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第四章
第四章第31話 お引っ越ししました
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お披露目パーティーが終わり、正式にマレスティカ公爵家の一員となったあたしはすぐに上の階のお部屋にお引っ越ししました。
前にお義姉さまのお部屋でお手紙の書き方を教えてもらったときも思いましたけど、上の階ってなんだか雰囲気が全然違うんですよね。別に床や壁が下の階と違うわけじゃないんですけど、入るときにチェックがあったり、誰かが連れてきたメイドさんが働いていたりするからでしょうか?
あとお部屋は全然違います。
まず家具、それにカーテンなんかの内装は自分たちで揃えることになっているんです。あたしのお部屋の家具はお義母さまが用意してくれて、お部屋に行ったらもうすべて準備されていました。
そして一番大きな違いは一人部屋だっていうことです。あたしはヴィーシャさんと相部屋で楽しかったので、ちょっと残念ですね。メイドさん兼護衛役を連れてくることはできるそうですけど、あたしにそういう人はついていません。
あ! それはあたしが養女だからということではなくってですね。マレスティカ公爵家では自分のことは自分でできるようにするため、代々連れて行かないことになっているんだそうです。
だからメイドがいないのはお義姉さまも一緒です。
あ! そうそう。それでですね。ヴィーシャさんのお部屋にはリリアちゃんが入ることになったそうですよ。ちょっとうらやましいです。
そんなことを考えていると、お部屋の扉がノックされました。
「はーい」
「わたくしですわ。入りますわよ?」
「あ、はい。どうぞ」
扉が開き、お義姉さまが入ってきました。
「片づけは……終わっているようですわね」
「はい」
「なら、少しいいかしら? リリアのことで、先に伝えておくことがあるんですの」
「え? リリアちゃんの?」
「ええ。ローザはあの者と仲がいいでしょう?」
「はい。その、何があったんですか?」
「大したことではありませんわ。わたくしたちのマレスティカ公爵家は、彼女の後見人の座を退くことになりましたの」
「えっ!? じゃ、じゃあ……」
「安心なさい。後任は王家ですわ」
「で、でも……」
「仕方のないことですわ」
「仕方ない?」
「ええ。元々、わたくしたちが光属性の適性を持つ生徒二人の後ろ盾となっていることに対する反発がありましたわ」
「反発……」
「ええ。特に治癒魔術は誰もが欲しがるものですわ。それを利用すれば簡単に権力を握れますもの。だからこそ、わたくしたちはあなたたちを庇護することだけを行っていましたわ。その証拠に、わたくしたちがローザたちに何かを強制したことはなかったでしょう?」
「はい。そうでした」
「ただ、さすがに一人を養女にしたとなると話は別ですわ。二人の扱いが不平等だと言いがかりをつける者もいますし、逆にリリアも養女にしたとしても、政略結婚で家門の権勢を拡大するために使うに違いないと考える者もいますわ」
「そんなこと……」
「ええ。わたくしたちはそんなことをする気がなくても、そうは思わない者たち、それにマレスティカ公爵家の力がこれ以上増えることを望まない勢力もたくさんいるということですわ」
「……」
「幸い、王家もわたくしたちと近い考え方ですわ。だから少なくともリリアを利用し、良からぬことを考えることはないはずですわ」
「はい……」
えっと、本当に大丈夫なんでしょうか。王様はなんだかちょっと怖かったですし、それに王太子様は……。
そう考えたところで、突然背筋に悪寒が走りました。
「……ローザ、王太子殿下は胸の大きな女でなければ大丈夫ですわ」
「えっ?」
ど、どうしてあたしが王太子様のことを考えているって分かったんでしょうか?
「それに、いずれわたくしが王太子殿下と結婚しますわ。だから大丈夫ですわよ」
お義姉さまはそう言って複雑な表情になりました。
えっと……はい。そうですね。きっと大丈夫です。
「あと、これを渡しておきますわ」
お義姉さまは複雑な装飾のついている綺麗なペンダントを差し出してきました。
あれ? ペンダントトップに描かれているのって、マレスティカ公爵家の紋章、ですよね?
「えっと、これは?」
「これはローザがマレスティカ公爵家の者であることを証明するものですわ。ここを押すと――」
なんとペンダントトップがパカッと開きました!
「え? 時計になってるんですか?」
「ええ、魔力時計ですわ。魔力の込め方は分かりますわね?」
「は、はい」
自分の魔力を時計に流すと、時計全体が淡い光に包まれました。
「これでローザ以外の者がそのペンダントを身に着けることは出来なくなりましたわ」
えっと、魔術ってそんなこともできるんですね。すごいです。
「そのペンダントは肌身離さず着けていなさい」
「わかりました」
「それじゃあ、夕食にしましょう?」
「はい」
こうしてあたしはお義姉さまに連れられ、食堂へと向かうのでした。
================
次回更新は通常どおり、2023/07/01 (土) 20:00 を予定しております。
前にお義姉さまのお部屋でお手紙の書き方を教えてもらったときも思いましたけど、上の階ってなんだか雰囲気が全然違うんですよね。別に床や壁が下の階と違うわけじゃないんですけど、入るときにチェックがあったり、誰かが連れてきたメイドさんが働いていたりするからでしょうか?
あとお部屋は全然違います。
まず家具、それにカーテンなんかの内装は自分たちで揃えることになっているんです。あたしのお部屋の家具はお義母さまが用意してくれて、お部屋に行ったらもうすべて準備されていました。
そして一番大きな違いは一人部屋だっていうことです。あたしはヴィーシャさんと相部屋で楽しかったので、ちょっと残念ですね。メイドさん兼護衛役を連れてくることはできるそうですけど、あたしにそういう人はついていません。
あ! それはあたしが養女だからということではなくってですね。マレスティカ公爵家では自分のことは自分でできるようにするため、代々連れて行かないことになっているんだそうです。
だからメイドがいないのはお義姉さまも一緒です。
あ! そうそう。それでですね。ヴィーシャさんのお部屋にはリリアちゃんが入ることになったそうですよ。ちょっとうらやましいです。
そんなことを考えていると、お部屋の扉がノックされました。
「はーい」
「わたくしですわ。入りますわよ?」
「あ、はい。どうぞ」
扉が開き、お義姉さまが入ってきました。
「片づけは……終わっているようですわね」
「はい」
「なら、少しいいかしら? リリアのことで、先に伝えておくことがあるんですの」
「え? リリアちゃんの?」
「ええ。ローザはあの者と仲がいいでしょう?」
「はい。その、何があったんですか?」
「大したことではありませんわ。わたくしたちのマレスティカ公爵家は、彼女の後見人の座を退くことになりましたの」
「えっ!? じゃ、じゃあ……」
「安心なさい。後任は王家ですわ」
「で、でも……」
「仕方のないことですわ」
「仕方ない?」
「ええ。元々、わたくしたちが光属性の適性を持つ生徒二人の後ろ盾となっていることに対する反発がありましたわ」
「反発……」
「ええ。特に治癒魔術は誰もが欲しがるものですわ。それを利用すれば簡単に権力を握れますもの。だからこそ、わたくしたちはあなたたちを庇護することだけを行っていましたわ。その証拠に、わたくしたちがローザたちに何かを強制したことはなかったでしょう?」
「はい。そうでした」
「ただ、さすがに一人を養女にしたとなると話は別ですわ。二人の扱いが不平等だと言いがかりをつける者もいますし、逆にリリアも養女にしたとしても、政略結婚で家門の権勢を拡大するために使うに違いないと考える者もいますわ」
「そんなこと……」
「ええ。わたくしたちはそんなことをする気がなくても、そうは思わない者たち、それにマレスティカ公爵家の力がこれ以上増えることを望まない勢力もたくさんいるということですわ」
「……」
「幸い、王家もわたくしたちと近い考え方ですわ。だから少なくともリリアを利用し、良からぬことを考えることはないはずですわ」
「はい……」
えっと、本当に大丈夫なんでしょうか。王様はなんだかちょっと怖かったですし、それに王太子様は……。
そう考えたところで、突然背筋に悪寒が走りました。
「……ローザ、王太子殿下は胸の大きな女でなければ大丈夫ですわ」
「えっ?」
ど、どうしてあたしが王太子様のことを考えているって分かったんでしょうか?
「それに、いずれわたくしが王太子殿下と結婚しますわ。だから大丈夫ですわよ」
お義姉さまはそう言って複雑な表情になりました。
えっと……はい。そうですね。きっと大丈夫です。
「あと、これを渡しておきますわ」
お義姉さまは複雑な装飾のついている綺麗なペンダントを差し出してきました。
あれ? ペンダントトップに描かれているのって、マレスティカ公爵家の紋章、ですよね?
「えっと、これは?」
「これはローザがマレスティカ公爵家の者であることを証明するものですわ。ここを押すと――」
なんとペンダントトップがパカッと開きました!
「え? 時計になってるんですか?」
「ええ、魔力時計ですわ。魔力の込め方は分かりますわね?」
「は、はい」
自分の魔力を時計に流すと、時計全体が淡い光に包まれました。
「これでローザ以外の者がそのペンダントを身に着けることは出来なくなりましたわ」
えっと、魔術ってそんなこともできるんですね。すごいです。
「そのペンダントは肌身離さず着けていなさい」
「わかりました」
「それじゃあ、夕食にしましょう?」
「はい」
こうしてあたしはお義姉さまに連れられ、食堂へと向かうのでした。
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