商人さんたちが商品を運ぶルートが変わったそうです。
オーデルラーヴァって、北のマルダキア魔法王国と西のベルーシ王国、南のハプルッセン帝国、それに東の国へと続く道のちょうど交差点の町じゃないですか。
オフェリアさんも言っていたと思うんですけど、その立地を活かして商人から税金を取って国を運営していたんですよね。
でもこんな状況になってしまったので、東の国々とマルダキア魔法王国との間にオーデルラーヴァを通らない道を整備しているそうです。そうすればカルリア公国やベルーシ王国へ行く東の国の商人さんたちがオーデルラーヴァを通らないで済むようになるので、オーデルラーヴァは困ったことになるんだって、アロンさんが言っていました。
あたしは難しいことは分からないですけど、税金が取れなくなるみたいなので、クーデターなんかを起こして王様になった人はきっと困るんだと思います。
ただ、ちょっと心配なのはオーデルラーヴァで聖ルクシア教会に反対する人たちが次々と失踪しているらしいんです。
ほとんどの人は一週間くらいすると戻ってくるらしいんですけど、なんだか人が変わったみたいになっているらしいんですよね。
何をされたのかは皆教えてくれないそうなんですけど、急に聖ルクシア教会の信者になったり、信者にはならなくても聖ルクシア教会の批判をしなくなったりしているそうです。
ちょっと、怖いですよね。やっぱり聖ルクシア教会って、怖い人たちみたいです。この国にもいるらしいですけど、どうしてそんな怖い教会の信者になるんでしょうね?
ああ、それにしても心配です。オフェリアさんたちがどうか無事でいてくれますように。
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